COLUMN

管理栄養士の仕事の一つとして注目されている特定保健指導。未経験から特定保健指導の仕事を始めた私が、「特定保健指導を始める上で知っておきたかったこと」を全5回に分けてお届けします。
今回は、初回面談がうまくいかないときに振り返るポイントをご紹介します。

初回面談の流れ

初回面談をスムーズに行うためには、流れをきちんと頭に入れておく必要があります。
初回面談の流れは特定保健指導の実施機関によって違いがあるため、今回はあくまで一例として流れとそれぞれにかかる時間をご紹介します。

①あいさつ(約2分)
②本日の流れ、特定保健指導の概要などの説明(約5分)
③健診結果の振り返りや病態、放置リスクの説明(約10分)
④生活習慣のヒアリング(約10分)
⑤目標設定、行動計画作成(約10分)
⑥今後の流れの説明(約3分)

個別面談場合、時間はおおよそ30〜40分程度です。短い時間の中で、対象者に生活習慣と健診結果の関係を理解してもらい、今の問題点を抽出、改善するポイントを提案し、行動変容を促すことができるかが重要になります。
初回面談を実際にやってみると、対象者の方にうまく説明できなかったり、行動変容を促すことが難しいと感じたりすることがあると思います。
そんな時に、私がよく振り返っているポイントを3つご紹介していきます。

振り返りポイント①受容・共感ができているか?

特定保健指導では、対象者に自分自身のことを話してもらえるよう信頼関係を築くことが重要です。そのためには、「受容」と「共感」が必要となります。
対象者がどのような生活習慣を送っているのかをヒアリングできないと、その方に合った行動を提案することは難しいです。対象者の方が間違った食生活やダイエット法を実践していたり、間違った考えを持っている場合、すぐに意見して止めるのではなく、中立的な気持ちで話や気持ちを受け止めましょう。
また、対象者の立場に立ち、対象者の気持ちに共感しながら理解するということも重要になります。こちらの考えを押し付けたり一方的に正したりしようとせずに、まずは対象者の気持ちや行動をきちんと「受容」「共感」ができているかを振り返ってみましょう。

振り返りポイント②相手の話を聴くことができているか?

特定保健指導では、対象者の話をどれだけ引き出せるかが大切になります。そのため、対象者よりも自分の方が話していることが多いと、面談が終わったときに「あんまり対象者のこと聞き出せなかった…。」と思うことがあるかもしれません。
指導者は、話し上手よりも聴き上手であることがとても重要です。対象者の話にきちんと耳を傾け、その中で問題点を探っていきましょう。
対象者の中には、自分から話すことが苦手な方もいらっしゃいます。その場合は、こちらから質問して話を引き出すことも必要です。質問には、「閉じた質問」と「開かれた質問」があります。はい・いいえで答えられる「閉じた質問」は、「朝食は食べますか?」など、簡単な質問で必要な情報を短時間で得られます。一方、はい・いいえで答えられない「開かれた質問」は、「食生活で気になっていることはありますか?」など、対象者が自由に返答することができるため、その人自身が思っていることを知ることができます。時と場合に応じて使い分けましょう。

振り返りポイント③行動変容ステージを見極められているか?

行動変容ステージとは、人が行動を変える時に少しずつ段階を経る流れを5つのステージに分けたものです。行動を変えるためには、対象者が今どのステージにいるのかを把握し、そのステージに合わせた働きかけを行うことが必要不可欠です。

行動変容ステージとそれに対する働きかけは下記の通りです。

ステージ 状態 働きかけ
無関心期
6ヶ月以内に行動を変えようと思っていない
・健康行動のメリットを知る
・このままでは「まずい」と思う
・周りへの影響を考える
関心期
6ヶ月以内に行動を変えようと思っている
・健康行動をしていない自分をネガティブに、健康行動を行う自分をポジティブにイメージする
準備期
1ヶ月以内に行動を変えようと思っている
・うまくできると自信を持ち、健康行動を行うことを周りに宣言する
実行期
行動を変えて6ヶ月未満である
・不健康な行動を健康的な行動に置き換える
・続けるために周りのサポートを活用する
・続けていることに対してご褒美を与える
・取り組みやすい環境づくりをする
維持期
行動を変えて6ヶ月以上である


初回面談の中で、対象者がどの行動変容ステージにいるかを見極め、それに応じた声がけや情報提供を行うことができると良いでしょう。

次回は、「特定保健指導で栄養の知識以外で押さえるポイント」をテーマにお伝えします。


参考文献
・北田雅子、磯村毅:「医療スタッフのための動機づけ面接法逆引きMI学習帳」、医歯薬出版、(2016)
・安達美佐、山岡和枝、渡辺満利子、渡邉純子、
 丹後俊郎:「ライフスタイル改善の成果を導くエンパワーメントアプローチ」、朝倉書店、(2017)
・厚生労働省:「行動変容ステージモデル」、e-ヘルスケアネット、
 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-07-001.html、(閲覧日:2023年5月30日)
・厚生労働省:「健康行動を妨げるもの」、e-ヘルスケアネット、
 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-07-004.html、(閲覧日:2023年5月30日)

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
      496日前

      管理栄養士のお仕事~特定保健指導~シリーズ。今回は「初回面談がうまくいかないときに振り返るポイント」を宮﨑奈津季さんに解説していただきます。

WRITER

宮﨑 奈津季

女子栄養大学栄養学部実践栄養学科卒業。 介護食品メーカーで営業に従事した後、独立。 料理動画撮影やレシピ開発、商品開発、ダイエットアプリの監修、栄養価計算などの経験あり。 現在は、特定保健指導、記事執筆・監修をメインに活動中。 Chatwork、Slack、Zoom、Wordpressなどの使用経験あり。

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