HACCPが2020年に義務化されます。HACCPは 食品を製造する際に工程上の危害を起こす要因を分析し、それを最も効率よく管理できる部分を連続的に管理して安全を確保する管理手法です。管理栄養士でイートリスタの米本そのこさんがHACCPについて解説します。
調理におけるT-T(温度-時間)管理は、原材料の受け入れ時から提供するまでの間、重要となります。食中毒防止の三原則と照らし合わせ、これまでのコラムを踏まえて、考えてみましょう。
HACCP・一般的衛生管理(PRP)のおさらい
本シリーズの「第2回 HACCPの前提となる「一般的衛生管理」とは?」でご説明しましたが、HACCPはT-T管理だけでは成り立ちません。PRPが整ってこそ、それぞれの食品や工程にある危害要因を想定することができ、結果として適切な管理方法を設定できるということを振り返っておきましょう。
食中毒防止の三原則を振り返ろう
皆さんもご存知の食中毒の三原則について、調理工程内で具体的に何を実施するかを確認していきましょう。「つけない」はPRPで徹底的に管理し、「やっつける」「ふやさない」を、加熱しないメニュー・加熱するメニュー・加熱後に冷却・再加熱などをするメニューのようにメニューごとにわけてHACCPで管理すると考えると、わかりやすいですね。
生野菜・生果物などの加熱しないメニューは、電解水のような殺菌料や消毒薬で「やっつけ」ます。
加熱するメニューは、食中毒の生物的ハザードが死滅する温度・時間で加熱し「やっつけ」、提供まで適切に保温しておいて、「増やさない」ようにします。
加熱後に冷却や再加熱などの複雑な工程を踏むメニューは、食中毒至適温度帯をとにかく素早く通過させ、生物的ハザードが増殖する隙を与えないようにしましょう。その後は適切に保温・保冷します。これが「増やさない」です。
加熱でも死なない菌がいる!?芽胞形成菌とは
前回のコラムで、事故が起これば患者数が非常に多くなる菌としても紹介したウエルシュ菌やセレウス菌などの芽胞形成菌は、通常の加熱調理だけではやっつけられません。芽胞形成菌は加熱のような自身のピンチを感じるとシェルターを作ります。そして、一旦シェルターが形成されると、鍋釜で煮込んだ程度では殺すことができなくなります。その後、外がぬるくて快適な環境、いわゆる発育至適温度帯(60℃以下)になると、シェルターから芽を出して発育・増殖していきます。
芽胞形成菌へはどのように対処する?
では芽胞形成菌への対処にはどのようなものがあるのでしょうか。まず、調理前には芽胞形成菌の殺菌にも効果が期待できる電解水などを用いて洗浄し、可能な限り菌を落として殺しましょう。そして加熱後は、冷却を速やかに行い、増殖温度帯をできるだけ素早く通過させましょう。
ウエルシュ菌の原因食品としては、カレーやシチューなどが挙げられます。上の図のように、急速冷却の方法が確立していない状態なのに、前倒しで加熱調理をした後、大きな寸胴のまま長時間での常温放置や、冷蔵庫で緩慢冷却して発生させてしまった事例が多いです。加熱後に冷蔵温度帯で保管をしたい場合には、急速冷却が不可欠です。前倒し調理をしてしまいたくなることもあると思いますが、特に大量調理現場ではこのリスクを常に念頭に置いて調理をしましょう。
適切な急速冷却は具体的には?
大量調理衛生管理マニュアルには 「30分以内に芯温20℃付近(または60分以内に芯温10℃付近)まで」下げるよう工夫すること、とあります。更にこの場合、「冷却開始時刻と冷却終了時刻を記録すること」ともあります。調理後の熱いものを冷凍冷蔵庫へ入れるのは絶対NGです。冷凍冷蔵庫は保管目的の機器であって、急速冷却する能力はありません。急速冷却専用の機器を用い、T-T管理をモニタリングできる環境が理想ですね。
参考資料
厚生労働省 大量調理施設衛生管理マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000168026.pdf
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