COLUMN

前編は、令和6年度診療報酬改定の栄養に関して新設された項目についてまとめました。 本稿では、既存の算定項目から見直しをされた内容について整理していきます。
※主な改訂内容を抜粋して記載しています。詳細は、厚生労働省による告示をご参照ください。

【見直し】入院時食事療養費

【ポイント】
26年間見直しが行われておらず、ほとんどの病院が給食部門は赤字であり、給食が提供困難となっているという現実や食材費、水光熱費等が高騰していることを踏まえ金額の見直しが行われました。
【変更点】
・入院時食事療養(Ⅰ)、(Ⅱ)及び入院時生活療養(Ⅰ)、(Ⅱ)の費用について、それぞれ1 食当たり30円引き上げ
例)食事療養費Ⅰ:640円⇒670円
・患者さんの自己負担額も30円値上げされた(所得により10~30円)。

【見直し】入院基本料等

【ポイント】 
退院後の生活を見据え、入院患者の栄養管理体制の充実を図る観点から、栄養管理体制の基準を明確化することが求められました。
【算定要件等】
・管理栄養士をはじめとして、医師、看護師、その他医療従事者が共同して栄養管理を行う体制を整備すること。
・あらかじめ栄養管理手順(標準的な栄養スクリーニングを含む栄養状態の評価、栄養管理計画、退院時を含む定期的な評価等)を作成すること。
・標準的な栄養状態の評価とはGLIM基準を活用することが望ましい。

【見直し】GLIM基準による栄養評価の要件化

【ポイント】 
より質の高いアウトカムに基づいた回復期リハビリテーション医療を推進する観点から、回復期リハビリテーション病棟における栄養状態の評価の方法が明確化されました。
【算定要件等】
・回復期リハビリテーション病棟入院料1について、入退院時の栄養状態の評価にGLIM基準を用いることを要件とする。
・当該入院料を算定する全ての患者について、患者ごとに行うリハビリテーション実施計画又はリハビリテーション総合実施計画の作成に当たっては、管理栄養士も参画し、患者の栄養状態を十分に踏まえて行うこと。その際、栄養状態の評価には、GLIM基準を用いること。
・回復期リハビリテーション病棟入院料2から5はGLIM基準を用いることが望ましい。

【見直し】栄養情報提供加算

【ポイント】
栄養情報提供加算の算定率が伸びず、医療と介護における栄養情報連携を推進する観点から、栄養情報提供加算の名称と要件、評価を見直しました。算定要件の幅が広がり、よりシームレスな介入ができるように期待されています。
【加算点数】
栄養情報連携料 70点
【算定要件等】
・入院栄養食事指導料を算定した患者に対して、他の保険医療機関等の医師又は管理栄養士に情報提供・共有した場合に、入院中1回に限り算定する。
退院先が他の保険医療機関・施設等に転院・入所する場合は当該他の保険医療機関等の管理栄養士に情報提供・共有した場合に、入院中に1回に限り算定する。この時、電話等で情報提供をした記録も行う必要がある。
・情報を提供する保険医療機関と特別な関係にある機関に情報提供が行われた場合は算定できない。

【見直し】 外来・入院栄養食事指導料の対象患者の見直し

【ポイント】
 対象者の拡大や、標準的な栄養評価の活用が栄養指導でも求められるようになりました。
【算定項目】
 外来・入院栄養食事指導料
【算定要件等】
・小児食物アレルギーの年齢変更(9歳未満→16歳未満へ)。
・低栄養の患者の定義はAlb3.0g/dL以下である患者が削除され、GLIM基準による栄養評価を行い低栄養と判定された患者へ変更。

【見直し】在宅療養支援診療所・病院の施設基準の見直し

【ポイント】 
訪問栄養食事指導の推進を図る観点から、在宅療養支援診療所及び在宅療養支援病院についての施設基準の要件が加わりました。
【施設基準】 
1.在宅療養支援診療所
・当該診療所の管理栄養士又は当該診療所以外(公益社団法人日本栄養士会若しくは都道府県栄養士会が設置し、運営する「栄養ケア・ステーション」又は他の保険医療機関に限る。)の管理栄養士との連携により、医師が栄養管理の必要性を認めた患者に対して訪問栄養食事指導を行うことが可能な体制を整備することが望ましい。
2.在宅療養支援病院
・当該病院において、当該病院の管理栄養士により、医師が栄養管理の必要性を認めた患者に対して訪問栄養食事指導を行うことが可能な体制を有していること。


地域包括ケアの深化・推進が求められ、ICTやDXの活用も今後ますます進んで行きます。今回の改定では栄養管理の標準化が必須となり、次回の改定ではGLIM基準についてより切り込んだ改定があると考えられます。また、新設された算定項目の多くは管理栄養士が単独でできる要件ではなく、多職種との連携を行うことで算定できます。管理栄養士の専門性とコミュニケーション能力の向上が急務です。
本稿では挙げていませんが、「外来における生活習慣病に係る医学管理料の見直し」も今後、管理栄養士が外来業務に大きく関わって行くきっかけになるでしょう。


参考文献
厚生労働省:「令和6年度診療報酬改定について」、厚生労働省、 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html、(閲覧日:2024年7月15日)

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
      13日前

      前編に続き、令和6年度診療報酬改定について管理栄養士の沼倉真宝子さんに解説いただきます。後編は既存の算定項目から見直しをされた内容についてです。

WRITER

沼倉 真宝子

1日3回、1年で1000回 ​栄養を摂るためだけの食事ではなく、 日常に密着した食生活を一緒に考える。 気軽に相談できる場を創りたい。 個々に合ったライフステージごとの食事を提案します。 病院管理栄養士として14年勤務。総合病院、療養型病院、リハビリ病院、産婦人科病院を経験し様々なライフステージや臨床栄養を習得。栄養管理、給食管理、NST、在宅訪問栄養指導など幅広い業務経験あり。延べ3000人以上の栄養指導を実施。また、離乳食教室を8年主宰し、3500人以上の離乳食相談の経験を積む。指導媒体の作成や、セミナー講師も経験豊富。 プライベートでは、小学生の姉妹を育てるママ。自身の手術、癌で家族を亡くしたこともあり、「育児・闘病・自宅で家族を看る」当事者として同じ目線で、頑張り過ぎない方法を一緒に考えられるのではないか…。そんな経験から、疾病・介護予防や日常の食生活を共に考えられる仕事がしたいと思い2021年夏 独立。 フリーランスとして食育、栄養相談、在宅訪問、料理教室、SNS発信、地域活動など身近な栄養士として活動しています。 気軽に相談ができる場を創り、充実した食生活を送るお手伝いをします。 肩の力を抜きながら、無理なく続けられる食事。一緒に考えてみませんか?

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