食品成分表2020年版(八訂)以降、炭水化物は細分化され、体内での利用性にも考慮した数値を把握することが可能になりました。
今回は栄養価計算をする場合の炭水化物の考え方についてご紹介します。
「炭水化物」と「糖質」の計算方法の考え方
食品成分表2015年版(七訂)まで使われてきた「炭水化物」として算出する場合は、「利用可能炭水化物の摂取量+食物繊維+糖アルコール」の合計値になります。一方、「炭水化物」としてひとくくりになっていた糖質と食物繊維では、体内での利用性が異なります。
利用性を考慮した「糖質」として表示する場合は、エネルギー計算に使用している利用可能炭水化物の種類によって以下の図のように変わります。
食品成分表2020年版(八訂)を使って実際に計算してみましょう
以下の表は、「利用可能炭水化物(単糖当量)」をエネルギー計算に使用している食品と「差引き法による利用可能炭水化物」をエネルギー計算に使用している食品の例です。
どちらをエネルギー計算に使用しているかは、収載値右の「*」印で判断することができます。
例えば、「ごはん」の場合、エネルギー計算に使用しているのは、「利用可能炭水化物(単糖当量)」なので、※糖質量は34.6gとなります。
また、炭水化物は、「利用可能炭水化物(質量計)+食物繊維総量+糖アルコール」なので、
「34.6g+1.5g=36.1g(糖アルコールは「-」)となります。
表右の「炭水化物」は食品成分表2015年版(七訂)まで使用されてきた値です。各成分の測定法が変わっていますので、食品成分表2020年版(八訂)で算出する「炭水化物」の量とは異なります。
次に「うどん(生)」の場合を見てみましょう。
エネルギー計算に使用しているのは、「差引き法による利用可能炭水化物」です。
したがって、※糖質量は54.2gで、炭水化物は、「54.2g+3.6=57.8g(糖アルコールはTr)」となります。
※糖質量は、利用性を考慮した糖質量のこと
糖アルコールを利用可能炭水化物に含めないのはなぜ?
糖アルコールは定義上「炭水化物」に分類されますが、食品成分表/データベースの分野では利用可能炭水化物には含みません。
FAO/INFOODSやコーデックス食品委員会では、糖アルコールは、「Polyol(s);ポリオール」と呼び、「Sugar
alcohol(s)」とは呼びません。しかし、食品成分委員会では、科学用語としてのポリオールが「糖アルコール」以外の化合物を含む名称であり、ポリオールをその意味に用いることは不適切であると考えられるため、「糖アルコール」を用いることとしています。
そのため、食品成分表では日本語表記は「糖アルコール」を、英語表記では「Polyol(s)」を用いています。
糖アルコールの特徴として人間の体内では消化や吸収、代謝がされにくい特徴を持っており、ぶどう糖やショ糖、でん粉などの一般的な糖質とは分けて考える必要があります。そのため、利用可能炭水化物には含みません。
まとめ
一般的に、炭水化物から食物繊維を差引いたものを「糖質」と言います。
しかし、体内での利用性を考慮した数値として表示する際は、「糖アルコール」は、分けて考える必要があります。今回は、その考え方についてご紹介しました。
しばらくは、食品成分表を見ながら計算して進める必要性がありそうですが、その点もカバーした栄養計算ソフトも出てきていますので、活用してみるのもいいですね。
参考文献
・文部科学省 日本食品標準成分表八訂(増補)2023年
https://www.mext.go.jp/content/20230428-mxt_kagsei-mext_00001_041.pdf (閲覧日:2023年5月19日)
・香川明夫:八訂 食品成分表2022 女子栄養大学出版部、初版(2022年)
関連コラム
・【3種類の利用可能炭水化物の使い分け】栄養価計算ではどの項目を選択する?
・栄養素辞典①「炭水化物とは?」