食品メーカーの管理栄養士の仕事

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管理栄養士・栄養士インタビュー

2017.06.19

管理栄養士・栄養士の仕事

食品メーカーの管理栄養士の仕事

ソフリ管理栄養士の仕事働き方嚥下食介護食食品メーカー
posted byEatreat 編集部

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一口に管理栄養士といっても、その仕事内容は勤務先や勤務形態によってさまざまです。
今回は、大学卒業後新卒で食品メーカーに就職し、おもに介護食の商品開発に携わるヤヨイサンフーズの鈴木まやさんにお話をうかがいました。管理栄養士と聞いてすぐに思い浮かぶ、栄養指導や献立作成などとは少し違った分野での鈴木さんのお仕事ですが、管理栄養士ならではの関わり方や、やりがいがあるそうです。

経歴

学生時代に自身の将来の職を考えた時、人が生活する上で基本となる衣・食・住に関わる仕事に就こうと考えました。その中でも特に興味を持った「食」に関わりたいと考え、管理栄養士になろうと決めました。そして、大学にて管理栄養士養成課程を学び、管理栄養士の資格を取得しました。
就職は学生時代に経験した病院実習と保健所実習、また企業でのインターンシップ等を通して「モノを作る仕事がしたい」と考え、食品メーカーでの商品開発業務を志望しました。その後、就職活動を経て現在の勤務先である株式会社ヤヨイサンフーズに入社しました。

仕事内容とやりがい

入社後は商品開発部に配属され、現在までの12年間、商品開発業務を行っています。
入社１年目より弊社の介護食ブランドである「ソフリ」の開発に携わり、その難しさとやりがいを体感しました。「ソフリ」は「安心・おいしい・やさしい・楽しい」をコンセプトとしたやわらか食のシリーズです。食べることの難しくなった方々に食べる喜びと楽しみを提供したいという思いが込められた商品です。さらに、高齢者の方が美味しく食事をしながら不足しがちな栄養素を摂取できるよう栄養面も配慮されています。

食品メーカーでの商品開発業務は、目標の品質を実現すべく試作を行うことから始まります。目標の品質を達成できるまで何度も何度も試作を繰り返します。目標の品質を作り出すためには、原材料に関する知識や工場の製造ラインの特性を理解していることが求められます。試作品は社内会議やお客様との打ち合わせにより改良を重ねながら、品質が高められていきます。試作品が完成すると工場での製造テストを行います。テストでは工程上の管理ポイント等をチェックしながら製造を行います。テストで問題点があれば改善し、各部署が連携して商品化に向けて準備を進めます。

試作をする時、「ソフリ」では安定したやわらかさと食感が重要であり、精度の高い試作や工程管理が求められるため、試行錯誤しながら試作を繰り返し、多い時には130回以上試作をすることもありました。また、品質確定後の製造テストの品質が試作品と異なってしまった時にはその原因を分析し、対策を立てた後にテストを何度もやり直すこともあります。この時は限られた時間の中で結果を出さなければならず、大きなプレッシャーがかかります。
また、新規性や進歩性の高い製法や容器等を開発した時には特許出願を行います。特許出願のためには、より緻密な検証と資料作成が必要であり根気のいる作業が続きます。

試作から商品化までの道のりは長く、苦労も多いですが、自分が担当した商品が商品化された時の喜びは大変大きいものです。
「ソフリ」をご利用いただいている栄養士の方や管理栄養士の方からお手紙をいただくこともあります。今年の1月には、病院で「SFお餅風ムース30」を提供されたお客様からお手紙をいただきました。お手紙には「ソフリ」の「SFお餅風ムース30」を元日と1月2日の朝食に提供したところほぼ全員が2日とも完食するほど好評で、採用して本当に良かったとの内容が書かれていました。
また、「SF蒲焼風ムース30」の発売時には展示会で直接お客様にこの商品を紹介させていただく機会があり、直にお客様の声を聞くことができました。鰻を提供したいが骨や皮が危険なため提供しづらく困っていたというお客様が、今年の土用の丑の日にはこの商品を提供したいとおっしゃってくださいました。お客様からこのような声をいただけることは、商品の開発者として最も嬉しくやりがいを感じます。

～やわらか食「ソフリ」のメニュー例～

肉じゃが

常食・きざみ食・ミキサー食と、やわらか食「ソフリ」との見た目の比較

「献立メニュー」

常食（左）とやわらか食「ソフリ」（右）との見た目の比較

ユニバーサルデザインフード区分3の「舌でつぶせる」やわらかさの食事です。
「ソフリ」の特徴・・・食欲がわく見た目、彩り豊か、香り・風味がある

今後について

今後もより多くの方に「ソフリ」をご利用いただき、食べることが難しくなった方々に食べる喜びと楽しみを提供し続けられるよう、お客様のニーズを把握するとともに技術開発に取り組み、新たな商品開発に挑戦していきたいと考えています。

食品メーカーの商品開発業務は、病院等の管理栄養士の業務とは異なりますが、「食」に関心がありモノを作ることが好きな方には興味深いものだと思います。自身が開発した商品を通して栄養士の方や管理栄養士の方、患者様のお役に立てることが、この職業の魅力でもあります。
今後、企業への就職を志望される方々には商品開発を選択肢の一つとして考えていただいても良いと思いますし、病院等への就職を志望される方々にはこのような介護食が利用されていることと、管理栄養士がその商品開発を行っていることを知っていただければ幸いです。