COLUMN

オーラルフレイルの初期は、管理栄養士が介入できる切り口が多くあります。聞き取りからどのように適切なサポートを判断し、早期対応につなげればよいのかを考えます。

噛めないことがもたらす栄養の不足とアンバランス

オーラルフレイルの初期である「第2レベル」に該当する人が抱える栄養リスクとして「食品摂取の多様性の低下」「食欲の低下」が挙げられており、その背景には「噛めない」状況があることが多いです。噛めない状況が栄養摂取のバランスを崩すことは、平成16年度国民健康栄養調査で明らかにされています。これによると、歯が28本以上ある人の栄養摂取量を100としたとき、歯数が少ない人は炭水化物の摂取量が増え、タンパク質、食物繊維、微量栄養素の摂取量は低下する傾向がありました。

食品摂取多様性スコアで本人に気づきを促す

オーラルフレイル~フレイル予備軍に対する栄養リスクを拾い、その場で本人の気づきを促す一つの手段として、「食品摂取多様性スコア(DVS)」が有用です。これは10種類の食品について、最近一週間の食事で「ほぼ毎日食べる」場合は1点、「そうでない」場合は0点とし、10点満点で合計点を算出する方法です。この方法は、”得点が低い(栄養素密度が低い)と炭水化物の摂取割合が高く、タンパク質不足の傾向を示し、得点が高い(栄養素密度が高い)ほど炭水化物の摂取割合が低く、タンパク質や微量栄養素が増加して栄養バランスが良い傾向を示す”という特徴があります。
フレイル予防に重要な栄養面の変化を拾うことができ、結果がシンプルで本人にも伝わりやすいのが良い点です。

食事前の「準備体操」で食べる機能を維持

食べる、すなわち咀嚼や飲み込みには、首から上のあらゆる筋肉が連動して関わっています。むせや不快感の軽減には、習慣的に食事前の簡単なストレッチを行うことも有効です。
一例として簡単な「お口の準備体操」をご紹介します。

【1.深呼吸】5秒ほどかけてゆっくりと鼻から吸い、すぼめた口からゆっくりと吐きます。2~3回繰り返します。
【2.首・肩のストレッチ】首筋を伸ばすことを意識しながら、首を左右に倒します。鼻から息を吸いながら肩を上げ、息を吐きながら脱力して肩を下ろします。ゆっくり大きく。
首を回します。思い切り伸びをします。これを2回ほど繰り返します。
【3.舌のストレッチ】舌を出したり、引っ込めたりします。舌で左右の口角を交互に触れます。2~3回繰り返します。
【4.深呼吸】おわりにもう一度深呼吸をします。

このほかにも、自治体や医療機関から食べるための訓練や体操の情報が出されています。

歯科的視点をもって食生活の早期介入に踏み出そう

オーラルフレイルの初期段階は、本人や周りが多様な食品を食べることに意識を向けるだけで、衰えかけた機能を維持させたり、食べるために必要な歯の問題の解決にも踏み出せる段階です。管理栄養士・栄養士としては、食べることを切り口に、ちょっとした”お困りごと”に寄り添い、「この先も食事をおいしく食べられる」という未来を一緒に目指すような関わりをしたいものです。
国民に口腔機能チェックの重要性を啓発し、歯科医療機関の受診、口腔機能検査の実施につなげ、最終的には口腔の機能低下の早期発見、早期対応につながることがオーラルフレイル啓発の最終目標です。管理栄養士・栄養士が歯科的視点を少しもつことで、オーラルフレイル予備軍を一人でも多く改善に向かわせることができるのではないでしょうか。

 

参考文献
・花田信弘:高齢者がよりよい食事をするために歯科医療にできること『日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会』資料、H26.1.20
・平成16年国民健康・栄養調査 第4部「生活習慣調査の結果」P231~236

 

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
      1027日前

      オーラルフレイル初期の方へ管理栄養士・栄養士としての関わり、サポートについて道盛法子さんに紹介いただきます。

WRITER

道盛 法子

予防歯科で働く管理栄養士です。 新卒で3年ほど出版社で編集・記者として勤務し、その後予防の活動に現場で関わりたいとの思いから転職しました。歯科は、すべてのライフステージに関わることができ、食を切り口にした予防活動にも最適な場だと感じています。 管理栄養士の視点で歯や口のあれこれをお伝えできればと思います!

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