いよいよ最後の回になりました。これまでのコラムはこちらをご覧ください。
今回は2年間試行錯誤を繰り返した中で、任地に残した3つの主要な活動を記録していきます。
快適に検査・診察を受けられる仕組み作り
任地の保健所は毎日たくさんの患者であふれ、診察まで長い待ち時間を強いられていました。そんな折に見学した首都の2つの総合病院が、同じ国の医療機関とは思えないほど、非常に効率よく整備されていたことに強い衝撃を受けました。
それまで患者は、予約・検査・診察で計3回保健所へ行く必要がありましたが、検査・診察を工夫すれば半日で完結できるのではないかと提案し、「当日朝7時から臨床検査技師が簡易血糖測定器による血糖値の測定、看護師が体重、血圧測定を行い記録→私が準備した食事をしながら栄養の講義を聴いた後→医師の診察を受けて終了」とする流れを実行しました。この日を境に10人程だった調理実習会の参加者が、25人に倍増したことはいまだに嬉しい記憶として残っています。
糖尿病患者グループを結成
2つ目は活動2年目に入ってすぐ、周囲の人望が厚い女性をリーダーに指名し、糖尿病を持つ人同士が支え合えるようグループを結成しました。本来は任地スタッフへ活動の引継ぎを行うべきなのですが、常に人不足な状況から無理と判断し、患者のみで継続できる次の2つの活動だけ残すことにしました。
①週1回歩く会で運動習慣をつけること
②市内で定期的に開催されるお祭りで「野菜100g以上」「油と砂糖各小さじ1以下」の「健康食」を販売し、収入を得ること
お祭りで得た収入は、ずっと課題と感じていた「必要な人に必要な分の血糖降下薬を行き渡らせる」ため、まとめて卸値で購入した薬を医師の処方のもと市価の半額で購入できるようにしました。
任地スタッフ及び地域ボランティアへの教育
3つ目は、任地の保健所と、「体重ボランティア」と呼ばれる定期的に地域の子どもの体重測定をするスタッフへの栄養教育を2年目から行いました。数多くある反省点のひとつに、患者との関りを重視しすぎたあまり、スタッフとの関係性作りが不足してしまったということがあります。
体重ボランティアは妊産婦と乳幼児~成人まで幅広い住民と関わるので、各年代に必要な栄養について計7回講習会を開催し、任地の看護師へは定期的に開催していた講習会のレジメをまとめたものを各自へ配布し、患者会の活動のサポートを依頼して活動終了としました。
2年間の活動を終えて
今回15年前の青年海外協力隊員の活動を振り返る貴重な機会をいただき、嬉しかったことも苦しかったことも鮮やかに蘇ってきました。
実務経験10年に満たない未熟な栄養士を受け入れ、拙いスペイン語に耳を傾けてくださった任地スタッフやホームステイ家族、患者グループの方々に心から感謝しています。任務終了後ホンジュラスを出国し、同期隊員と共に立ち寄ったマイアミ空港からホテルへ向かうタクシーの中で号泣したのを覚えています。任地を離れた寂しさ以上に、やっと元の生活に戻れる安堵感の涙でした。生まれ育った国を外側から見た2年間は、間違いなく私の人生観を大きく変える経験でした。
最後まで目を通していただきありがとうございました。
関連コラム
・青年海外協力隊 栄養士隊員での活動①
・青年海外協力隊 栄養士隊員での活動②
・食生活・栄養・病気と貧困について【前編】
・食生活・栄養・病気と貧困について【後編】