• COLUMN

偏った食生活による病気の発症

前編でお伝えしたような食生活習慣は、うつ病や心臓病などを発症しやすくなるなどの問題もあるとされています。また、中学生までの食事が肥満の一因となるとも言われています。朝は腸が動きやすい状態です。朝食をとることで、排便のリズムも整えることに繋がっていきます。
このリズムが崩れて便秘が続くことで、腸が慣れてしまい、排便したいと感じにくくなって、さらに悪化していきます。すると、大腸がんなどの原因になることも考えられます。朝のトイレの時間を作るためにも、早起きと朝食が大切です。

子どもの健康な成長のために栄養満点の食事を

栄養面が良好な食事は、現在の子どもの健康な成長のために、そして貧困の連鎖を断ち切る基本的な条件という面からも必要です。適切な体力の獲得など、すべての源になるのです。
さまざまな食品を食べる経験、そして食事を作るというスキルを含め、将来の生活の自立のために必要なのです。たとえ安い食材だとしも、栄養の面から問題がなければ、適切な食事ができることにつながり、それは健康で働き続けることができるようになり、収入の確保にもつながるのです。子どもの貧困を断ち切るためには、食生活面でのアプローチの意義は大きいのです。

素晴らしい学校給食制度

学校給食は、日本において誇るべき制度です。どのような家庭状況であっても、学校に来れば他の子どもたちと同じ食事を食べることができます。1日のうち1食でも、栄養バランスの整った食事をとるは、貧困問題だけでなく、複雑な環境に身を置く子どもたちにとって、健康という側面以外にも「安心感が得られる」という重要な意義を持っているのです。そして、食事ができることや、それを支えてくれている方へ感謝の心をはぐくむことが重要なのです。

さまざまな家庭環境と食生活

子どもは生まれる家を選べません。遊びに出て夜になっても帰ってこない子ども。保育園では遅くまでみてもらっていたけれど、小学生になりお迎えが早い時間になったので、家で孤独に過ごす子ども。家族で一緒にご飯は食べているけれど、携帯やスマホを注目しながらの食事をする子ども。
子どもたちに理想の食事を絵に描いてもらったところ、6割の子どもが外食を描いたという調査もあります。また、家族は一緒のテーブルにいるけれど、大人はパソコンで仕事をしていて、自分だけ食事をしている絵を描いた話なども聞きます。これは食べることを共有できていないという事です。

「今日は何を作ろうか?」
「おいしかったね」

など、同じ空間にいるだけではなく、同じ目線で会話をしながら食を共にする、共食にはこういった意味があるのです。

政府や自治体の取り組み

2015年4月に施行された生活困窮者自立支援法に基づいて創立された、生活困窮者自立支援制度の見直し法案が、国会に提出されています。その柱の一つが、家計の改善を支援する事業の拡充とされています。そして、小学生がいる困窮世帯への巡回を強化するなど、子どもへの貧困対策を拡充する意向もあるとしています。
さらに、家庭であまった未開封の食品を寄付して、生活困窮者世帯などに届ける「フードドライブ」をイベントの時だけではなく、一年中いつでも受け付ける自治体も増えています。
「フードドライブ」とは、「food(食べ物)」と「drive(運動)」を、組み合わせた言葉で、1960年代にアメリカで始まりました。国内では、自治体や社会福祉協議会、民間企業などが各地で行っています。常温で保存できる未開封の食品を対象としているところが多くあります。気軽に食品を持ち込みやすくなり、食べられるのに捨ててしまう食品ロスの減少に繋げるねらいもあります。

貧困によって栄養が不足しているうつむいた眼差しに、希望の光を注いでほしいと祈るばかりです。

<<前編へ戻る

 

参考文献
東京都福祉保健局 子供の生活実態調査
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/joho/soshiki/syoushi/syoushi/oshirase/kodomoseikatsujittaityousakekka.html
公益財団法人ダノン健康栄養財団
http://gohagen.jp/
栄養日本 第59巻 第9号 日本栄養士会 2016

関連コラム
管理栄養士が見た大学生の食生活の実態①
管理栄養士が見た大学生の食生活の実態②

コメントを送ろう!

「コメント」は会員登録した方のみ可能です。

みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      1875日前

      Eatreat編集部です。「食生活・栄養・病気と貧困について」後編です。

      拍手 0

"食生活と貧困"のバックナンバー

もっと見る

WRITER

食生活・栄養・病気と貧困について【後編】

小山 幸子

現在は病院、クリニックでの食事サポート、調理実習のほか、食コラムの執筆等。 『この食事が、人生で最後の食事かもしれない』を、モットーに業務に携わっている。 メカオンチのあがり症。 高校卒業後、会社員として8年間勤務後、26歳で栄養士養成校へ。 教員より年上の生徒だった経験を持つ異色の栄養士。 毎日書道会 会友 (雅号:小山 桃花)

小山 幸子さんのコラム一覧

関連タグ

関連コラム

"社会問題と栄養"に関するコラム

もっと見る

ログインまたは会員登録が必要です

会員登録がお済みの方

ログイン

まだ会員登録をされていない方

新規会員登録

ページの先頭へ