管理栄養士の仕事の一つとして注目されている特定保健指導。未経験から特定保健指導の仕事を始めた私が「特定保健指導を始める上で知っておきたかったこと」を全5回に分けてお届けします。
今回はついに最終回。特定保健指導に携わる前と後のギャップについて4つご紹介します。
① 事務作業が多い!
特定保健指導のお仕事を始めて最初に感じたことが「思ったよりも事務作業が多い!」ということです。特定保健指導=面談で対象者の方とお話しする仕事というイメージが強いですが、面談前後にも重要な仕事があります。
面談前では、対象者の検査値などのデータチェックや過去の指導履歴の確認、必要があれば書類や資料を準備します。指定の場所に訪問する際には、行き方や移動手段を事前に調べておくことも必要です。
面談後は、面談した内容を報告書にまとめて提出します。この報告書では、面談中にヒアリングした内容や、どういった経緯があって今回の行動計画を立てたかなど、面談していない人でもわかるようにまとめる必要があります。紙ベースで提出することもあれば、パソコンを使って指定のシステムに入力することもあります。
その他、アポイントが必要であれば架電業務が発生し、その結果なども細かく記録しておきます。意外とパソコンや書類を使った作業が多いため、苦手な方は慣れるまで時間がかかるかもしれません。
② 知識だけじゃない、面談スキルが必要!
特定保健指導は、生活習慣病の予防を目的としているため、それに関連する病態の知識が必要不可欠です。私も特定保健指導のお仕事を始める前に必死に勉強していたのが、この分野の知識でした。
しかし、実際に私が特定保健指導の初回面談をやってみて、知識以外で重要だと感じたのは面談スキルです。どんなに知識を持っていても、対象者が生活習慣の改善に対してやる気になってもらえなければ意味がありません。対象者のやる気を引き出すためには、信頼関係を築くことが大切です。面談スキルを磨くことで対象者から信頼され、効果的に生活習慣の改善に導くことができます。
③ 無関心期の方への指導に悩む!
特定保健指導のお仕事をしていて、思っていたよりもいらっしゃると感じるのが「無関心期」の対象者です。
「たまたま健康診断で引っかかってしまっただけ」「ちょっと数値が高いだけ」「仕事が忙しくて今は改善するつもりはない」といったご意見を現場で聞くことがあります。特定保健指導の対象者の方は、自覚症状も特にないため改善の必要性を感じていないことや、仕事などで忙しく改善する余裕がないことも多いと感じています。
また、中には経年者で以前指導員から強く言われて特定保健指導に対して嫌悪感を抱いている方もいらっしゃり、私も日々試行錯誤しながら指導にあたっています。生活習慣の改善を押し付けるのではなく、まずはその方が今の状況に対してどのような気持ちなのかに寄り添って指導することが大切だと日々感じています。
④ 閑散期と繁忙期の差がすごい!
特定保健指導のお仕事は、各実施機関や健保によりますが閑散期と繁忙期があることが多いです。私は、特定保健指導を始める前から閑散期と繁忙期があることを知っていましたが、実際に始めてみるとその差がかなりあることに驚きました。
具体的にお伝えすると、繁忙期には週に3日以上びっしり面談があったにもかかわらず、閑散期には週に1回面談があるかないかといったところです。
閑散期と繁忙期にお仕事の量に差があるということは、必然的に収入にも差が出てきます。毎月安定した仕事量を引き受けるように調整するのが難しい仕事だなと感じました。
特定保健指導、ぜひ挑戦してみて!
未経験から特定保健指導の仕事を始めた私が、「特定保健指導を始める上で知っておきたかったこと」を全5回に分けてお届けしました。
私はもともと一次予防に携わりたいという気持ちがありましたが、病院などでの勤務経験がなく、栄養指導の実務経験もありません。そんな私でも、今は楽しく特定保健指導のお仕事をさせていただいています。
特定保健指導のお仕事を始めるか悩んでいる方が、このシリーズを読んで挑戦するきっかけになれば嬉しいです。
参考文献
・厚生労働省:「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年版)」、厚生労働省、
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000194155_00004.html、(閲覧日:2023年10月6日)
・北田雅子、磯村毅:「医療スタッフのための動機づけ面接法逆引きMI学習帳」、医歯薬出版、(2016)
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