2024年2月、厚生労働省は「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を策定しました。「健康づくりのための睡眠指針2014」から約10年ぶりに策定された本ガイドでは、睡眠時間の目安や良質な睡眠をとるための取り組みがまとめられています。
日本人の睡眠状況
睡眠はいずれの年代においても健康維持に不可欠で、日常的に睡眠の時間や質を確保することが大切です。一方で、令和元年の国民健康・栄養調査において、1日の平均睡眠時間が6時間未満の者の割合は、男性37.5%、女性40.6%でした。また、令和3年のOECD(経済協力開発機構)の調査報告でも、日本人の平均睡眠時間は加盟33カ国の中で最も短いことが明らかになりました。
このことから、本ガイドでは「日本人の十分な睡眠の確保は重要な健康課題」と提言しています。
ガイドの活用について
「健康づくりのための睡眠指針2014」との大きな違いは、目標として掲げられた睡眠時間の目安や、良質な睡眠をとるための推奨事項を「成人」「こども」「高齢者」と年代別にまとめた点です。必要な睡眠時間は年代によって変化するため、年代別にまとめたことで、管理栄養士などの生活指導者が、一人ひとりの生活状況に合わせて支援できるようになります。
年代別の睡眠時間の目安と健康リスク、良質な睡眠をとるための推奨事項をまとめました。
実際の食事指導でのポイント
①朝食をとる
朝食が体内時計の調整に寄与すること、朝食の欠食が体内時計の後退や睡眠休養感の低下に関連することとから、朝食習慣が大切とされています。
②減塩を心がける
日中に摂取した食塩の過剰分が睡眠中に排泄されるため、夜間の排尿回数が増えるとされています。夜間頻尿で夜中に目が覚める方には、普段から減塩を心がけることを伝えられるとよいでしょう。
③カフェインを控えめに
コーヒーやエナジードリンクに含まれるカフェインには覚醒作用があるため、寝つきの悪化や中途覚醒の増加、眠りの質を低下させる可能性があります。海外の機関が推奨しているカフェイン上限摂取量の400mgを超えないようにすること、夕方以降はカフェインを控えめにすることを意識することが大切です。
④寝酒をしない
アルコールは一時的には寝つきを促進しますが、睡眠の後半の眠りの質は顕著に悪化することが知られています。飲酒量が増加するにつれて中途覚醒も増加することが報告されているため、寝酒の習慣がある方には、寝酒が逆効果であることを伝えられるとよいでしょう。
⑤就寝直前の夜食を控える
就寝前の夜食は、朝食の欠食と同様に体内時計を後退させ、翌朝の睡眠休養感を低下させることが報告されています。また夜食の過剰摂取は、糖尿病や肥満をもたらし、閉塞性睡眠時無呼吸症の発症リスクを高めることも知られています。
本コラムでは、管理栄養士が知っておきたい健康づくりのための睡眠について解説しました。特定保健指導の第4期では、新たに「休養習慣の改善」が評価に組み込まれるなど、健康づくりのための睡眠がより注目されています。本コラムが、管理栄養士の皆さんの知識のブラッシュアップにつながりましたら幸いです。
参考文献
・健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会:「健康づくりのための睡眠ガイド2023」、厚生労働省、https://www.mhlw.go.jp/content/001237245.pdf、(閲覧日:2024年4月14日)
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