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HACCPが2020年に義務化されます。HACCPは 食品を製造する際に工程上の危害を起こす要因を分析し、それを最も効率よく管理できる部分を連続的に管理して安全を確保する管理手法です。管理栄養士でイートリスタの米本そのこさんがHACCPについて解説します。

「HACCP」がなぜ今話題になっているの?

今話題のHACCP(ハサップorハセップ)。管理栄養士の皆様なら一度は学んだことと思います。なぜ、HACCPが話題になっているのかというと、食品衛生法が改正されたことで、食事を提供するすべての事業者に「一般的衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理の実施」が求められることになったからです。
完全実施は猶予期間を含め、2021年6月1日となります。このため、食事提供に関わる方は、例外なくこの知識を持っておかなければなりません。直接食事提供に関わる仕事に携わっている方でなくても、もしクライアントが制度化の対象であれば、それを無視するわけにはいきませんよね。
そこで全5回に渡って、HACCPの制度化の内容を解釈し、なるべく分かりやすくお伝えしていきたいと思います。

「HACCP」とはそもそも何?

HACCPを簡単に言うと、食事提供にあたってどんな危険(「危害要因」食中毒菌汚染や異物混入など)が潜んでいるかを事前に分析し、それをなくす、あるいは極限まで減らすやり方を調理工程に組み込むことで、安全性を担保する考え方のことを言います。「食の安全管理」には必須となる手法です。

ではもし、この考え方がないとどうなるでしょう。提供した食事がその時にはたまたま問題がなく食中毒が発生しなかった、ああよかったね、明日もそうだったらいいね。というような日々になります。そんな中で、もし食中毒が起きたら、冷凍しておいた「検食」から培養して、この食事が原因でしたと突き止めることになります。
でも、事故が起こってしまってからでは取り返しがつきません。最初から食中毒が起こらないに越したことはありませんよね。それを実現するのが「HACCP」という手法なのです。

衛生管理なら今でもやっているけれど?

これを読まれている皆様の中には、食の衛生管理についての知識はバッチリで、義務付けられなくとも、今でも当たり前にやっています。という方もいらっしゃるかもしれません。そのご意見ももっともです。
実際、「大量調理施設衛生管理マニュアル」に沿った衛生管理ができていれば、ほぼ完璧と言ってよいと思います。しかし、今一度調理現場をよく見てください。マニュアルが形骸化していたり、毎日実行するには不可能なくらい細かすぎるものになっていたりしませんか?

また、衛生管理について「普通はこんなことしない」だとか、「汚いと気持ち悪いから綺麗にしよう」など、感覚的な表現になっていませんか?もしくは「ちゃんと手洗いしよう」とか「しっかりまな板は洗う」など、曖昧な表現になっていませんか?
さらに、そうした衛生管理が携わる全員に徹底できているという確証は、どのように得られていますか?「あの人ならちゃんとやっているだろう」「この人は信用ならないから危なっかしい」というようなバラつきがあったら、どのように対処したらよいのでしょうか?

「見える化」「最適化」がキーワード!

今後、調理現場にいろいろな人が携わるようになり、でき上がった食事を喫食する方も多様化してきます。具体的な要因として真っ先に挙がるのがグローバル化です。日本国内だけでさえも、市町村ごとの保健所によって厳しさの基準が異なり、苦労されている方も多いことと思います。それがグローバル化するとどうなっていくでしょう?

育ってきた文化に基づいた、感覚や曖昧な表現での「普通」や「常識」で衛生管理をすることは、今後通用しなくなってくることが想像できますね。それを、科学的裏付けに基づき言語化して、誰でも実行できる仕組みにしていこう。更に、それらが実行されたことを確認、共有し、仕組みが適切かどうか見直す材料にするため、記録に残していこうということなのです。つまり、今皆さんが知識に基づいて当たり前にやっている衛生管理を「見える化」し、足りないものがあれば補い、何が重要かを明確にして「最適化」するということです。

具体的にどうやって取り組めばいいの?

さて、読者の皆様へ質問です。
「ポテトサラダ」を調理加工し提供するとしたら、どんなことに具体的に気を付けるか?想像してみてください。
じゃがいもに土が付着しているのでよく洗わなきゃ…、ということから始まり、胡瓜をカットするまな板がもし汚染されていたら?最後に盛り付け作業する方がお手洗いに行った後、手をちゃんと洗ってなかったら?…考え始めたら怖いですね。では、提供前に全部高温で加熱しますか?そんなことをしたらポテトサラダでなくなってしまいそうですね。

今後の連載で、HACCPへの取り組み方についてご説明していきます。連載が終わるころには、ポテトサラダの衛生管理をどうすればいいのか、スッキリすることと思いますよ。
HACCPの基礎がわかるEatreatアカデミー、「HACCP&衛生管理講座【基礎編】」も開催しておりますので、どうぞご参加ください。

参考文献
厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/index.htm

HACCPについてもっと知りたい方はこちら

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協賛:ホシザキ株式会社

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みんなのコメント( 2

    • Eatreat 管理栄養士
    • Eatreat 管理栄養士
      1528日前

      ただいま講座も開催中です!
      講師のよねもとさんがHACCPとは?HACCPの制度化について
      わかりやすく解説してくださいます。

      拍手 1

WRITER

第1回「HACCP」の制度化!準備していますか?

米本 そのこ

ホシザキ関東株式会社で、スチコン・ブラストチラー・真空包装機を使った調理提案をしています。 日頃、厨房の調理オペレーションや、衛生管理の提案に携わっています。調理を科学するのが大好き! 経験や勘を数値化して、「おいしい」を共有しましょう♪ 【保有資格】 管理栄養士、厨房設備士、凍結含浸やわらか食認定講師、HACCPコーディネーター、新調理システム専任講師 【経歴】 大学病院での治療食調理担当 医療食品メーカーでの嚥下食調理デモンストレーター 厨房機器メーカーでのセミナー講師担当 厨房や機器、大量調理、衛生管理のことならなんでも聞いてください。

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