これまで七訂成分表を使って栄養計算をしてきた方は、八訂成分表を使うと同じレシピでもエネルギーが異なることにお気づきだと思います。
今回は、その理由とどのような食品でエネルギーの違いが大きくなるのかについて解説します。
七訂成分表と八訂成分表では、エネルギーの計算方法が異なっている
食品のエネルギーは、基本的に「エネルギー産生成分」に「エネルギー換算係数」を乗じたものを合計することにより算出されます。
八訂成分表では、より科学的根拠に基づき、現実に近いエネルギー値を算出できるよう、算出する際に用いる「エネルギー産生成分」と「エネルギー換算係数」のどちらも変更されています。
■エネルギー産生成分
七訂成分表までは、「たんぱく質」「脂質」「差し引き法による炭水化物」が用いられていました。
八訂成分表では、組成による成分値「アミノ酸組成によるたんぱく質」「脂肪酸のトリアシルグリセロール当量」「利用可能炭水化物(単糖当量)」「食物繊維」「糖アルコール」が、原則として用いられています。
■エネルギー換算係数
七訂成分表までは、各食品に定められたエネルギー換算係数が用いられていましたが、八訂成分表からは、食品ごとではなく、原則として組成成分ごとのエネルギー換算係数が用いられています。
七訂成分表と八訂成分表のエネルギーを比較する
実際に、「ごはん」を例に見てみましょう
エネルギー値を算出するために用いる「エネルギー産生成分」の違いを上記に示しました。
八訂成分表では、利用可能炭水化物について、原則としてエネルギー値を算出する際「利用可能炭水化物(単糖当量)」を用いますが、「利用可能炭水化物(単糖当量)」の値がない食品や、値があっても一定の条件から外れる食品については、従来通り「差し引き法による利用可能炭水化物」が用いられます。
八訂成分表では「きのこ類」「藻類」のエネルギーが増加
全体的には、エネルギーは七訂成分表よりも八訂成分表の方が低い値となっていますが、逆に「きのこ類」や「藻類」、「いも及びでん粉類」のきくいも、こんにゃく、「し好飲料類」の昆布茶では、エネルギーが増加しています。
これらの食品は、七訂成分表では、エネルギー利用率の個人差が大きく、暫定的な算出法としてAtwater係数を適用して求めた値に0.5を乗じて算出されてきましたが、この方法が使われなくなったことが起因しています。
まとめ
八訂成分表では、エネルギー値を算出する際に用いる「エネルギー産生成分」と「エネルギー換算係数」のどちらも変更しています。これにより、七訂成分表を使用して計算した場合と八訂成分表を使用した場合とでは、同じ食品でもエネルギーが異なります。
従来の方法を用いたほうがよい場合もありますが、八訂成分表は、より現実に近い値が算出できる最新の食品成分データベースです。
特徴を理解して使いこなしていきましょう!
参考文献
・日本・栄養食糧学会誌 第73巻 第6号 255-264(2020)
・食品のエネルギー値の算出方法についての検討:組成に基づく方法と従来法との比較
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs/73/6/73_255/_pdf?msclkid=986ecab2c2d811ec9ee7909ae6f12b6a
閲覧日:2022年4月23日
・「食品成分表2022(八訂)」、出版社女子栄養大学出版部、(2022年)
・「日本食品成分表2019(七訂)」 第4版、医歯薬出版株式会社、(2019年)
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