管理栄養士・栄養士は、食や栄養の分野で病院や高齢者施設、学校、保育園、行政、食品メーカーなどさまざまな職場で活躍しています。職場によって仕事内容や求められることが異なるのも、この資格の面白いところです。
この連載では、さまざまな職場で働いている管理栄養士・栄養士の方に経歴や仕事内容、仕事のやりがいについて紹介します。
今回は、給食委託会社で新規事業の立ち上げをされている管理栄養士の村瀬由真さんにお話をお伺いしました。
これまでの経歴を教えてください。
大学卒業後は、400床の精神科病院に管理栄養士職として入社しました。入社時は、管理栄養士の先輩が3名いたものの産休や退職で職場を離れられ、半年後には責任者の役割を担うことに。業務内容は、献立作成、入院患者の栄養管理や指導、デイサービスの利用者との料理教室などです。年上の栄養士やほか資格者との関わり方を学ぶきっかけになりました。
その後、以前より夢であった動物に関わる仕事がしたいと動物病院で動物看護師として勤務しました。獣医学はもちろん、動物に関わる知識がまったくない状況ではありましたが、動物の栄養学を中心に学び、ペット栄養管理士の資格も取得できました。
現在は給食委託会社に転職、再び管理栄養士として働いています。
給食委託会社に転職したきっかけはなんですか?
今の仕事に転職した理由は、早番や時間外の勤務がある精神科病院や動物病院だと生活リズムがつかみにくく、体調を崩したことがあったからです。定時で帰れること、土日休みなどの勤務条件をメインに、転職活動を始めました。
食品メーカーや給食委託会社など、さまざまな会社に直接応募し面接を受ける中で、自身のやりたいことを模索しました。
多くの面接官と話す中で、「自らを向上させたい」「スキルアップしたい」といったやりがいのある仕事への思いが強くなり、新規事業立ち上げの部署に配属していただける現在の職場に決めました。
生活の安定も重要ですが、私には仕事の内容も重視すべき事柄であると再確認した転職活動だったと思います。
給食委託会社での仕事内容を教えてください。
現在の仕事内容は、完全調理済みの食品を活用した献立の提供です。給食を作る人手が不足しがちな高齢者や障がい者などの施設や病院を対象に、献立の提案、営業、新規立ち上げを行っています。
年間を通して献立を使ってもらうため、季節に合わせた商品や食べやすさを考えた嚥下食などの新商品の開発にも携わります。
毎日の仕事は、契約している施設からの受注対応、製造工場への食材発注、商品を施設に届けるための配送手配など、事務作業が中心です。
また、良い商品を開発するためにさまざまな地域の契約施設や製造工場へ、現場の意見や悩みを直接聞きに行くこともあります。
管理栄養士としてのやりがいは?
管理栄養士としてのやりがいは、献立を提供している施設や病院の利用者からの「おいしい」が聞けたときです。
直接食べる方の意見を聞く機会は少ないこともあり、喜んでもらえることは何よりも誇りにつながります。
とくに、「硬いものが食べられない」「うまく呑み込めない」といった高齢者の声に寄り添った嚥下食の開発は、人体の嚥下機能や食品の加工方法を学んだ管理栄養士だからこそできることだと思います。
この仕事は、給食を食べる方と食品を製造する工場の架け橋になれる仕事です。直接現場に意見を聞いて反映させることで、より良い食事が提供できることに私自身は楽しさを感じています。
仕事をする上で必要なスキルはなんですか?
管理栄養士として、栄養学の高い知識は欠かせません。大学で学ぶことは一部に過ぎなく、働きながら勉強すべきことが多いでしょう。給食を作る現場の在り方や、実際に食べる方の嚥下機能や食の嗜好、食品を製造する工場の経営などさまざまな考慮すべき点を理解して献立を作成、新規営業を行う必要があります。
学び続けることが重要だとしても、仕事と勉強の両立が難しいと感じるかもしれません。私の場合は、仕事で関わる方とのコミュニケーションを通じて学んでいます。専門的に研究し、仕事にしているプロと話すことで、知らない知識を得られます。
働くうえで人脈を大切にすると、自然と自分自身のスキルも向上できるきっかけになりますよ。
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