3月3日にEatreatのキッチンスタジオで帝京科学大学 福井郁子先生による「小児がんとAYA世代の就労支援~晩期合併症に対応した ストレッチと簡単時短料理セミナー」が開催されました。
今回は、AYA世代(15歳から30歳前後の思春期・若年成人:Adolescent and Young Adult)のがん経験者とその家族、関係者の方を対象としたセミナーで、3回シリーズで行われるうちの3回目の講座となります。
<プログラム>
第3回 平成30年3月3日(土)
第1部
晩期合併症と運動・栄養についての講演 講師:福井郁子(帝京科学大学)
第2部
スポーツインストラクターによるストレッチ 講師:飯島 心
第3部
マグロとツナ缶を用いた薬膳時短料理のデモンストレーションと試食 講師:大倉 あやこ(管理栄養士)
第1部:晩期合併症と運動・栄養についての講演
福井先生からは、小児がんの晩期合併症についてのお話がありました。小児がんおよび治療が原因でおこる後遺症のことで、がん経験者には慢性疲労を経験する方が多く、すぐ疲れてしまうため、日常生活や仕事に影響が出やすいなどの解説がありました。
また、AYA世代のがん治療では化学療法中に嘔気・嘔吐、食欲不振、体力低下などが起こりやすく、疲労感を強く感じることもあるそうです。
次に、サーカディアンリズム(体内時計の1日24時間の周期)についての解説がありました。
睡眠周期では、睡眠のゴールデンタイムが22時~2時で、疲労回復、若返り、美肌のためにはゴールデンタイムに睡眠をとり、体のリズムを整えるとよいとお話がありました。
【良質な睡眠をとるには】
①強い眠気が出た時に眠る
②不眠を習慣化させない
③眠れる習慣をルーチン化する
④それでも眠れない場合は、病院に相談する。
さらに、がん予防や晩期合併症には、魚が効果的とのお話もありました。
その理由としては以下が挙げられます。
1. 魚に多く含まれるオメガ3系脂肪酸(EPA、DHA)の効能
→高血圧、高コレステロール、糖尿病、喘息、脳障害、がん、認知症予防など。
また、普段よく食べている魚にも以下のような成分が含まれているそうです。
・秋刀魚:良質なたんぱく質、EPA、DHA
・鮭:アスタキサンチン(強い抗酸化作用:ビタミンCの6000倍)、セレン(免疫力アップ)
・マグロ:良質なたんぱく質・セレン(脂肪肝予防)
血合いにタウリン(肝臓強化)
ビタミンE(血行改善、美肌)
トロにEPA・DHA・ビタミンA・D・E(動脈硬化予防)
第2部:スポーツインストラクターによるストレッチ
続いて、飯島先生による「会社でもできる椅子に座りながらのストレッチと呼吸法」のデモンストレーションがありました。
簡単にできる椅子を使ってのストレッチを教えていただいたり、話題のマインドフルネス呼吸法で自分の体に目を向けてみる体験をしました。マインドフルネスは、脳の疲労を取るにも有効とされています。ストレッチが終了すると体が軽くなった! という声が聞かれたり、顔色が明るくなったのを実感される方もいました。
第3部:マグロとツナ缶を用いた薬膳時短料理のデモンストレーションと試食
最後に、イートリスタでもある管理栄養士、大倉あやこ先生 による特別講座を行いました。
大倉先生からは、中医学でいう健康管理とは何か、中医学的な『疲労』の原因を知ろう、陰陽と五味五色の考えという3つのテーマで講義をしていただきました。
食べ物には身体を温める性質を持つものと身体を冷ます性質を持つものがあります。また、それぞれの季節や臓腑に関連する色があるという、薬膳や中医学に関する基礎を教えていただきました。その上で、具体的な身近な食材を例に挙げながら、5つの色の食材をまんべんなく摂取することを心がけるなど、すぐに実践できるコツを教えていただきました。
また、中医学で見る癌の原因についてもお話いただきました。正氣の衰弱(老化、慢性病、治療の影響など)、邪氣の侵入(環境要因やウイルスなど)、飲食の不摂生(食習慣、食品添加物、汚染した空気、水など)、情志の失調(過度のショック、悲しみ、怒りなど)などについて解説していただきました。
そして、福井先生からも講演であったように、お魚を取り入れた、大倉先生による薬膳のお料理をご準備いただきました! 福井先生からも、魚は旬のものを食べるのが一番。また、缶詰は安くて、手早く調理でき、骨なども食べられ丸ごと栄養が取れるためおすすめとのお話がありました。
生のマグロを使ったものから、ツナ缶を使用したお手軽料理まで!
参加者様のみなさんから「おいしいね!」「簡単にできるレシピですね!」とお声をいただきました。
・麦とろろツナごはん(※)
・マグロの昆布サラダ
・まぐろとトマトのガーリック醤油
・ツナ味噌汁(※)
・ときくらげの香酢和え(※)
・フルーツヨーグルト
※マルハニチロ株式会社「油そのまま ツナフレーク ライトミート」を使用
食材提供:マルハニチロ(https://www.maruha-nichiro.co.jp/recipe/ranking.php)
がんに限らず、様々な疾患を経験しているAYA世代の就労支援は真剣に取り組んでいかなければいけない重要な問題です。
このプログラムを進めることで働くことに関しての悩みを少しでも取り除き、1人でも多くの方が世の中で活躍できるようにという福井先生の思いが感じられるセミナーでした。
第一回:
『平成28年度 科学研究助成事業 小児がん経験者の就労支援プログラム「小児がん経験者のための管理栄養士が教える簡単時短料理」』
第二回:
『小児がんとAYA世代の就労支援 晩期合併症に対応した ストレッチと簡単時短料理 第2回 開催』