2019年10月1日、2日の2日間、国際連合大学ウ・タント国際会議場にて、第8回「栄養とエイジング」国際会議が開催されました。本会議は国際生命科学研究機構(ILSI Japan)によって、1991年から4年ごとに開催されてきた国際会議です。三部構成になっており、栄養とエイジング研究、「健康日本21」の現状と課題、ILSI JAPANの研究報告、ビッグデータなどのデータサイエンスなど、幅広いトピックについて議論がなされました。
今回は会議の中で特に興味深かった講演について、皆さんにシェアしたいと思います。
世界の栄養の最新知識が満載の講演
◆講演:Personalizing Nutrition for Healthy Aging
講師:Jose M Ordovas,PhD.,Prof.,Tufts University,USA
要旨
・個別化栄養の定義ははっきりしていない。
・健康的な食事と言ってもすべての人に有益とは限らない。
・性別、年齢、バイオリズム、バイオローム、エピデジェネティクスによる違い、遺伝子による違いに注目。
<健康についての課題の地域差>
・US、ヨーロッパ:肥満
・アジア:人口増加
※肥満は健康寿命を短縮させると言われている
<過体重の割合>
・アメリカ:65% (うち、30%が肥満)
・日本:20%
※過体重:BMI25以上、肥満:BMI30以上(WHO)
<ニュートリジェネティクスの一例>
・ペレルピン(タンパク質)が肥満と関係している可能性がある。
・ペレルピンが強力だと脂肪の分解が阻止される。
・ペレルピンの遺伝子を持っていると脂肪が減りにくい。
⇨カロリーを減らすのではなく、炭水化物の質を複合炭水化物に変える。
・APOA2(HDLに存在するタンパク質)に多形がある場合、より高いBMIになった。
※ただし、遺伝子の影響は環境に依存するため、飽和脂肪酸を摂取した場合に影響が出る。
・TCF7L2:糖尿病、心血管疾患に関連する遺伝子
・民族、遺伝子の多形、食文化、いつ食べるのかを考慮する必要がある。
・今まで行われている研究は、観察研究であるため、エビデンスレベルは低いので、介入研究が必要。
・いつ食べるのか、腸内細菌についても検討が必要。
・個別化と公衆衛生が対立するべきではない。
おわりに
国際会議に参加することで、国内外の視点から栄養、エイジングについて考えられる貴重な機会を得ることができました。2020年には「栄養サミット」が東京で開催されます。今後も国内のみならず、広い視野で知見を広げていきたいと思いました。
参考文献
WHO:Obesity and overweight
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/obesity-and-overweight