HACCPが2020年に義務化されます。HACCPは 食品を製造する際に工程上の危害を起こす要因を分析し、それを最も効率よく管理できる部分を連続的に管理して安全を確保する管理手法です。管理栄養士でイートリスタの米本そのこさんがHACCPについて解説します。
前回までで、HACCPの概念と一般的衛生管理についてご説明しました。今回はHACCPの「H:Hazard(ハザード=危害要因)」についてお話します。
危害要因をなぜ学ぶ?
食中毒を発生させないための注意点といえば、どんなことがあるでしょうか。
「肉が生焼けだったらお腹を壊すから注意が必要ですよね」
「調理後の料理は常温放置NGだから注意ですね」
これらは具体的に何が危険で注意しなければいけのか?ということを、今一度整理する必要があります。
というのも、HACCPでは「食中毒事故の要因になりうるもの(つまり危害要因)」と、「それをなくす・あるいは最小限まで減らす方法」とを明確にした上で、実行・記録することになるからです。
言いたかったことを「そんなの常識!」と思えるくらいになるまで、論理的に表現できるようになるため、衛生管理のレベルが個人の感覚に左右されることなくスッキリ統一され、スタッフ全員が納得してHACCPに取り組めるようになりますよ。
危害要因とは?
危害要因とは、適切にコントロールされなかった場合に疾病や傷害を起こす可能性のあるものを指し、大きく生物的要因・化学的要因・物理的要因の3つに分類できます。発生状況の9割以上が、ウイルスや細菌によるもの、つまり生物的要因です。化学的要因としては毒物や薬品、物理的要因は硬質異物が挙げられます。
危害要因ではないものは?
髪の毛や虫の死骸などいわゆる「異物」は危害要因として扱いません。混入することで製品の品質に関わりますが、安全性には影響がないからです。「これさえコントロールすれば製品は安全だ!」と言い切れるものが危害要因となります。
繰り返しになりますがHACCPとは、食の安全性を管理する手法です。ここで品質までも管理しようとすると、本当に重要な管理点がぼやけてしまいます。ただし、安全なら異物が混入してもよいわけでは当然ありません。ですので、前回学んだ一般的衛生管理や作業手順書で管理するとよいでしょう。
食中毒発生状況を見てみましょう
実際には、どのような危害要因が食中毒を起こしているのでしょう。2019年のデータを分析しました。
患者数としてはノロウイルスが半数以上を占めます。事件数で見ると、アニサキスやカンピロバクターがノロウイルスを上回ります。
さらに、一度の事件あたりでどれだけ患者数が出たかという「甚大度」という視点で数字を出してみました。
ウエルシュ菌、セレウス菌といった芽胞形成菌が上位に来ています。
生物的危害要因を学ぶポイントは?
発生状況やその種類の多さから、生物的危害要因について知ることが特に重要になります。HACCP運営のためには主に以下の情報が必要になるでしょう。
・どこに分布しているのか
・発症摂取数
・生育条件
・加熱で殺せるかどうか
・潜伏期間
・消毒薬の効果
厚生労働省の食中毒に関するページなどを参照し、最新の情報をもとに整理しておきましょう。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html
次回はこれらを踏まえ、調理における温度管理について説明します。
参考文献
厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/index.htm
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