病院、高齢者施設、福祉施設など、一日3食を提供する集団給食施設では、人手不足と調理スタッフの高齢化が大きな課題となっています。そのため、調理スタッフの作業負担を軽減する厨房機器やシステムが急速に発達してきています。
そこで今回は、管理栄養士なら常識として知っておきたいニュークックチルのアイテムをご紹介します。
食事提供時間の直前出勤で間に合う! 新しいシステム
食事提供の数時間前から調理をし、時間に間に合うように盛り付けて提供する。これがいわゆる大量調理、集団給食ですよね。とにかく時間との戦いです。
私自身もかつて800食程度を提供する調理現場で働いていました。冬になると、早番の仕事を始める5時台はまだ真っ暗で、星空を見上げながら厨房に向かっていた日々を思い出します。早番の日はお昼過ぎに仕事を上がれるものの、仕事終わりは疲労困憊で、喉が渇いているのか眠いのかお腹が空いているのか、何から満たせばよいのかわけのわからない状態で帰路についていたことを覚えています。
このように3食提供する施設の場合、調理スタッフへの負担は非常に大きいです。
求人を出してもなかなか集まらないのはなぜ?
私が勤めていたのは都内の病院でしたので、早番の前の日から泊まり込み、早朝から調理を開始していました。この状況は経営者サイドにとっても、早番の手当ての用意、宿泊施設の手配など、費用がどうしてもかさんでしまうものです。もし、パートタイムで調理スタッフを募集しても、早朝からの勤務があったり、時間が迫られる中で誤配をしてはならないなど、決して間違えてはいけない作業が含まれていると、どうしても人材確保が難航するのではないでしょうか。
そこで、最新の機械やシステムを学び、調理いただく方の負担をできるだけ軽減し、楽しく仕事をしてもらえるように工夫してみませんか。
一台で保冷と温めなおし“再加熱カート”とは?
上の写真は「再加熱カート」という厨房機器です。
食事提供のおよそ1時間前までは、カート内全体が冷蔵庫と同じ温度帯に保たれます。どういう使い方をするのかというと、翌日朝食として提供する食事を、前の日の夕方にあらかじめ冷たい状態で盛り付けておき、夜通しこのカート内で保冷しておくのです。
およそ1時間前になると、温菜の入っている部分だけが再加熱モードになり、庫内が100℃程度まで上がり、食事の中心温度が75℃程度になるまで再加熱することができます。この際、冷菜の入っている部分は冷たいままです。
つまり、今までは朝食提供のために早朝出勤し、提供時間まで必死に作業をしなければなりませんでしたが、それらが一気に軽減されるということです。
温かいものを再加熱だけしたい! “再加熱キャビネット”とは?
再加熱カートを導入するまでの規模感ではない、置く場所がない、という方へお勧めなのが「再加熱キャビネット」です。
こちらは、専用のシートパンに冷たい状態で盛り付けた食事をセットしておくと、時間が来るまで冷蔵保管、時間が来たら再加熱を始める厨房機器です。再加熱カートの温菜側だけを抜き出したようなイメージですね。ですので、冷菜は別途冷蔵庫に保管しておくことになります。
再加熱が終わったら、シートパンから取り出し、必要に応じてトレイメイクをして提供となります。
これらのシステムをニュークックチルといいます
従来通り、調理してすぐ提供するシステムを「クックサーブ」と言います。これに対し、加熱調理したものを温菜冷菜関係なく急速冷却し冷蔵保管、冷たい状態で盛り付けをしてさらに冷蔵保管、時間が来たら温菜のみお皿ごと、またはトレイごと再加熱し提供するシステムを「ニュークックチル」といいます。
ニュークックチルはクックサーブに比べ、専用機器や保管設備への初期投資が大きくなるため敬遠されることもあります。しかし、長い目で見ると、作業負担軽減、食品ロス軽減、衛生管理向上、喫食率向上など大きなメリットがあります。また、最近ではセントラルキッチンで一括調理し配達してくれる「完全調理品」への参入も増えています。
今までの概念を取り払って、無理なく食事提供できるシステムを取り入れてみませんか。
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