新型コロナウイルス感染症による全国一斉臨時休業が行われてから1年以上過ぎましたが、今でも警戒が必要な状況が続いています。そんな中でも、公立学校では「学びの保障」に向けて、「新しい生活様式」を踏まえた学校衛生管理に沿い、感染症対策と学校教育活動を両立しています。
「学びの保障」に向けて
「学びの保障」は、令和2年6月に文部科学省が示した対策で、以下の4つの考えに基づいています。
①臨時休業中も、学びを止めない
②速やかに、できるところから学校の学びを再開する
③あらゆる手段を活用し、学びを取り戻す
④柔軟な対応の備えにより、学校ならではの学びを最大限確保
これらの考えを踏まえ、「効果的な学習保障のための学習指導の考え方の明確化」と「国全体の学習保障に必要な人的・物的支援」という2つの施作を実施しており、学校給食は「国全体の学習保障に必要な人的・物的支援」において、コロナ禍における「学びの保障」を担っています。
「新しい生活様式」を踏まえた学校衛生管理の中で
「新しい生活様式」は、令和2年5月に新型コロナウイルス感染症専門家会議からの提言によって示されました。全国一斉臨時休業が解除された令和2年6月から「新しい生活様式を踏まえた学校での衛生管理」に沿って、学校教育活動が再開しました。そこには、感染レベルに応じた行動基準や身体的距離の確保・マスク・消毒などが記されており、学校給食も行動基準に従った形での実施となります。学校再開当初は、1クラスを半分に分けた午前と午後の分散登校に伴い、2部制での給食実施を行いました。
初めて続きの給食実施
令和2年度は、前年度末から続く全国一斉臨時休業で、いつ再開するのか分からないまま献立作成をし、発注や準備を行う不安な日々が続きました。しかし再開が決定すると一転、分散登校に伴う2部制での給食実施のため、対応に追われる日々となりました。分散登校中は通常より早い時間からの給食実施となるため、時間への配慮や、蜜を避けるために簡易給食の実施、事故防止のためアレルギー除去対応がない献立の検討、そして夏季休業が短縮したため8月の給食実施と、初めて経験することばかりでした。
コロナ禍での献立作成と予算管理
皿数を減らしても摂取量が減らないように、主菜をご飯のお皿に乗せたり、配膳が簡単な紙皿を使用した主菜を多く提供しました。また、パンは袋に入れ、果物は袋入りの冷凍フルーツ、カップ入りヨーグルトを使用するなどしました。紙皿や袋などの消耗品や市販の果物、ヨーグルトを使用たため、1食の単価は上がり、予算管理に注意が必要となりました。
コロナ禍で得たものと課題
コロナ禍で戸惑いもありましたが、教職員と連携し課題解決に取り組む大切さや、行事などの変更にも柔軟に対応するなど、得たこともありました。
一方で、残菜の増加がありました。休校で活動量が減ったことや、簡易給食、感染対策に配慮した給食の実施で、給食内容への不満が残菜の一因にあるように感じました。通常の生活に戻ることで喫食量は増えましたが、生徒の健全な発達のための給食と感染対策を両立するために、一層の献立の充実が必要です。それと同時に、私語を控える給食時間の中で、生徒とのコミュニケーションの工夫が今後の課題となりました。
参考文献
・文部科学省:「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル ~「学校の新しい生活様式」~(2021.4.28 Ver.6) 」
https://www.mext.go.jp/content/20210514-mxt_kouhou01-000007426_1.pdf
・文部科学省:「「新しい生活様式」を踏まえた学校衛生管理について」
https://www.mext.go.jp/content/20200609-mxt_syoto01-000007788_2.pdf
・文部科学省:「学校給食摂取基準の策定について」
https://www.mext.go.jp/content/20210212-mxt_kenshoku-100003357_3.pdf
・文部科学省:「学校給食摂取基準」
https://www.mext.go.jp/content/20210212-mxt_kenshoku-100003357_2.pdf
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