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国民健康栄養調査での管理栄養士の関わり①
2016年11月に行われた平成28年度の国民健康栄養調査のデータ集計・解析が、現在、国立健康・栄養研究所の国民栄養調査室で行われています。
室長の先生を中心に、管理栄養士10数人ほどのメンバーで進められた作業も、2017年3月の時点で年度末に入り、いよいよ終盤です。
調査票は身体状況、生活習慣、食事摂取状況の3種類。調査項目は前回に記しました。毎年集計されたデータをもとに調査結果がまとめられ、厚生労働省より調査結果の概要が発表されています。興味のある方はぜひ厚生労働省のホームページをご覧になってください。
厚生労働省 国民健康・栄養調査
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html
調査員の仕事のおもしろみとやりがい
私がはじめて国民健康・栄養調査の調査員をしたのは10年ほど前でした。調査員の仕事は、管理栄養士の仕事の中でも目立たない仕事です。しかし、そんな調査員の仕事にも、おもしろみとやりがいがあります。
調査員の仕事は、調査対象の各世帯に調査協力を依頼すること事からはじまります。調査をやっていただけることになると、調査票を対象者の各家庭に持参して訪問し、調査方法と記入の仕方を説明します。身体状況、生活習慣、食事摂取状況のすべてを協力調査してくださる方、1つの調査だけの方など対象者に合わせて調査を行います。
このなかで、食事摂取状況調査は栄養士ならではの仕事です。調査票の回収時には、記入内容の確認をしますが、この確認がとても大切なことなのです。1日分の食事内容を記入してもらい、分量の確認、調味料や調理法の抜けがないか細かいところまで確認します。調理済み食品や買ってきた物、外食などでは内容の分析までが必要です。そこまで細かく分析することで日本国民の食生活の実態につながるのだと思います。このときが栄養士として栄養調査を行っている実感をもっとも感じる瞬間です。
しかし、私自身も調査員しかやっていなかった時には、なぜこんなに細かいところまで確認するのかわからないまま、マニュアルに従っていただけでした。栄養調査の重要性が理解できたのは、国立健康・栄養研究所の栄養調査室での仕事に関わるようになってからです。
栄養調査室の仕事でわかった栄養調査の大切さ
国立健康・栄養研究所の栄養調査室には、栄養調査の結果がデータとしてまとめられたものが集まってきます。集められたデータは確認・集計・解析が行われ、調査結果としてまとめられます。現在、私は栄養調査室での管理栄養士として、データの確認作業を行っています。
栄養調査室で仕事をするようになって、調査結果が出されるまでの一連の内容が理解できるようになり、各調査員が行っている細かい確認が、調査結果の正確性のために重要であること、そして、その仕事に栄養士として関われることのおもしろさを実感するようになりました。
栄養調査室での管理栄養士の仕事
国立健康・栄養研究所の栄養調査室でのデータの確認作業は10数人ほどの管理栄養士で行っています。管理栄養士の職場としては、これだけ大人数の管理栄養士が一緒に働くことは、他ではあまりないのではないでしょうか。年齢は40代~60代の方までいます。栄養調査員歴20年以上の方もいらっしゃるので、いろいろな話を聞くことができ、勉強になるこ事が多くあります。毎日全員がそろうのではなく、それぞれの管理栄養士がフリーランスで働いているため、都合のつく日に勤務を行なっています。
栄養調査室では、管理栄養士が集まってり黙々と調査票の確認作業をすすめていると思われるかもしれませんが、女性のが大勢集まれば静かなはずがありません。じつに賑やかな仕事場です。その会話は栄養調査の内容だけでなく、それぞれの仕事の話であったり、他の職場での話であったりさまざまです。ここでの会話は、私にとって大切な情報源になります。
やはり、一番盛り上がるのは、食事摂取状況調査票の内容についてです。地域や家族構成による食事習慣の違いが明らかに表れているので、管理栄養士としての興味をそそる内容が満載です。
地域による食べ方の違い、食材の違い、呼び方の違いなど、はじめて知る事こともあり、驚きや小さな感動がいくつもあります。
国民栄養調査は1945年から実施され、2003年から国民健康・栄養調査となり、現在にいたいたるまで70年近く実施され続けている全国調査です。その歴史ある調査ですが、管理栄養士になっても、誰もが関われる仕事ではありません。
調査員の仕事ができたこと、国立健康・栄養研究所の国民栄養調査室での仕事に関われたことは、私の管理栄養士としての仕事の中でも、誇りに思える仕事のひとつです。
そして何よりも、一緒に作業をすすめている管理栄養士の方々とのつながりが、私にとって大切なことなのです。
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