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妊娠中の女性は身体の変化に加えて心の変化も大きく、ちょっとしたことで自信をなくしたり、自分を責めたりしてしまうことがあります。そのため、食生活についてアドバイスする際には伝え方に配慮が必要です。本コラムで事例別に食事指導のポイントを見てみましょう。

事例①Aさんの場合:「なぜか体重が増えてしまいます。」

背景:妊娠17週、身長157cm、体重58kg(妊娠前51kg)、つわりが終わってから1ヶ月で5kg体重が増加しており、体重増加が急激である。

体重増加量が適切かは「妊娠前から始める妊産婦のための食生活指針」を基に判断し、体重が急激に増えている場合は食生活などを見直す必要があります。
Aさんは3食のバランスは良いのに、体重増加量が大きいです。原因として「間食」が思い浮かびますが、まずは「食事バランスを意識できている」という現状を認め、それを伝えましょう。そうすることで、こちらの質問に答えてもらいやすくなります。結果的に、朝起きてから寝るまでの行動を細かくお話しいただくことで、毎日通勤途中に清涼飲料水とチョコレートを購入し、摂取していたことがわかりました。清涼飲料水をフレーバーウォーターにすることと、おやつのエネルギー量の目安を伝え、実践できそうか確認しました。

事例②Bさんの場合:「野菜ジュースでも良いですか?」

背景:妊娠26週、身長162cm、体重55kg(妊娠前49kg)、便秘の主訴があり食事のポイントについて質問を受けた。

Bさんは仕事が忙しく、朝・昼の食事のバランスが整いにくいです。野菜摂取状況を伺う中で、「野菜ジュースはどうですか?」と質問がありました。まず、「野菜をとろうと意識している」ことを認め、伝えます。「お忙しいですもんね、3食きっちり副菜をとることは大変ですよね」と相手の状況に理解を示した後、野菜ジュースでビタミン類などは補えても食物繊維が補えないという事実を伝えます。また、できる限り何か噛んで食べる野菜を組み合わせて欲しいので、スムージータイプなど野菜ジュースの種類や、冷凍野菜・カット野菜を用いた準備しやすい副菜など、実践しやすい情報を伝えました。

事例③Cさんの場合:「体重が増えるのが怖いです。」

背景:妊娠20週、身長155cm、体重45kg(妊娠前43kg)、太ることが心配だが、胎児の栄養が気になると食事相談を受けた。

体重増加量は妊娠前の体重が「やせ」であればより大きくなります。Cさんは、妊娠前にダイエットをしていたため、妊娠による体重増加が不安になってしまった事例です。まずは「自分の体型がどんどん変化していくことへの不安」を受け止めます。その上で、体重増加が思わしくない場合に、切迫早産や低出生体重児などのリスクがあるという事実を伝えます。やせの場合の体重増加量は12kg〜15kgですが、今回のようにダイエットなどをしていた場合、体重増加量をそのまま伝えることは余計に不安になることがありえます。「まずは今より2~3kg増やせるようにしてみましょう」と、受け止められそうな数字で提案しました。

まとめ

妊娠中の女性は身体や心が自分の思い通りにならない不自由さの中で、食生活を見直す必要があります。まずは相手のありのままの状態を受け止め、決して否定しないようにすることが大切です。その状態が続くことによるリスクを伝える必要はありますが、それと同時にすぐにできることから具体的なアドバイスを行うことが大切です。「体重が増え過ぎているので減らしましょう」、「腹八分目にしましょう」など曖昧な声かけではなく、わかりやすく実践しやすい提案を心がけましょう。

 

参考文献
・厚生労働省:「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくりを~ 解説要領」、厚生労働省 妊娠中と産後の食事について、https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/ninpu-02.html (閲覧日:2022年1月17日)

 

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      1000日前

      妊娠中の女性に寄り添ったアドバイスのポイントを奥野由さんに紹介していただくコラムの後編です。今回は、事例別に食事指導のポイントを見ていきます。

      拍手 0

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WRITER

妊婦の不安に寄り添う食事指導 後編

奥野 由

『忙しい育児中の家族の食を支えたい』をモットーに活動中。母子栄養協会資格講座認定講師。専門職向け研修会への登壇や、レシピ提案・コラム執筆を行なっています。 前職は大手加工食品メーカー研究開発職。企画設計からロットアップ・表示作成まで一連で商品開発も行えます。

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