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「妊産婦のための食生活指針」が2006年に策定されてから15年が経過し、妊産婦をめぐる現状と課題が時代と共に変化したことから、2021年3月に改定されました。今回の改定では「妊娠前からはじめる」という名称が追加され、より早い時期から適切な対応が求められる内容になりました。

「妊娠前からはじめる」という文言が追加される

今回の改定の大きなポイントは、妊娠前からの食生活の重要性を明確にし、適切な食習慣を形成することを目指して、名称を「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」に変更したことです。
妊娠に気が付く前、妊娠初期から胎児の発育は始まっています。妊娠初期は大切な時期であり、妊娠前の低体重や葉酸摂取不足、偏った食生活、喫煙・飲酒の習慣等が胎児の発育と、赤ちゃんの将来の健康に大きく影響するといわれています。
妊娠は食生活を見直すきっかけになりますが、妊娠前から健康的に過ごせるよう主食・主菜・副菜を意識したバランスの良い食事をとり、過不足のない食生活を送る重要性が今回の食生活指針では示されています。


 

「無理なくからだを動かしましょう」が新たに加わる

以前は9項目で構成されていた食生活指針ですが、「からだを動かす」という項目が今回新たに加わり、10項目で構成されています。1日の歩数が5,000 歩未満の日本人女性の割合は増加しており、運動習慣者の割合は減少しています。産婦人科に勤めていた頃、必要以上に安静にしている妊婦さんがしばしば見受けられました。もちろん、過度な運動は妊娠中タブーですが、医師の許可の範囲で健康的に過ごせる活動量を確保することは大切になります。

出典:厚生労働省 妊娠前からはじめる妊産婦のための生活指針(解説概要P.8)


 

「周囲のあたたかいサポートから」という文言が追加される

ここ最近は「ワンオペ育児」という言葉をよく耳にします。出産後は身体的な疲労に加えて24時間体制の育児への緊張や不安、他者との接点が少なくなり孤独を感じるなど、精神的なダメージを受けるお母さんが増えています。妊娠期~産後はホルモンバランスが大きく変化し、マタニティーブルーや産後鬱(うつ)を発症させる可能性があります。さらにこのコロナ禍では、里帰り出産を断念したり、近親者からの支援が受けられない方もいます。
お母さんと赤ちゃんのからだと心のゆとりは、家族や地域の方など周囲の人の助けや支えから生まれます。家族間で協力して育児をすることはもちろんですが、社会資源を活用・発展させていくことが急務となります。

妊娠中の体重増加の目安が変更に

妊娠中の体重増加は多すぎても少なすぎてもリスクがあります。妊娠中の体重増加が胎児の発育に与える影響は、妊娠前から低体重の場合に、より大きいことが分かっています。令和元年の国民健康・栄養調査によると、女性の約1割に低体重がみられ、特に20歳代では約2割が低体重でした。
体重増加の推奨値が妊娠による生理的な体重増加値を下回っている可能性が危惧されること、さらに妊娠高血圧症候群の予防効果を支持する新たなエビデンスが乏しいことから、日本産婦人科学会が2021年3月に体重増加の目安を改訂しました。「増加量を厳格に指導する根拠は必ずしも十分ではないと認識し、個人差を考慮したゆるやかな指導を心がける」とも記されており、産婦人科学会から提言された目安を今回の指針に盛り込む形となりました。

出典:日本産婦人科学会 日産婦誌73巻6号


 

まとめ

近年、女性の社会進出や少子化、家族関係の変化などにより、妊産婦の健康やメンタルヘルスに問題が生じやすい環境が存在しています。
また、情報があふれる現代社会では、偏った情報や誤った情報に惑わされることもあり、妊娠前~授乳中の食事や離乳食への悩みは尽きません。お母さんの食生活は家族の健康に大きく関係しているため、まずは女性を心身共に健康にすることが、日本の未来には重要ではないでしょうか。
管理栄養士は正しい情報を発信し、お母さん方の不安に寄り添うことで子育ての力強いサポーターになれると私は考えます。


 

参考文献
・厚生労働省:「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針(令和3年3月)」妊娠中と産後の食事について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)(閲覧日2021年7月30日)
・厚生労働省:「妊産婦のための食生活指針(平成18年2月)」厚生労働省:「妊産婦のための食生活指針」の策定について (mhlw.go.jp)(閲覧日2021年7月30日)
・厚生労働省:「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」000687163.pdf (mhlw.go.jp)(閲覧日2021年7月30日)
・日本産婦人科学会:「妊娠中の体重増加指導の目安について」日本産科婦人科学会雑誌第73巻第6号 (kyorin.co.jp)(閲覧日2021年7月30日)


 

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      21日前

      今年の春に改定された「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」の改訂ポイントをイートリスタの沼倉真宝子さんに解説していただきます。

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WRITER

妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針 改定のポイント

沼倉 真宝子

1日3回、1年で1000回 ​栄養を摂るためだけの食事ではなく、 日常に密着した食生活を一緒に考える。 気軽に相談できる場を創りたい。 個々に合ったライフステージごとの食事を提案します。 病院管理栄養士として14年勤務。総合病院、療養型病院、リハビリ病院、産婦人科病院を経験し様々なライフステージや臨床栄養を習得。栄養管理、給食管理、NSTなど幅広い業務経験あり。延べ3000人以上の栄養指導を実施。また、離乳食教室を8年主宰し、3500人以上の離乳食相談の経験を積む。指導媒体の作成や、セミナー講師も経験豊富。 プライベートでは、小学生の姉妹を育てるママ。自身の手術、癌で家族を亡くしたこともあり、「育児・闘病・自宅で家族を看る」当事者として同じ目線で、頑張り過ぎない方法を一緒に考えられるのではないか…。そんな経験から、疾病・介護予防や日常の食生活を共に考えられる仕事がしたいと思い2021年夏 独立。 フリーランス栄養士として食育、栄養相談、在宅訪問、料理教室、SNS発信、地域活動など身近な栄養士として活動していきたいです。 気軽に相談ができる場を創り、充実した食生活を送るお手伝いをします。 肩の力を抜きながら、無理なく続けられる食事。一緒に考えてみませんか?

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