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疾患別血液検査データの見方

皆さん、血液検査データを読み解くのは好きですか? 日々データを確認しながら対象者をみているうちに、だんだんと面白さがわかってくると思います。今回は管理栄養士・栄養士がよく取り扱う疾患にしぼって、血液検査データの見方をお伝えします。

糖尿病

●血糖(GLU)
基準値:正常型 空腹時110㎎/ dL未満、かつ2時間値140㎎/ dL未満
血糖は、血液中に溶解しているブドウ糖の濃度のことを指します。HbA1cと併せて糖代謝異常の判定基準となっており、1回の検査で正常型、境界型、糖尿病型が判定され、その組み合わせによって糖尿病と診断されます。また、70㎎/dl未満の場合は低血糖と診断されます。
血糖は細胞内に取り込まれない限り血流に依存し、すみずみまで移動して1日のうちに何度も変動します。
慢性的な高血糖で過剰にブドウ糖が取り込まれた血管細胞内では、代謝異常を起こし酸化ストレスが亢進します。三大合併症が、細い網膜血管や毛細血管の集合体である腎糸球体、両足の末端で発症するのはそのためです。
●ヘモグロビンA1c(HbA1c)
基準値:4.6~5.2%
ヘモグロビンA1ⅽは、赤血球のヘモグロビンにグルコースが非酵素的に結合したものが、どのくらいの割合で存在しているかを表したものです。
ヘモグロビンの血中半減期に対応しているため、検査から過去1~2カ月前の血糖状態を反映します。よって、合併症予防のための血糖コントロール指標として用いられています。
基準値とは別に日本糖尿病学会では、患者背景を考慮して個別に設定できるよう、6.0%未満(血糖正常化を目指す際の目標)、7.0%未満(合併症予防のための目標)、8.0%未満(治療強化が困難な際の目標)という3つの血糖コントロール目標を設けています。ヘモグロビンA1cは見かけ上、出血や鉄欠乏性貧血の回復期、肝硬変などでは低めになるため、他の検査値と併せて評価することが大切です。

脂質異常症

●総コレステロール(TC)
基準値:220㎎/ dL 未満
TCはリポたんぱくの総量で、コレルテロールの溶ける割合で比重が変わり、その比重によりHDL-CやLDL-C、カイロミクロンなどに分類されます。
リポたんぱく中の中性脂肪やTCが基準値以上で脂質異常症と診断されますが、HDL-Cのみが高値でもTCが高くなることもあります。どのリポたんぱくが増加しているかを確認することが必要です。
●LDLコレステロール(LDL-C)
基準値:140㎎/ dL未満
血清中のLDL-C値を求める方法としては、直接法とFriedewald推定式(※)から算出する計算法があります。Friedewald推定式はTGが400㎎/ dL 未満の場合に用います。
LDL-Cは、肝臓から全身にコレステロールを運ぶ働きがあり,高値が続くとアテローム性の動脈硬化を引き起こし,脳梗塞や心筋梗塞の発症リスクが増加します。

※Friedewald推定式:LDL-C=TC-HDL-C-TG/5

●HDLコレステロール(HDL-C)
基準値:男性40~60㎎/ dL、女性40~65㎎/ dL
HDL-Cは、余分なコレステロールを全身から回収する働きがあり、おもに低値の場合に問題となります。
●中性脂肪(TG)
基準値:150㎎/ dL未満
中性脂肪が150㎎/ dL 以上で動脈硬化を、500㎎/ dL で急性膵炎を引き起こしやすくなります。食事の影響を受けやすいため,早朝空腹時の採血が望ましいです。

慢性腎臓病

●クレアチニン(CRE)
基準値:男性0.7~1.1㎎/ dL、女性0.5~0.9㎎/ dL
クレアチニンは、筋肉にエネルギーを供給するクレアチンリン酸の代謝産物で、腎臓の糸球体で濾過(ろか)され、尿中に排泄されます。腎機能が低下すると、排泄機能が低下してクレアチニンが血中にとどまるので高値を示します。
また、クレアチニンは骨格筋の代謝産物で筋肉量に比例します。そのため、筋肉量の少ない高齢者や女性などでは低値となる傾向があります。保険適応外ですが、血液検査項目のシスタチンCは筋肉量に作用されないため、高齢者の腎機能の評価に役立ちます。
●推算糸球体濾過量(eGFR)
基準値:≧90㎖/分/1.73㎡
推算糸球体濾過量は、血清クレアチニン値や年齢、性別からおおよその糸球体濾過量を推定する指標です。多くの人のクリアランス結果を利用して作られました。腎機能低下で低値となります。
●尿素窒素(BUN)
基準値:7~19㎎/dL
体内で分解されたアミノ酸の最終代謝産物です。糸球体で濾過されて尿中に排泄されます。腎機能低下で排出が低下し、血中にとどまるため腎機能の指標として用いられます。
血液検査の場合は、尿素に窒素が含まれることから尿素窒素を測定します。腎臓の糸球体により濾過されるため、腎機能が低下すると尿からの排泄が低下し、血中濃度が上昇します。
たんぱく質摂取量の目安としてはBUN/Cr比を用い、10未満であればおおむね低たんぱく質の食事療法が守られているとされます。
●カリウム(K)
基準値:3.5~5.0mEq/L
カリウムはおもに細胞内に存在し,体液の浸透圧や酸塩基平衡にかかわっています。腎機能の低下で排出が低下し、高カリウム血症になることがあります。一方、原発性アルドステロン症や利尿剤などの薬剤によって低カリウム血症に陥ることもあります。
総死亡、心血管疾患の発症を抑えるために、一般的な基準値とは別に4.0mEq/L以上、5.5mEq/L未満を具体的な管理目標としています。

参考文献
・Nutrithion Care,検査値 読み解きガイド,メディカ出版,2022年,第15巻,第4号,P10~28
・臨床栄養,病棟管理栄養士のための臨床検査ファーストガイド,医歯薬出版株式会社,2018年,第133巻,第4号,P496~505,P573~577

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      512日前

      管理栄養士の山崎珠絵さんが管理栄養士・栄養士がよく取り扱う疾患に関する血液検査データの見方を解説します!

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WRITER

疾患別血液検査データの見方

山崎 珠絵

大学の調理学研究室助手で5年→料理教室で5年→急性期病院で15年→2018年~ケアミックス病院在職中。リハ部に所属し回復期リハ病棟専任をしています。80人いるセラピストと退院支援や地域の食支援に携わっています。2021年度摂食嚥下リハ栄養学会認定士取得→2022年度摂食嚥下リハ栄養専門管理栄養士取得(埼玉初)を目指し奮闘中です

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