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HACCPが2020年に義務化されます。HACCPは 食品を製造する際に工程上の危害を起こす要因を分析し、それを最も効率よく管理できる部分を連続的に管理して安全を確保する管理手法です。管理栄養士でイートリスタの米本そのこさんがHACCPについて解説します。

今回は、本シリーズ第1回目【「HACCP」の制度化!準備していますか?】で皆さんへ質問をした、ポテトサラダの衛生管理について説明していきます。大量調理施設にて、クックサーブで提供されるポテトサラダの調理工程で、起こりうるハザードをどのようにコントロールするのか、HACCP計画を立ててみましょう。

調理工程を分解し、HA(危害要因分析)を行う

まずはポテトサラダのレシピを細かく分解し、フローダイアグラムと呼ばれる調理工程図を作成します。

次に、1~23の工程にそれぞれどんなハザードが考えられるのか、つまりハザードが入り込むか・増殖するか・殺し損ねるかを、すべて挙げてみましょう。例えば工程1の「野菜類の受入れ」では、「有害な農薬や病原微生物が野菜類に付着していたら?」というハザードが考えられます。

CCP(重要管理点)はどこ?

ハザードを挙げたら、その中でHACCPで管理すべきハザードを決め、それらのハザードに対して“CCP”(重要管理点)を定めます。
(ただし、ここで管理するハザードは現場で対応できるものになります。例えば、規定以上の残留農薬等は現場では管理できませんので、生産者または納入業者のハザード管理になります。)
CCPとは、そこでコントロールしなければ、出来上がった料理の安全性を保障できなくなる工程です。危害要因の除去、または安全値まで低減するための最後の砦となります。

ポテトサラダの調理工程でCCPは「11殺菌」、「13加熱」、「14急速冷却」の3つになります。「11殺菌」の工程では、胡瓜と玉葱は加熱せずに提供するため、ここで病原微生物を殺す、「13加熱」では、加熱で野菜に付着している病原微生物を殺す、「14急速冷却」では、加熱で殺せない芽胞形成菌を増やさない、というように各工程で危害要因を管理します。
一般的衛生管理や、他の工程でCCPとして管理できるものであれば、その工程はCCPではないと判断します。

CCP以外の工程はどのように捉えるのか

では、CCPではない工程、例えば「22盛付」での危害要因分析はどのようになるでしょうか。その前段階のCCPで食品由来のハザードはコントロールできています。この工程で新たに生じるハザードの混入要因としては、「もしマスクをせずにくしゃみをしたら?」「トングが壊れて部品が落下したら?」などが予想されます。しかし、これらのハザード混入は、一般的衛生管理で作成した衛生標準作業手順書(SSOP)を遵守していれば起きることはありません。つまり、「SSOPで管理できる」と判断し、工程22はCCPとはならないのです。

各CCPに対するHACCP計画

ここではCCPのうちのひとつ「11殺菌」について説明します。
ハザードは野菜に付着した病原微生物の生残です。特にこのあと加熱など「病原微生物を殺す」工程がないため、ここでとどめを刺さなければなりません。そこで、どうなれば殺菌が完了するのかを示す基準を決めます。例えば、「有効塩素濃度○○mg/Lの次亜塩素酸水に○分浸漬する」などの基準です。これを毎回モニタリングし、クリアできているかを確認・記録します。また、この基準が殺菌として適切かを検証する方法も決めます。例えば、菌検査に出すなどがあります。もし、基準通りに作業が実行されなかった場合は、再度適切な方法で殺菌するなどの是正措置を定め、それぞれ記録をしていきます。これがHACCPプランとなります。
※このプラン・考え方はあくまで一例となります。

前向きな気持ちでHACCPに取り組もう

ここまで全5回にわたり、HACCPについて要点をしぼって説明してきました。HACCPの完全実施まで1年を切りましたね。HACCPの実施は、食の安全性の確保と同時に、作業が合理化・見える化し、調理に関わる方たちが納得して調理作業にあたれるなど、職場環境がよりよくなるメリットも見込めます。ぜひ前向きな気持ちでHACCPの実施に取り組んでいただけたらと思います。

 

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協賛:ホシザキ株式会社

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第5回  HACCPプランを立ててみよう! 

米本 そのこ

ホシザキ関東株式会社で、スチコン・ブラストチラー・真空包装機を使った調理提案をしています。 日頃、厨房の調理オペレーションや、衛生管理の提案に携わっています。調理を科学するのが大好き! 経験や勘を数値化して、「おいしい」を共有しましょう♪ 【保有資格】 管理栄養士、厨房設備士、凍結含浸やわらか食認定講師、HACCPコーディネーター、新調理システム専任講師 【経歴】 大学病院での治療食調理担当 医療食品メーカーでの嚥下食調理デモンストレーター 厨房機器メーカーでのセミナー講師担当 厨房や機器、大量調理、衛生管理のことならなんでも聞いてください。

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