令和6年度の診療報酬改定では、介護報酬及び障害福祉サービス等報酬と重なるトリプル改定となり、多職種や地域との連携、標準的な栄養管理の整備が求められた内容となりました。本シリーズでは、栄養に関する主な改定ポイントを前編・後編に分けて整理していきます。
前編となる本稿は、栄養に関して新設された項目についてのまとめです。
※主な改訂内容を抜粋して記載しています。詳細は、厚生労働省による告示をご参照ください。
診療報酬改定全体の基本方針
▶物価高騰・賃金上昇、経営の状況、人材確保の必要性、患者負担・保険料負担の影響を踏まえた対応
▶医療・介護・障害福祉サービスの連携強化
▶医療DXやイノベーションの推進等による質の高い医療の実現
▶社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和
上記の観点から改定が行われ、医療現場全体の賃金改善のための評価料も新設されました。令和6年度の診療報酬改定では、ポスト2025年の医療・介護の提供体制を見据え、効果的・効率的で質の高い医療サービスの実現に向けた取り組みを進めて行く必要があります。
【新設】リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算
【ポイント】
ADLが低下しないための取組を推進するとともに、リハビリテーション、栄養管理および 口腔管理の連携・推進を図る観点から新たな評価が行われました。病棟により加算点数、要件が異なるので注意しましょう。
【加算点数】
①リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算 120点(1日につき)
【算定要件等】
・急性期医療において、多職種により取組を行った場合に計画を作成した日から起算して14日を限度に算定。
・専任の管理栄養士が当該病棟に入棟した患者全員に対し、原則入棟後48時間以内にADL、栄養状態、口腔状態についての評価に基づき、リハビリテーション・栄養管理・口腔管理に係る計画を作成する。
・GLIM基準を用いた栄養状態の評価を行う。
・週5日以上の食事状況の観察を行い、食欲や食事摂取量等把握し、必要に応じた食事調整の提案等を行う。
・リスクに応じた期間で定期的な再評価を実施すること。
・カンファレンスが定期的に開催されていること。
【加算点数】
②リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算80点(1日につき)
【算定要件等】
・新設される地域包括医療病棟にて算定可。
・リハビリテーション、栄養管理および口腔管理に係る計画を作成した日から14日を限度とする。
・口腔管理を行うための必要な体制が整備されていること。
・栄養サポートチーム加算は別に算定できない。
【新設】慢性腎臓病の透析予防指導管理の評価
【ポイント】
慢性腎臓病に対する重症化予防を推進する観点から新設されました。
【加算点数】
慢性腎臓病透析予防指導管理料
1 初回の指導管理を行った日から起算して1年以内の期間に行った場合300点
2 初回の指導管理を行った日から起算して1年を超えた期間に行った場合250点
※ 情報通信機器を用いて行った場合は、それぞれ261点、218点
【算定要件等】
・慢性腎臓病の患者(糖尿病患者又は現に透析療法を行っている患者を除く)に医師、看護師又は保健師および管理栄養士等が共同して必要な指導を行った場合に算定可。
・月に1回に限り算定可。
・入院患者は含まない。
・慢性腎臓病指導の経験を有する専任の管理栄養士(3年以上の経験)が対応する。
・腎臓病教室を定期的に実施すること等により、腎臓病について患者及びその家族に対して説明が行われていること。
・外来栄養食事指導料及び集団栄養食事指導料は算定できない。
【新設】経腸栄養管理加算の新設
【ポイント】
療養病棟に入院中の患者に対し、静脈経腸栄養ガイドライン等を踏まえた栄養管理に係る説明を実施した上で、新たに経腸栄養を開始した場合に評価を行います。
【加算点数】
経腸栄養管理加算 300点(1日につき)
【算定要件等】
・療養病棟入院基本料を算定している患者に経腸栄養を開始した場合。
・入院中1回に限り、経腸栄養を開始した日から7日を限度として算定可。
・中心静脈栄養等との併用でも算定できるが、入棟前の1ヶ月間に経腸栄養が実施されていた場合には算定できない。
・栄養サポートチーム加算、入院栄養食事指導料、集団栄養食事指導料は別に算定できない。
・専任の管理栄養士を1名以上配置していること。
・内視鏡下嚥下機能検査又は嚥下造影を実施する体制を有していること(他の保険医療機関の協力可)。
【新設】小児個別栄養食事管理加算の新設
【ポイント】
小児に対する適切な緩和ケアの提供を推進する観点から新設されました。
【加算点数】
小児個別栄養食事管理加算 70点
【算定要件等】
・小児緩和ケアチームに管理栄養士が参加し、個別の患者の症状や希望に応じた栄養食事管理を行った場合に算定。
・緩和ケアを要する15歳未満の小児患者の個別栄養食事管理を行うにつき十分な体制が整備されていること。
・緩和ケアを要する患者に対する個別栄養食事管理に係る必要な経験を有する管理栄養士が配置されていること。
本稿では、診療報酬改定に伴い新設された算定項目を記載しました。多職種連携や管理栄養士としての専門性が求められています。次回は、見直しがされた項目について整理していきます。
参考文献
厚生労働省:「令和6年度診療報酬改定について」、厚生労働省、
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html、(閲覧日:2024年7月15日)
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