令和4年度の診療報酬改定では、管理栄養士の専門性が期待されるような改定項目となり、病棟で質の高い栄養管理を行っていく環境が整えられました。
本稿では、栄養に関する主な改定ポイントを2回にわたり整理していきます。1回目は、診療報酬改定にともない新設された算定項目を記載しました。
診療報酬改定全体の基本方針
▼新興感染症等にも対応できる医療提供体制の構築など医療を取り巻く課題への対応
▼健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた“全世代型社会保障”の実現
▼患者・国民に身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現
▼社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和
上記などの観点から今回の改定が行われました。
令和4年度の診療報酬改定において、新型コロナウィルス対策や働き方改革が肝となります。
【新設】入院栄養管理体制加算
【ポイント】
病棟に専従の管理栄養士が配置され、患者の病態・状態に応じたきめ細やかな栄養管理を行う体制の評価が新設されました。今回は特定機能病院に限定されていますが、今後さまざまな機能の病院でも配置加算が進んでいく足がかりになりそうです。
【加算点数】
入院栄養管理体制加算 270点
【算定要件など】
・特定機能病院入院基本料を算定している患者が対象。
・管理栄養士が必要な栄養管理を行った場合に、入院初日及び退院時にそれぞれ1回に限り所定点数に加算できる。
・栄養サポートチーム加算及び入院栄養食事指導料は別に算定できない。退院時に情報提供加算は算定可能。
・当該病棟において、専従の常勤の管理栄養士が1名以上配置されていること。
・対象となる患者は特別食を必要とする患者、がん患者、摂食機能若しくは嚥下機能が低下した患者、低栄養状態にある患者であること。
【新設】周術期栄養管理実施加算
【ポイント】
術後の早期栄養の開始や、術前後の適切な栄養管理により周術期の感染合併症が優位に低下し、入院日数の短縮にもつながるデータが示されています。周術期における栄養管理を推進する観点から新設されました。
【加算点数】
周術期栄養管理実施加算 270点
【算定要件など】
・マスクまたは気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔を伴う手術を行った場合、手術の前後に必要な栄養管理を行うこと。
・一連の入院期間中に実施された手術のうち主たるものについて、1回に限り算定できる。
・入院栄養管理体制加算および、早期栄養介入管理加算は別に算定できない。
・医療機関内に十分な経験を有する専任の常勤の管理栄養士が配置されていること。
・総合入院体制加算または急性期充実体制加算にかかわる届出を行っている保険医療機関であること。
【新設】外来栄養食事指導料の外来化学療法に係る栄養管理の評価
【ポイント】
がん病態栄養専門管理栄養士に対する外来栄養指導の評価が新設されました。外来で化学療法を実施している方を対象に、がんの栄養管理に精通した管理栄養士が介入することで、食事摂取量の増加や体重減少を食い止めるなど、個々の状況に応じた対応が求められます。
【加算点数】
外来化学療法に係る外来栄養食事指導料 260点
【算定要件など】
・外来化学療法を実施している悪性腫瘍の患者に対して、医師の指示に基づき当該保険医療機関の専門的な知識を有する管理栄養士が具体的な献立等によって指導を行った場合に限る。
・悪性腫瘍の栄養管理に関する研修を修了し、かつ、栄養管理(悪性腫瘍患者に対するものを含む)にかかわる3年以上の経験を有する専任の常勤の管理栄養士が配置されていること。
・他の栄養指導と異なり、指導時間の規定はない。また同月内に複数回実施しても算定は月1回に限る。
次回は、見直しをされた算定項目について整理していきます。
参考文献
・厚生労働省:「令和4年度診療報酬改定について」、厚生労働省、
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00037.html、(閲覧日:2022年7月1日)
関連コラム
・「2020年度診療報酬改定のポイント・栄養管理に関する改定を伝授!【在宅編】①」
・「2020年度診療報酬改定のポイント・栄養管理に関する改定を伝授!【在宅編】②」