COLUMN

低温で加熱することで、歩留まり良く料理を仕上げる“真空低温調理法(真空調理)”をご存じですか? こちらは新しい調理方法として注目されています。
真空調理をすると、普段の料理の質がグンと上がりますよ!

真空調理はどれだけスゴい!?

“真空低温調理法”を簡単にご説明すると、食材を真空専用袋に入れて真空パックし、おおむね95℃以下の低い温度で調理する手法です。
主に肉や魚などのタンパク質を歩留まり良くしっとりと仕上げることができるため、これまでフライパンやオーブンで調理してきたローストビーフやフォアグラなどの調理に対し、大きな革命を起こしました。
今回は、そんな真空調理によって作ったローストビーフが、従来の調理とどれだけ違う仕上がりになるのか実験した結果を調理工程とともに解説します。

真空調理には“真空包装機”が必須!

真空調理を行うにあたって必須となる機器が二つあります。
一つは真空パックするための機械、いわゆる“真空包装機”です。家庭用でも脱気シールができるものもたくさん出回っています。個人や家庭内で楽しむ分にはそれでも良いと思いますが、もし皆様がプロとしてお客様からお金をいただき食事を提供するのであれば、業務用の真空包装機を使うことをお勧めします。なぜなら、真空にする能力が根本的に異なるため、料理の仕上がりに大きく影響するからです。

下処理の後は冷却してからパック!

真空調理は低温調理のため、ローストビーフの焼き色はあらかじめフライパンを使ってつけておきます。その後、真空パックしますが、この際に必ず冷蔵庫の温度帯まで食材を冷やします。
食材を確実に冷やすことで真空包装機が正常に働き、真空度も高めることができます。真空度を高める理由は、食材中の空気が抜ければ抜けるほど味も染み込み、熱の伝わりも早くなるからです。逆に食材中に空気が残留していると、それが熱の伝わりを妨げ、断熱の役割をしてしまいます。

いよいよ加熱調理 なにで加熱する?

食材を真空パックしたら、いよいよ低温調理をしていきます。ここで二つ目の必要な機器、“加熱機器”です。真空調理は低温で加熱するため、設定した温度を保ちながら攪拌することのできる、真空調理用の加熱機器が必須となります。例えば、スチコンやスービークッカーと呼ばれるものです。加熱時の温度管理がぶれてしまうと仕上がりにかなり影響するばかりか、加熱不足による食中毒事故のリスクも高まります。
加熱後は直ちに冷却を行い冷蔵庫で保存し、必要に応じて再加熱して提供するというパターンが多いです。

仕上がりの違いは!?

仕上がったローストビーフを、従来の調理(オーブンでの加熱)と比較してみましょう!

いずれも生の状態で肉の重量は245gでした。加熱後、従来の調理をした肉の重量は188g(歩留まり77%)であったのに対し、真空調理をした肉の重量は224g(歩留まり91%)となりました。
真空調理は、ローストビーフや鶏胸肉の調理だけでなく、例えばかぼちゃの煮物、ラム肉、あん肝などの調理にもおすすめです。
注意点としては、真空調理はあくまで低温での加熱なので、高温殺菌するレトルト殺菌とは異なり、菌を完全に殺すことはできません。仕上がったものは必ず冷蔵もしくは冷凍させ、保管期限を守るようにしましょう。


 

関連コラム
未来を担う管理栄養士なら知っておきたい! ニュークックチル必須アイテム
まったく新しい調理がひらける! 真空包装機
File11:メーカーで働く管理栄養士 米本そのこさん

みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
      1124日前

      真空低温調理法(真空調理)について、イートリスタの米本そのこさんにわかりやすく解説していただきました。

WRITER

米本 そのこ

ホシザキ関東株式会社で、スチコン・ブラストチラー・真空包装機を使った調理提案をしています。 日頃、厨房の調理オペレーションや、衛生管理の提案に携わっています。調理を科学するのが大好き! 経験や勘を数値化して、「おいしい」を共有しましょう♪ 【保有資格】 管理栄養士、厨房設備士、凍結含浸やわらか食認定講師、HACCPコーディネーター、新調理システム専任講師 【経歴】 大学病院での治療食調理担当 医療食品メーカーでの嚥下食調理デモンストレーター 厨房機器メーカーでのセミナー講師担当 厨房や機器、大量調理、衛生管理のことならなんでも聞いてください。

米本 そのこさんのコラム一覧

関連タグ

関連コラム

"給食・大量調理"に関するコラム

もっと見る