薬膳料理と精進料理の違いとは?
「薬膳料理」と聞くと、「精進料理」の違いを知っていますか? この2つの料理を混同している方が多いように思います。まずは薬膳料理と精進料理の定義を確認しておきましょう。
薬膳料理⇒中医学の基礎理論を基に作られたおいしい食事のこと。健康はあらゆる要素の調和によるもの、という考え方に由来。
精進料理⇒魚介類や肉類を用いず、穀物・野菜などを主とする料理。殺生を戒める大乗仏教の考え方に由来。⇔生臭(なまぐさ)料理。 (*デジタル大辞泉より)
薬膳は、生命をいただいて生命を繋ぐという中医学の考えに基づき、そのバランスを重視した食事といえるでしょう。それに対して、精進料理は、動物の殺生禁止の仏教の教えに基づき、植物や植物由来の物だけを使った菜食主義の料理の一つです。
極端な食事制限は体調を悪くすることも
日本はベジタリアンやヴィーガンなどの菜食主義といわれる食習慣を持つ人が海外に比べて圧倒的に少ないため、きちんとした知識を持たずに極端な制限食に走ってしまう人たちがいます。私も極端な制限食のために、かえって体調を悪くしてしまった人をたくさん診てきました。
私個人は決して菜食主義を否定している訳でも推奨している訳でもありません。薬膳の知識を上手に活用すれば、スムーズにベジタリアンに移行することもできます。植物性の「補氣(ほき。気を補うこと)」「補血(ほけつ。血を補うこと)」の生薬を活用することで、体力をつけたり、貧血を予防したりする手助けになるのです。
薬膳はさまざまな食文化にも対応できる
薬膳は、どのような食文化の人にも対応できる智慧(ちえ)があります。それは「三因制宜(さんいんせいぎ)」といって「時・場所・人」の三因によって合わせるという考えを非常に大切にしているからです。薬膳は相手の環境や文化、季節や人に従うことからはじめます。
厳寒で植物が育たない肉食文化の国であるイヌイットたちに、野菜中心の食事はとうてい実現困難ですから、食文化や食習慣などの良し悪しではなく、その場所や人、季節に合わせて調整していく必要があるというのが薬膳の考えです。そういう意味では、いろんな選択肢がある日本は本当に恵まれた国だと私は思います。どんな食でも、いただけることへの感謝が大切です。
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