COLUMN

普段、病院で特定保健指導や栄養相談等をしている管理栄養士が、貧困と食事・栄養・病気との切っても切れない関係について解説します。

子どもの貧困問題

子どもの貧困が大きな問題になっている日本では、平成26年1月に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が施行され、同年8月に「子どもの貧困対策に関する大網」が閣議決定されました。平成27年には、多くの都道府県においても、「貧困対策基本計画」も策定されています。
現在の日本での健康格差の一因として、子ども時代の経済的な格差があるのではないかと言われています。今回は、貧困な食生活がもたらす健康問題について、スポットを当てます。

外側からは見えにくい現代の子どもの貧困

1970年代くらいまでは日本での経済的な格差はそれほど大きくありませんでしたが、ここ数十年で各家庭の経済格差が大きく広がっています。ところが、昔は裕福な層しか所有できなかったようなスマホやゲーム機器などを保有していたりすると、外見からは貧困と判断できないため、現代の子どもの貧困は周囲からはわかりにくいという特徴があります。
また、貧困の格差は虫歯の本数にも表れています。虫歯は貧困による生活困難度が高いほど低年齢で多く、予防できる時代なのにできないという問題が発生しているのです。子どもの受診を抑制しているのは、医療費が払えないといった経済的な問題だけではありません。
日本では近年急激に非正規雇用化が進んでいますが、ことで生活に余裕がなくなり、休みが思うように取りにくくなったりして、子どもを病院や歯科に連れて行く時間がないのです。こうして親が子どもをケアすること自体が難しくなっているのです。

貧困がもたらす食生活への影響

貧困状態は食生活へも大きな影響をもたらします。家賃、公共料金などの固定されている支出が優先されていまい、食費にお金をかけられない世帯が生活困難度が高いほど多くなっているのです。貧困家庭では朝食の欠食頻度も高く、食事量自体が少なくなっています。
栄養面から見た食事の質についても、たんぱく質、ビタミンやミネラルの摂取不足が問題視されていますが、この背景には、給食以外の野菜の摂取頻度が少ないことが挙げられます。また、脂肪分や食塩量が多いインスタント食品やファストフード、お菓子の摂取が多くなっている傾向があります。
こういった食生活は、子ども時代だけではなく大人になってからも影響します。子どもの頃に身に付いた食習慣や生活習慣は、大人になっても続いていくことが多くなっています。子どもが成人になってからでは遅いのです。

後編へ続く

 

参考文献
東京都福祉保健局 子供の生活実態調査
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/joho/soshiki/syoushi/syoushi/oshirase/kodomoseikatsujittaityousakekka.html
公益財団法人ダノン健康栄養財団
http://gohagen.jp/
栄養日本 第59巻 第9号 日本栄養士会 2016

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管理栄養士が見た大学生の食生活の実態②

みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
      1863日前

      Eatreat編集部です。今回のテーマは、「食生活・栄養・病気と貧困」。とても考えさせられる内容です。

WRITER

小山 幸子

現在は病院、クリニックでの食事サポート、調理実習のほか、食コラムの執筆等。 『この食事が、人生で最後の食事かもしれない』を、モットーに業務に携わっている。 メカオンチのあがり症。 高校卒業後、会社員として8年間勤務後、26歳で栄養士養成校へ。 教員より年上の生徒だった経験を持つ異色の栄養士。 毎日書道会 会友 (雅号:小山 桃花)

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