八訂成分表以降、実際の摂取量に近い成分値を算出することが可能になりました。
その反面、炭水化物については複雑になり、栄養価計算をしていると混乱してしまいます。
今回は、栄養価計算に用いる炭水化物についてご紹介します。
炭水化物と利用可能炭水化物の違いとは?
「炭水化物」とは、「糖質」と「食物繊維」を総称したものです。
これまで私たちは、炭水化物を4kcal/gとして扱ってきましたが、実際には、0~4kcal/gです。八訂成分表では炭水化物を細分化し、成分ごとのエネルギー換算係数を乗じてエネルギー計算がされています。
利用可能炭水化物とは、体内で利用できる(消化吸収される)炭水化物を示します。
糖アルコールは消化吸収されにくく、利用可能炭水化物とは分けて考えられています。
3種類の利用可能炭水化物の使い分け
利用可能炭水化物は、「利用可能炭水化物(単糖当量)」「利用可能炭水化物(質量計)」「差し引き法による利用可能炭水化物」の3種類があります。
「利用可能炭水化物(単糖当量)」は、でん粉やぶどう糖、果糖などの利用可能炭水化物を直接分析または推計し、成分ごとの係数を乗じて、単糖の質量に換算してから合計した値です。エネルギー利用率を考慮した値であり、エネルギー計算の際に用います。
「利用可能炭水化物(質量計)」は、利用可能炭水化物(単糖当量)と同様に、でん粉やぶどう糖、果糖などの利用可能炭水化物を直接分析または推定した値で、質量の合計を示します。摂取量を算出する際には、こちらの値を用います。
「差し引き法による利用可能炭水化物」は、食品100gから水分、アミノ酸組成によるたんぱく質(この収載値がない場合は、たんぱく質)、脂肪酸のトリアシルグリセロール当量として表した脂質(この収載値がない場合は、脂質)、食物繊維総量、有機酸、灰分、アルコールなどを差し引いた値です。
上述の、利用可能炭水化物(単糖当量、質量計)の収載値がない食品や一部の食品のエネルギー計算は、こちらの値が用いられます。
実際に「ごはん」で確認してみましょう!
上の表は、食品成分表(八訂)から抜粋したごはんの成分値です。
エネルギーを算出する際に使用する値に赤丸をつけました。
実際に計算してみましょう。
※エネルギー換算係数については、「エネルギーが違う?!七訂成分表と八訂成分表との差について解説」でご確認ください。
アミノ酸組成によるたんぱく質:2g×4kcal/g +トリアシルグリセロール当量:0.2g×9kcal/g +利用可能炭水化物(単糖当量):38.1g×3.75kcal/g +食物繊維総量:1.5g×2kcal/g
=155.675kcal≒156kcal
エネルギーを算出する際に用いるのは、利用可能炭水化物(単糖当量)なので、38.1g(表:赤丸)です。
摂取する糖質量(g)を算出する際に用いるのは、利用可能炭水化物(質量計)なので34.6g(表:青丸)です。
ごはんについては、利用可能炭水化物(単糖当量、質量計)の収載値がありますが、この値がない食品や一部の食品は、差し引き法による利用可能炭水化物の値を用います。
炭水化物と差し引き法による利用可能炭水化物は同じではない
上述の通り、「炭水化物」は、糖質と食物繊維の総称です。
一方、利用可能炭水化物は、炭水化物から糖アルコールと食物繊維総量を差し引いたものです。
七訂成分表で使われてきた炭水化物も差し引き法で算出された値ではありますが、食物繊維総量なども含まれていますので、八訂成分表の差し引き法による利用可能炭水化物と同じ値ではありません。
まとめ
七訂成分表まではひとくくりになっていた炭水化物ですが、八訂成分表からは体内での利用率なども考慮され、実際の摂取量に近い値が把握できるようになりました。
まだ全ての食品に対応されているわけではありませんが、より細やかな栄養指導や栄養管理のためにも理解して使い分けたいですね。
参考文献
・「食品成分表2022(八訂)」 出版社女子栄養大学出版部 (2022年)
日本食品標準成分表2020年版(八訂) 文部科学省HP
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html (閲覧日:2023年3月18日)
・渡邊智子【成分表連載34】
「炭水化物がやはりわからない」にお答えします、女子栄養大学出版部HP
https://eiyo21.com/blog/fd_vol34/ (閲覧日:2023年3月18日)
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