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- 病気(症例別)と栄養
- 2022.10.21
動脈硬化性疾患予防ガイドライン改訂のポイント後編
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年度版の改訂ポイントについて解説するコラムの後編です。前編はこちらをご覧ください。
後編ではガイドライン内の食事療法や運動療法について、今後の栄養指導への活かし方もお伝えします。
動脈硬化性疾患発症予測・脂質管理目標設定アプリ
後編では最初に、動脈硬化性疾患の10年以内の発症確率に基づく脂質管理目標設定アプリをご紹介します。前編の最後でリスク区分別脂質管理目標値が出てきましたが、これを計算してくれるアプリがあります。このツールは医療従事者向けで、40~80歳の方を対象とし、家族性高コレステロール血症の患者さんは利用できません。既往歴や年齢、検査値などを入力すると30秒程で個々のリスク区分や脂質管理目標値などが診断できます。
新たな項目追加へ
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年度版の改訂点について最後のポイントです。
近年の研究結果や臨床現場からの要望を踏まえて、新たに下記の項目が掲載になりました。
①脂質異常症の検査
②潜在性動脈硬化
③非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
④生活習慣の改善、に飲酒の項を追加
⑤健康行動理論に基づく保健指導
⑥慢性腎臓病(CKD)のリスク管理
⑦続発性脂質異常症
食事療法について:n-3系多価不飽和脂肪酸
食事療法については主に、「第3章 動脈硬化性疾患予防のための包括的リスク管理」の中の「2生活習慣の改善」で記載されています。
「トリグリセライドの低下を目的に、n-3系多価不飽和脂肪酸のうち魚油摂取量を増やすことを推奨する」(エビデンスレベル:1+、推奨レベル:A)、「食事による魚油の摂取を増やすことは、冠動脈疾患発症の抑制が期待できるために提案する」(エビデンスレベル:2、推奨レベル:B)などの内容が含まれています。
食事療法について:果糖を含む加工食品
「果糖を含む加工食品の過剰摂取は、動脈硬化性疾患のリスクを高める可能性があり、果糖を含む加工食品の摂取量を減らすことでトリグリセライドの低下が期待できるため、その摂取を減らすことを推奨する」(エビデンスレベル:2、推奨レベル:A)といった内容があります。栄養指導においても、果糖を含む調味料や清涼飲料水などの摂取が多い方はトリグリセライド高値がみられるケースが非常に多いです。肥満だけでなく、動脈硬化性疾患予防のためのアプローチが必要です。
食事療法の項では、ポイントが表1のようにまとめられていますので参考にしてください。
また、ガイドライン内に危険因子を改善する食事として、日本食パターンや地中海食、DASH食、ナッツ類などの解説があります。こちらも併せてぜひ読んでいただきたいです。(第3章 2.4 食事療法)
1.過食に注意し、適正な体重を維持する ●総エネルギー摂取量(kcal/日)は、一般に目標とする体重(kg)*×身体活動量(軽い労作で25~30、普通の労作で30~35、重い労作で35~)を目指す |
2.肉の脂身、動物脂、加工肉、鶏卵の大量摂取を控える 3.魚の摂取を増やし、低脂肪乳製品を摂取する |
●脂肪エネルギー比率を20~25%、飽和脂肪酸エネルギー比率を7%未満、コレステロール摂取量を200mg/日未満に抑える ●n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取を増やす ●トランス脂肪酸の摂取を控える |
4.未精製穀類、緑黄色野菜を含めた野菜、海藻、大豆および大豆製品、ナッツ類の摂取量を増やす |
●炭水化物エネルギー比率を50~60%とし、食物繊維は25g/日以上の摂取を目標とする |
5.糖質含有量の少ない果物を適度に摂取し、果糖を含む加工食品の大量摂取を控える |
6.アルコールの過剰摂取を控え、25g/日以下に抑える |
7.食塩の摂取は6g/日未満を目標にする |
運動療法について
運動療法についても、「第3章 動脈硬化性疾患予防のための包括的リスク管理」の中の「2生活習慣の改善」で、食事療法の次項で記載されています。
「成人では、1日合計30分以上を週3回以上(可能であれば毎日)、または週に150分以上中強度以上の有酸素運動を実施することは血清脂質を改善するため、推奨する」(エビデンスレベル:1、推奨レベル:A)などがあります。
私が興味のあった内容は、「成人では座位時間を減らすことは動脈硬化性疾患の予防効果があり、提案する」(エビデンスレベル:2)です。座位時間が長いと、糖尿病や心血管疾患、冠動脈疾患、脳卒中の発症、総死亡の有意な増加と関係し、座位行動の総時間数を減らすことで動脈硬化性疾患の予防が期待できるとされています。これはぜひ、今後の栄養指導に活かし、身体活動量が高まるように患者さんにアプローチしていきたいです。座位ではなく、立位で栄養指導する機会があっても良いですね!
参考文献
・日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
みんなのコメント( 1 )
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- Eatreat 編集部
- 763日前
大塚綾さんが解説する「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年度版」に関する改訂ポイントコラム後編です。後編ではガイドライン内の食事療法や運動療法について、今後の栄養指導への活かし方もご紹介していただきます。
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大塚 綾
総合病院の管理栄養士をしています。 糖尿病専門外来の療養指導などを担当しています。 フリーの活動では地域の方を対象に栄養講座や栄養相談会を実施しています。
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