「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き」が改訂され、2022年版がリリースされました。アレルギーの基礎知識、診断・治療における支援、各種アレルギーの特徴など手引きで情報が更新されている部分を解説します。
新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症
食物アレルギーの臨床型の一つとして記載されていた新生児・乳児消化管アレルギーは、検査によってIgE抗体が陽性とならない非IgE依存性食物アレルギーとして「新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症」に呼び方が変わり、表から除外されました。また、新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症の原因食物には、卵黄、大豆、コメ、小麦が追記されています。離乳食などで卵黄を食べた後、嘔吐や下痢を起こすケースが増えています。この場合、アレルギー専門医の受診を促します。
木の実の新規発症が急増
木の実類の即時型アレルギーが急増しており、直近の調査において幼児・学童期の新規発症原因食物で3位となりました。集団給食の献立への使用は、園や学校での新規発症の可能性もあり、慎重に考えるべき状況となっています。また、木の実類の中でも特にくるみの発症が増えており、食品表示法のアレルギー表示でくるみが義務表示となる動きになっています。
ライフステージごとのサポート
低年齢の子どもを育てる保護者にとって、我が子の食物アレルギー発症は避けたい事象です。近年の研究により、小児の食物アレルギーの発症リスクがわかってきており、手引き本文に記載されました。遺伝的素因、皮膚バリア機能の低下、秋冬生まれ、特定の食物の摂取開始時期の遅れなどがリスク因子となっているため、保護者の不安に寄り添いつつ、適切な時期に離乳を開始できるよう支援します。
また、食物アレルギーと診断されている場合、特に小学校入学のタイミングで患児本人に自律的な対応が求められるようになります。患児自身が摂取可能量や給食の対応を理解し、自律的に行動できるよう支援することが追記されています。
各種アレルギーの近年の傾向
食物アレルギーの各論も詳細情報が多数追記されています。ここではポイントをまとめます。
鶏卵:卵黄が食物蛋白誘発胃腸症の原因食物となることがあります。
小麦:グルテンフリー表示について追記されています。グルテンフリー表示は欧米の基準であり、小麦アレルゲンを含まない旨ではないことに注意が必要です。
果物:特に頻度の高い果物としてキウイ、バナナ、モモ、リンゴ、サクランボが明記されました。果物アレルギーは花粉との交差抗原性による口腔アレルギー症候群の認知度は高いですが、微量でアナフィラキシーを呈するケースもあるため注意が必要です。
大豆:摂取後5時間~半日で発症する遅発型の納豆アレルギーが増えています。
集団給食における対応の明記
食物アレルギーの診療・治療の原則は「原因食物の必要最小限の除去」ですが、これは個人を対象とした支援の基本姿勢であり、集団給食においては現場での発症予防のため「完全除去対応」が基本となります。例えば茹で卵であれば食べられる、といった場合でも、生活管理指導票にて食物アレルギーの管理を行う場合には提供は行いません。このような集団給食での対応について手引きに明記されました。また、誤食事故の原因と対策、病院給食の対応についても手引きの中に追記されています。
まとめ
今回の改訂では近年発症が増えている症例に関する情報や、現場での対応についてアップデートされました。
食物アレルギーの現況は日々変化しており、研究も盛んです。ガイドラインの改定時には自身の知見をアップデートし、日々の業務の見直しなどを行いましょう。
参考文献
・研究代表者 海老澤元宏: 「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022」,
https://www.foodallergy.jp/wp-content/themes/foodallergy/pdf/nutritionalmanual2022.pdf , 2023年3月24日
・消費者庁:「『くるみの特定原材料への追加及びその他の木の実類の取扱いについて』を公表しました。 」 ,
https://www.caa.go.jp/notice/entry/032460/ , 2023年3月24日
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