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今回は、フリーランスとして咀嚼や食育セミナー等の講師として活躍中、京都栄養医療専門学校非常勤講師でもある田中美智子さんにお話をうかがいました。

管理栄養士を目指したきっかけ

栄養士については高校生で進学を考える時まで知りませんでした。なんとなく大学に進学しようかと考えていたのですが、母から「何か資格を取れる学校に行っては? 栄養士ってどう?」と言われ、その時に初めて栄養士がどんな仕事をするのか調べました。小学校のころから料理やおやつを作ること、食べることも好きだったので進学を決めました。
大学で学ぶうちに、食や栄養への知識を生かした仕事がしたいと強く感じるようになりました。病院実習の時に栄養指導をする管理栄養士の姿に自分の未来図を投影するようになり、食で元気になる患者様を見て病院で栄養士として働くことに決めました。

病院での下積み経験がすべてに活きている

大学を卒業し、400床の病院に新卒栄養士として勤務することになりました。最初の頃は現場に入って調理や洗浄の仕事ばかりで、環境が整った施設ではなかったため、夏は暑く冬は寒く、一日中野菜の切込み、魚の三枚おろし、そして、配膳時間に間に合うように調理師さんやパートさんに指示をする、5分でも遅くなると看護スタッフからお叱りを受ける…そんな日々が続きました。せっかく憧れの栄養士になったのになぜこんなことに? 疑問を持ちながらの日々が1年続きました。やっと2年目から献立作成、給食管理、衛生管理、3年目で栄養指導デビューということでしたが、精神科病院だったため、食事の食べ方やとり方、また、買い物の仕方などが主な指導内容でした。
病院でのこの下積みの経験は現在でも活きています。
その理由の一つ目は献立を立てる際に、一つの料理にかかる時間、材料の理解、などの配慮ができるようになったことです。
二つ目は、栄養指導の時です。栄養に関する広い理解が必要になるのはもちろんですが、食事を聞き取った時に、患者様の調理技術や食事にかける思いや金額に至るまでトータルに考慮し、食べ方、献立提供も個々に合ったものが指導できるようになったことです。患者様に実際に作って食べていただくことの重要性を知り、実践できるようになったことなど、病院での経験はこれら栄養士としての基本の在り方の基礎固めになったと思います。

男性が9割の社員食堂で学んだこと

従業員1000人弱勤務、男性が9割の社員食堂では、「社員の健康意識を高める」を目的に奮闘しました。カフェテリア方式の昼食の中で、自分の身体に合った食事のとり方、仕事の効率を高めるための食事など提案をしてきましたが、委託業者であることや食や健康に意識のない社員の方にはそのことを伝えるのは困難なことでした。そこで、総務担当の方に働きかけ、必要性を理解してもらうための取り組みとして、食事展を行ったり、卓上メモなどを作り、啓発活動をしました。
また、委託給食の管理栄養士業務は、パートの仕事の効率化や売り上げ改善といった運営自体も任されます。パートの方々に社員食堂の給食の在り方、各自の仕事観を見つけてもらい楽しく勤務してもらうことも心掛けました。仕事はとても充実していましたが、主人の転勤でやむなく退職することになりました。10年間、給食管理だけではなく、人材育成や経営も学べた職場でした。

これまでの栄養指導・保健指導は、のべ10,000人以上

その後、ある中核市の健康増進センターの非常勤として勤務しました。毎日、健康診断として50名ほどが来られ、血液検査などの検査がすべて終わったあとに栄養指導室へ来室され、指導が必要な方への栄養指導をしていました。その他、糖尿病教室、婦人の健康相談なども行いました。こちらでは食事内容、検査結果と照らし合わせ、食事のとり方と検査結果との因果関係などを深く知ることになりました。看護師、保健師、薬剤師、検査技師、運動指導士多職種の対象者へのアプローチ方法の違いを知り、連携の必要性を感じる職場でした。ちなみに、この職場から今までで行った栄養指導・保健指導は、のべ10,000人以上になります。

保健所、保健センターでの経験

県行政の保健所、市行政の保健センターの仕事は似ているようですが違います。県の仕事は施設に、市の仕事は住民に、という点が異なっています。県の保健所では産休代替職員として4年、市の保健センターとしても産休代替職員として3年働いた後は、日々雇用として現在も勤務しています。
保健所の栄養士業務は給食施設監査として、特定給食施設がその施設に合った栄養管理や衛生管理が健康増進法に基づき遂行されているかを指導していました。時には厳しいことを言うこともありましたが、給食施設に勤務していたので現場の気持ちもわかり、その上でできることから改善してもらうようなアドバイスも行っていました。病院、老健、児童福祉、事業所などすべてのステージの栄養管理や診療報酬、制度などを知らないとお伝え出来ないと痛感し毎日が勉強でした。

そして、管内の栄養士や給食施設で働く職員のための研修会や食育事業、また管理栄養士の養成校からの実習の受け入れなど日々違う仕事があり、事業の組み立て、企画、必要性の構築など、事業をするためのプロセス作りが勉強できました。保健所の仕事では栄養士の仕事だけではなく、感染症や食中毒が出ると他の職員と一緒にその対策に関わることもありました。
また、歯科保健事業の担当になり、障害のある子どもの療育教室に歯科診療のお手伝い、また研修会の実施を通じて、口腔機能や身体機能を知らないと食べられない原因が分からず食指導が改善できないこと、口腔と食が関係することの必要性を知るきっかけになりました。そこでの歯科医師会の先生方との関わりで、さらに歯科の知識を勉強させていただきました。
保健センターでは乳幼児健診、特定保健指導、人間ドック後の保健指導など住民の方へ指導が主な仕事です。乳幼児健診では離乳食や食事のアドバイス、離乳食教室では実際に作ってもらい、食べさせる状態や具体的な量、固さ、与え方などの指導を行っていますが、要保護家庭など、多様な家庭環境、その中での指導では子どもの環境面、親の状況などを見ることが指導において重要なことなども、日々勉強しています。

歯科医院での管理栄養士の活躍について

小児歯科や矯正歯科をされている歯科医院で離乳食教室と働く管理栄養士のサポートをしています。歯科医院でする離乳食教室は、将来歯列不正や食べ方がうまくいかない子どもにならないよう、歯の生える前からアプローチし、生涯噛める子に育てるという目標の下で指導しています。講話のほか、一人一人に今の状態の離乳食を持って来てもらい、その子の発育に合っているかどうかを見ています、また食べさせ方のアドバイスも行っています。
歯科医院に勤務する管理栄養士のサポートとして、離乳食教室を実施できるように知識の習得、伝え方、教室運営など、また栄養指導ができるようになるための企画の立て方、指導法、スタッフとの連携なども、私の今までの管理栄養士としての現場や指導経験に基づきプログラムを作って指導しています。
これから歯科は予防が重要になっていきます。歯科医院がまちの健康ステーションのような役目をもち、その医院にいる管理栄養士が食事栄養指導を担えるようになり、求められる存在になること、そして歯科に管理栄養士がいることが管理栄養士の新たな職場の開拓にもなることを私は望んでいます。
現在では全国から、歯科医院で働く栄養士の教育に悩んでいる、また離乳食教室を医院でしたいとお考えの医院から依頼があります。

また、現在京都栄養医療専門学校で非常勤講師として「子どもの栄養とアレルギー」「子どものための食育演習」を教えています。教科書の内容を教えるだけでなく学生には、これから経験する職場のイメージをもってほしいので、体験を通じた内容や現場の写真を見せ分かりやすくすることを心掛けています。

管理栄養士になる前のイメージとなった後の感想は?

管理栄養士になる以前は、食事をサポートする人といった一方的な印象がありましたが、30年近く働いて感じることは、「栄養素士」にならないようにしたいということです。何を摂ったらいい、食べたらこう変わるといった栄養素のことをお伝えするのではなく、どうしたら食べるようになるのか、楽しく食べることを感じるのかが大事なところだと考えています。
食は身体を作る源ですが、心を育てる源でもあります。そのことが伝えられるようになることが大切だと感じます。

管理栄養士としてのやりがいを感じるシーン

現在は、フリーランスとして施設などで離乳食指導、また食育セミナー活動をしています。5年前から「食べ方で発達が変わる離乳食教室」「子どもの食べる力の育て方」「噛むことから始まる食の大切さ」などのテーマでベビー系のセミナー講師の方、保育関係、栄養士会、医療関係、歯科関係で講演を行い、乳幼児の栄養指導は3000名以上になりました。また保護者向けセミナーは年間20か所以上、指導者向けは年間30か所以上と全国から依頼が来るようになりました。
そこには、離乳食指導は一様に同じではなく、修正月齢、出生体重、親子の関係や環境に大きく左右されることも関係しています。私の教室の内容は離乳食を作ることや進め方ではなく、口腔機能や成長発達をみて、その子に合った指導をしているのです。そのためには歯科関係、保育関係、発達関係などの知識が必要になります。保健センターなどで多様な子どものケースを見ている経験が活きています。
今では、「噛めない」「食べられない」など食の悩みに応じた解決策も交えながらお伝えすることも増え、「今までにない離乳食教室」ということで指導者の方の見学も多くあります。
生涯の食習慣の大部分が形成されるのは未就学までの乳幼児期の生活習慣や食習慣。それが子どもにとって一生の健康に大きく影響するのです。
管理栄養士として、官民両方での栄養士経験20年以上、全ステージの栄養指導に関わり感じたことは、乳幼児期の食生活に携わることこそが私の使命、「噛んで食べる」「自ら食べる」「考えて食べる」子どもに育てる支援をしていきたいと考えています。

今後もまだまだ活躍していきたい

乳幼児の口腔育成、子どもの食育支援等に関わるセミナーなどに参加、セミナースキルアップ、コーチング、伝える技術、コンサルタント等、まだまだ勉強することはいっぱいあります。
栄養士の支援センターで食育子ども栄養部部長として、勉強会、支援講座も実施しています。そこで関わる栄養士たちの交流が刺激になり私の糧にもなっています。

今後は歯科医院での仕事として、管理栄養士の育成、離乳食指導をするためのサポートや企画をしていく仕事を増やしていきたいと思います。これからの歯科は予防が重要になることから、歯科医院がまちの健康ステーションのような役目をもち、その医院にいる管理栄養士が食事栄養指導を担えるようになればと考えています。そして、歯科に管理栄養士がいることが管理栄養士の新たな職場の開拓にもなることを望んでいます。しかし、歯科で働く栄養士は目標になる指導者がいるわけでもなく、また歯科医師の側でも雇ったもののどのように指導育成していくのか苦悩されている方も多くおられます。
歯科医師、そしてその医院にいる管理栄養士やスタッフが栄養や食育のことの理解と活躍ができるよう、その指導者として広めていくことが目標です。
またそこから乳幼児期からの子どもの健全な成長発達の支援と併せ、地域行政、保育や教育関係を取り込む活動も増やしていけたらと考えています。

最後に管理栄養士・栄養士を目指す人に向けて一言

管理栄養士は食のライセンスで唯一の国家資格です。今は華やかなメディアなどで料理講師の方が目立ちます。栄養士は自分の出し方などを分からない方も多いのですが、自分のいいところは一人一人あるのでそのことを発揮できるよう、また、専門分野に特化するなど考えるのは必要かと思います。
そして、フリーになりたいと考える栄養士は増えていますが、何をおいても経験値は必要になります。給食の現場は大変ですが、栄養士仕事の基礎となりますので、一度は経験されることをお勧めします。
また、保育士、保健師などは教育プログラムがあり、キャリアパスを見据えた研修計画があります。仕事で両方の資格の方に関わることが多いのですが、ある程度年齢に応じた知識やスキルを獲得されています。栄養士は新規採用で職場に入っても栄養士の人数が少なく、いきなりリーダーシップ、マネジメント力を要求されることも多くあります。そのため、調理現場や他の現場との板挟みになって離職される方も多く、就業後は自分でスキルアップするしかないというのが現状です。このようなことを防ぐため、栄養士のための研修制度をすべての栄養士が受けられる仕組みを作りたい。そのことが私の今後の夢でしょうか。

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みんなのコメント( 6

    • 田中 美智子
    • 田中 美智子
      24日前

      菅原房子様
      コメントありがとうございます。
      お褒めの言葉、恐縮です。
      普段はただのアラフィフこてこての関西のおばちゃんです。

      拍手 2

    • 田中 美智子
    • 田中 美智子
      24日前

      賀茂明子様
      コメントありがとうございます。
      栄養士になり、25年、他にも違う現場にいました。また今も月に1~2回は診療所にも行っています。
      延べ人数ですよ。栄養指導は今でもまだまだ勉強ですね。

      拍手 2

    • 田中 美智子
    • 田中 美智子
      24日前

      川口由美子様
      コメントありがとうございます。
      現場経験あがりで、フリーになりまだまだです。
      微力ながら、地道に頑張ります。

      拍手 2

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フリーランスとして活躍中の管理栄養士。栄養医療専門学校で非常勤講師&咀嚼や食育セミナー等の講師を務める - 田中美智子さん

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