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HACCPが2020年に義務化されます。HACCPは 食品を製造する際に工程上の危害を起こす要因を分析し、それを最も効率よく管理できる部分を連続的に管理して安全を確保する管理手法です。管理栄養士でイートリスタの米本そのこさんがHACCPについて解説します。

一般的衛生管理とHACCPとの関係を理解しよう

HACCPの概念が理解できたら、次は「HACCP」と「一般的衛生管理」との関係が説明できるようにしましょう。 食品衛生法にも「一般的衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理の実施」と表現されていますね。HACCPに取り組むには、まずは一般的衛生管理を理解し、整えることが必須になります。
実は私自身、この関係性を理解することに最も時間を要しました。それまでは、とにかく厳しそうなHACCPを実施すれば安全になるのだろうと捉えていたのです。しかし、それは間違いでした。というわけで今回は、なぜHACCPだけでは食の安全性が確立できないのか詳しく説明します。

一般的衛生管理とは?

「一般的衛生管理」とは、HACCPを運用する上での大前提、つまり、土台となるものです(「前提条件プログラム(PRP)」とも言います)。

食品衛生法内には「施設の内外の清潔保持、ねずみ、こん虫等の駆除その他公衆衛生上講ずべき措置」という記載があります。一般的衛生管理を実施する目的は、異物混入や交差汚染を防ぎ、危害要因を増やさないことです。

一方、HACCPはメニューごとに決める重要な管理点となります。それを守れば、このメニューの安全性を担保するよ、といういわば「太鼓判を押す」ための管理点です。例えば「二枚貝を使用したメニューは、危害要因としてノロウイルスがあるため、中心温度85~90℃で90秒以上の加熱をする」これがHACCPとなります。

一般的衛生管理をもっと具体的に

具体的に「一般的衛生管理プログラム」は14項目(もともと10項目であったのが2019年11月に14項目へ増えています)で構成されています。

「HACCPに取り組もう!」と考えたら、まずはこの14項目について現状把握と、適切な状態にするための改善を行っていただけるとよいと思います。

そして、皆さんの現場でどのような衛生管理をしていくか「衛生管理計画書」を作成し、その計画が実現できるようなマニュアル「衛生標準作業手順書(SSOP)」を作ります。具体的には、手洗いマニュアルや厨房機器のお掃除マニュアルなどですね。マニュアル通りにできたかどうかを記録・確認し、是正すべき点があれば計画とマニュアルを見直していきます。

どのように取り組めばよいかイメージがわかない場合は、厚生労働省サイト内の該当する手引書(リンク②参照)を参照してみてください。イラスト入りで分かりやすく解説しています。

一般的衛生管理を整えないとどうなる?

もしも、これらが整っていない、つまり、衛生管理マニュアル(SSOP)のない中で調理を進めたらどうなるでしょう。 最後にどうせHACCPに則って加熱なりするのだから、作業前の手洗いくらいは感覚任せでよいし、器具が多少汚れていても気にしなくていいのでは?という考えのもと、合挽肉のハンバーグを調理したとします。

合挽肉には牛肉が使われているため、O-157が危害要因となります。これをHACCPでは「75℃で1分以上の加熱によって管理すれば死滅する」と考えます。
しかし、もし従業員の誰かがノロウイルスに感染していたらどうでしょうか?手洗いがいい加減にされていたら、ドアノブなどからノロウイルスの汚染はどんどん広がり、すべての従業員の方の手から交差汚染するリスクが新たに生まれ、本来は関係のないハンバーグにノロウイルスが危害要因として加わり、85~90℃で90秒以上加熱しなくてはならなくなります。
そこまでしても、結局は加熱後の食材を取り扱う器具類が汚れている上、盛付担当の従業員の方がノロウイルスで汚染された手で取り扱うことになり…アウトですね。
このように、一般的衛生管理がなおざりだと、HACCPで管理しなければならない危害要因が増え、それどころか、食の安全性が土台から崩れることになりかねません。

後編は、HACCAPと一般的衛生管理を区別する重要性について解説していきます。後編へ>>

参考リンク
厚生労働省令第68号
https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000566190.pdf

厚生労働省 HACCP導入のための参考情報
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161539.html

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協賛:ホシザキ株式会社

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
      1703日前

      Eatreat編集部です。HACCPを学ぼうの第二回(前編)です。

WRITER

米本 そのこ

ホシザキ関東株式会社で、スチコン・ブラストチラー・真空包装機を使った調理提案をしています。 日頃、厨房の調理オペレーションや、衛生管理の提案に携わっています。調理を科学するのが大好き! 経験や勘を数値化して、「おいしい」を共有しましょう♪ 【保有資格】 管理栄養士、厨房設備士、凍結含浸やわらか食認定講師、HACCPコーディネーター、新調理システム専任講師 【経歴】 大学病院での治療食調理担当 医療食品メーカーでの嚥下食調理デモンストレーター 厨房機器メーカーでのセミナー講師担当 厨房や機器、大量調理、衛生管理のことならなんでも聞いてください。

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