一般社団法人健康歯科協会、イートリートの共同開催で「管理栄養士のニューフロンティア『歯科医院』での働き方とは?勉強会」が、2019年5月12日(日)に開催されました。「歯科医院で管理栄養士がもっと活躍していくためには?」の答えがわかる、リアルな情報が盛りだくさんの勉強会となりました。
発表ダイジェスト
勉強会では、歯科クリニックに勤務する管理栄養士をはじめとする4人の講師の方々と、一般社団法人健康歯科協会代表理事・歯学博士の岡本暁先生からお話をいただきました。
さいま歯科 鵜池香織様の発表
最初に、神奈川県横浜市のさいま歯科医院で管理栄養士として活躍している鵜池香織様からの発表がありました。鵜池様は歯科医に勤める前は慢性期療養型の病院に勤務していたそうです。フレイル状態の患者さんに多く接する中で、患者さんの栄養改善にもっと関わりたい、フレイルに陥る前に食い止めたい、という想いで歯科医院に勤務することにしました。
さいま歯科では未就学児~後期高齢者と幅広い患者さんを対象としているため、管理栄養士としてのこれまで経験が生かせる環境にあるそうです。歯科医院に勤め、歯科の知識を積み重ねることで「管理栄養士として患者さんの口腔をみる(観察)する目を養う」重要性に気付き、現在の活動を続けています。
食習慣が口腔内や身体にもたらす変化を見逃さず、また正しく患者さん自身に伝えるために、患者さんとの問診も歯科医院に勤める管理栄養士の大切な業務と考えてながら仕事をされているそうです。
はる歯科クリニック 阪本陽花様の発表
次に、同じく神奈川県横浜市のはる歯科クリニックで管理栄養士としてお勤めされている阪本陽花様からお話をいただきました。はる歯科クリニックは、管理栄養士、保育士が多く在籍し、子どもの食育をトータルにサポートしている歯科医院です。
ドクターのアシスタントをすることで、歯科の知識を学ぶことが、他職種と相互理解の上で連携するのに必要な土台となるというお話が印象的でした。はる歯科は管理栄養士の活躍できる機会が多く、初診カウンセリング、ベビーデンタル、離乳食教室、スタッフ向け勉強会、スタッフ給食・レシピ作成など多岐に渡るそうです。特に初診カウンセリングは、症状だけでなく食習慣についてもヒアリングし、以降の治療+食事指導に繋がる重要な業務だとおっしゃっていました。
優歯科クリニックの柴原元様の発表
次に、東京都中野区・練馬区・小金井市にある優歯科クリニックの管理栄養士、柴原元様からお話がありました。優歯科では「オーラルケアからトータルヘルスへ」をクレドとして掲げているそうです。クレドとは、企業活動や仕事の基準になる信条・価値観のことで、経営理念よりも具体的な行動指針です。
管理栄養士はお口と全身の健康をつなげるだけではなく、医院運営にも関わる重要な役割を担っており、優歯科では現在10名もの管理栄養士が活躍しているそうです。またこの管理栄養士には、3つのキャリアパス「カウンセリング」「セラピスト」「運営」が用意され、それぞれに活躍の場があります。
管理栄養士のキャリアパスを明確に掲げ、管理栄養士がその専門性を生かした業務だけでなく、歯科の運営にも積極的に関われる様な仕組みづくりを進めているのが特徴というとことでした。歯科から始まる全身の健康という視点が広まれば、管理栄養士の働き方も多様化しそうですね。
かがやき歯科クリニック 松原愛様の発表
午後の部では、滋賀県草津市にあるかがやき歯科クリニックの院長、松原愛様からお話をいただきました。歯科医院に新卒で現在も勤務している松原様が、どのように課題を克服してきたか、どのように歯科医院での居場所や管理栄養士としての業務ができる環境を創ってきたかというポイントに絞ってお話をされていました。歯科医院勤務経験のない参加者にとって、とても共感できるお話でした。「命の入り口である口から健康を支えていく」という同じ仕事観を歯科医と共有できる、という言葉がとても印象残りました。
「管理栄養士ならではの業務」が増えるにつれて、新患数や売上UPにも貢献できていることを実感でき、とてもやりがいを感じられているとのことでした。かがやき歯科でコンサルティングをしているイートリスタでもある田中美智子様からのお話もありました。
勉強会を開催して
管理栄養士の方々の発表の後は、一般社団法人健康歯科協会代表理事・歯学博士の岡本暁先生から、歯科医院で働きたいと考えている、あるいは、既に働いている管理栄養士へのメッセージをいただきました。
今回の勉強会を開催して、歯科医院での管理栄養士の採用が増えるためには、次の3つのことが整備される必要があると感じました。
1.予防歯科がより一般的になり、定期的に“かかりつけ歯科医院”に通院する“デンタルリテラシー”の高い地域住民が増えること。
2.歯科医院に管理栄養士が在籍することによる経営メリットが経営者(歯科医師)に理解されること。
3.地域ニーズに即した、管理栄養士ならではの業務が提供できる体制(人員、サービス)が歯科医院に整備されるということ。
今後は、これらを同時に満たすのは大変なことですが、小さなことからでも取り組んでいくことが大事だと思いました。例えば、「生活習慣病の一つである歯周病と糖尿病とには高い相関性がある」ということを広めていくことなども、管理栄養士の歯科医院採用につながるのではないかと思いました。こうすることで、歯周病予防のために歯科医院在籍の管理栄養士が相談に乗るようなサービスが必要になるからです。地道な活動を続けていきたいものです。
参加者した管理栄養士の感想
・歯科医院で働く管理栄養士の仕事内容が分かって良かった。いずれ転職を考えているので参考になった。
・健康維持、病気予防のために歯科医院の役割が大きいことを確認できた。そして、その中て管理栄養士が活躍できる場があり、実際にそのような歯科医院があることを知ることができたことは、とても有意義な機会だった。
・実際の事例が聞けてとても参考になった。各医院にそれぞれいいところがあり、自分の医院でもどう組み込んでいけばよいか糸口が見えてきた。
・歯科医院に勤務する管理栄養士として何が出来るかが模索している状況で参加した。今回のセミナーを聞かせていただき、今後何ができるか何をやりたいかというのが見えて良かった。
・管理栄養士と歯科助手を兼任しているのですが、どちらともバランスをとって働きたいと改めて感じた。今後の診療においては、口腔の健康状態に意識を向けて、患者様の変化を評価できるような取り組みをしていきたい。
・次回、訪問歯科などで摂食嚥下介入されているお話も聞きたい。また、少人数グループでの情報交換会などがあれば嬉しい。
・小規模の個人院に勤めているため、個人院勤務の管理栄養士向けのセミナーを設けていただけると大変助かる。
・自分の住む地域では管理栄養士がいる歯科医院がない。行政の栄養相談をしていても歯科と医科の連携がないため、対象者の問題点を解決できないことも多くある。この点を解決できるように何かできないかと、非常に考えさせられるよい機会だった。
・歯科領域で活躍している栄養士さんのお話を聞けて心強く感じた。今後のスキルアップや交流の場の紹介もありがたかった。
今回の勉強会では、歯科医院スタッフが業種の違いを乗り越え、管理栄養士に歯科医院という新しい活躍の場が生まれた成功例やそこに行きつくまでの苦労話、今後の課題などをたくさん共有できました。ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。
今後もEatreatは、歯科医院という管理栄養士の新たな活躍の場を広げるため、歯科医院の求人情報、案内、勉強会開催など進めていきます。
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