「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」が、厚生労働省より公表されました。
本コラムでは、来年度から実施予定の第4期特定健診・特定保健指導に向けた改訂ポイントを3回シリーズで解説いたします。
「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」とは
厚生労働省のホームページに掲載されている「標準的な健診・保健指導プログラム」は、健診や保健指導を効果的・効率的に実施するための考え方や留意事項がまとめられた資料です。
定期的に内容の見直しが行われ、実施状況や課題を踏まえた改訂がされており、現在は【令和6年度版】が公表されています。
健診・保健指導の概念
健診は、健康状態の確認や病気の早期発見を目的に、地域や職場で実施されています。
その結果を基に、保健師や管理栄養士などの専門スタッフが生活習慣病の予防や健康の維持・増進のために支援する取り組みが保健指導です。
平成20年(2008年)から始まった「特定健診・特定保健指導」は、メタボリックシンドロームに着目して健診項目や対象者の選定基準が決められており、食事、運動、喫煙などの生活習慣の改善に向けた個別面接や電話、メールなどによるフォローアップが行われています。
保健指導の実施者は、対象者の行動変容につながるような情報提示や助言をしてセルフケア(自己管理)を促し、生涯にわたり健康な生活を維持していけるような働きかけを行う必要があります。
【令和6年度版】改訂ポイント ~健診項目~
食事の影響が大きい「中性脂肪」の基準値に「随時採血時」の値が追加され、保健指導判定値の改訂と階層化基準に伴う記載の変更がありました。
これにより、やむを得ず空腹時以外に採血する場合は、食直後を除き「随時中性脂肪」により脂質検査を行うことが可能となります。
【令和6年度版】改訂ポイント ~質問票~
特定保健指導対象者の階層化や生活習慣病リスクの評価を行うために用いる質問票に、以下のような変更がありました。
・喫煙について
第3期特定健診までは、喫煙に関する質問の回答は「はい」「いいえ」の2択でしたが、今回の改訂では「禁煙者(過去に喫煙していたが現在は喫煙していない人)」を含む3択となりました。
「禁煙者」は「生涯非喫煙者」より疾患リスクが高いことや、再喫煙のリスクがあることなどを考慮した支援が必要であるためです。
・飲酒について
飲酒頻度と飲酒量の回答選択肢が増え、対象者の飲酒習慣についてより詳しく把握できるようになりました。
WHOでは、「大量機会飲酒」を「(アルコール)1回60グラム以上を30日に1回以上する飲酒」と定義づけており、頻度が「月1~3日」であっても「3~5合未満」もしくは「5合以上」の量であれば、飲酒による健康リスクが高くなります。「月に1日未満」の場合と区別することが可能です。
・保健指導について
第3期特定健診までは、保健指導の利用に関する「意思」を確認する質問でしたが、今回の改訂で「利用歴」の確認に変更となりました。
特定保健指導は健診結果に基づいて対象となることが把握されておらず、「自分は特定保健指導を希望していないのに」という誤解からくるトラブルを回避する目的です。さらに、保険者が変わり過去のデータを保有していない場合であっても、利用歴を考慮した対応へと工夫することができるため、「毎回同じ話ばかりされる」といった対象者側のストレスを回避することも可能になります。
・質問票を踏まえた聞き取りやお声がけのポイント
保健指導を行う際、実施者は検査数値ばかりに目を向けがちですが、質問票の回答から対象者のバックグラウンドをあらかじめイメージしておくことも大切です。
事前に禁煙者とわかっていたら「禁煙達成を賞賛しよう」、飲酒を「やめた」と回答していたら「禁酒のきっかけを聞いてみよう」、保健指導の利用歴があれば「過去の取り組みや達成状況を踏まえた提案をしよう」など、支援方針を考える上でヒントにしていきましょう。
参考文献
・厚生労働省:「標準的な健診・保健指導プログラム【令和6年度版】 」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000194155_00004.html(2023年5月12日閲覧)
・厚生労働省:「第2回標準的な健診・保健指導プログラム改訂に関するWG」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-kousei_127752_00002.html(2023年5月12日閲覧)
・厚生労働省:「第4回 第4期特定健診・特定保健指導の見直しに関する検討会 資料」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32325.html(2023年5月12日閲覧)
関連コラム
・特定保健指導ってそもそも何?
・特定保健指導実施における制度の見直しについて