前回のコラムでは、八訂成分表と七訂成分表では、エネルギーの計算方法が違うことをご紹介しました。
同じ献立でも八訂成分表を使って栄養価計算をした場合と、七訂成分表を使って栄養価計算をした場合とでは栄養価が異なります。
今回はこれに対する考え方についてご紹介します。
八訂成分表ではエネルギーが低くでる傾向がある
日本栄養・食糧学会誌によると、国民健康・栄養調査の食品別摂取量の結果を基に摂取エネルギー量を比較した場合、七訂成分表での算出結果に対して八訂成分表では8%程度低くでることが示されています。
これまで、給与栄養目標量に合わせて献立を作成してきたにも関わらず、八訂成分表を使用した途端、給与栄養目標量と相違が出てしまうことになります。特に、エネルギーは不足していると捉えられてしまいかねません。
この問題に対しては、以下のように柔軟に対応する必要があります。
対応① 八訂成分表と七訂成分表を使い分ける
一部の食品成分表では、八訂成分表と七訂成分表の値が両方収載されていますので、こうしたものを使用し、必要に応じで使い分けるとよいでしょう。こうした成分表では一部条件に当てはまらない食品については、七訂成分表の方法でエネルギーが計算されているものもあります。
「より現実に近い値となるのが八訂成分表で計算した値」など、八訂成分表と七訂成分表の違いについて理解し、柔軟に使い分けていくことが必要です。例えば、個人の栄養管理のために新たに献立を作成する場合など、八訂成分表で計算して問題ない場合は、こちらを優先することが推奨されます。
対応② 対象者のアセスメントを行いながら給与栄養目標量を検討する
集団給食などで七訂成分表を使用して献立作成をしている場合は、八訂成分表で計算した途端に栄養価が変わると、これまでの食事のエネルギーが足りていなかった印象を与えかねません。
しばらく七訂成分表と八訂成分表の2通りの方法で計算し、対象者の体重などの栄養状態を確認しながら、八訂成分表に対応した給与栄養目標量を検討していく必要があります。
さらに、喫食者および一緒に働く食に関わる多職種に、八訂成分表のエネルギーへの変更についての説明および今後の給与目標量や献立の栄養価について説明し、理解を求める必要があります。
まとめ
同じ献立でも八訂成分表で栄養価計算すると、七訂成分表よりもエネルギーが低くでる傾向があります。
この理由について理解し、くれぐれも計算上のエネルギーが低くなったからといって、安易にごはんや油などでエネルギー量を増やすという対応にならないよう気をつけましょう。喫食者の様子をアセスメントするなどして、八訂成分表に対応した栄養管理を今後検討していくとよいですね。
参考文献
・女子栄養大学出版部 Webマガ 成分表連載29:特別編
https://eiyo21.com/blog/fd_vol29/ (閲覧日:2022年5月5日)
・日本・栄養食糧学会誌 第73巻 第6号 255-264(2020)
食品のエネルギー値の算出方法についての検討:組成に基づく方法と従来法との比較
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs/73/6/73_255/_pdf?msclkid=986ecab2c2d811ec9ee7909ae6f12b6a、(閲覧日:2022年5月5日)
・「食品成分表2022(八訂)」、出版社女子栄養大学出版部、(2022年)
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・【改訂ポイントをおさらい】食品成分表2015年版(七訂)と2020年版(八訂)の違い
・エネルギーが違う?!七訂成分表と八訂成分表との差ついて解説