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「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き」が改訂され、2022年版がリリースされました。前半では食物アレルギーの概要と手引きの活用方法について、後半では2017年版からの変更点についてポイントを解説します。

食物アレルギーとは

食物アレルギーとは、食物に含まれるアレルゲンによる抗原特異的な免疫反応よって、生体に不利益な症状が引き起こされる現象のことです。
症状は原因食物のアレルゲンを経口摂取することによってのみ引き起こされるのではなく、接触や吸引によっても引き起こされます。食物アレルギーを引き起こすアレルゲンの多くはタンパク質で、これらが体内に入った際に特異的IgE抗体が作られることで感作され、次にアレルゲンが体内に入った際にアレルギー症状が発症します。そのため、特異的IgE抗体が、形の似ている2つのタンパク質に結合できる場合には、交差抗原性(似た抗原を持つ異なる食物でアレルギー症状を発症すること)が生じることもあります。

食物アレルギーの診断と治療

食物アレルギーの診断は、次の2つが確認できた場合に確定診断となります。
①問診または食物経口負荷試験により、特定の食物摂取によるアレルギー症状が誘発されること
②血液検査による特異的IgE抗体検査または皮膚プリック試験によって陽性が確認され、その食物に感作されていること

治療の基本方針は、対象食物の「必要最小限な除去」です。「心配だから」とむやみに除去する食品を増やさないようにサポートし、食べられる範囲を医師と共に確認した上でその量までは積極的に摂取するように指導することが望まれています。(集団給食においては対象アレルゲンを完全除去することが望ましいです。)

食物アレルギー患者に必要な栄養指導

食物アレルギーの栄養食事指導においては、患者が「健康的な」「安心できる」「楽しい」食生活を送れるように支援することが望まれています。この支援は医師の診断と指示に基づいて行います。栄養士として重要な役割は、医師の診断を正しく理解し、患者に対して不必要な除去がないか確認を行うことや、不安に寄り添いながら安全に食べられる量を摂取するための具体的な食事例などを伝えていくことです。また、食物アレルギーでは特定の食物の摂取がなくなる、あるいは非常に量が少なくなることから、その他の食材からバランスよく食事を構成できているかを確認することも重要な役割となります。

手引き作成の目的と活用方法

「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き」は、管理栄養士による食物アレルギー患者への栄養食事指導のレベル向上のほか、患者の生活に関わる全ての人に対して参考となるものとしてまとめられています。
小児で寛解が見込まれる食物アレルギーの治療中は、自宅にて対象食物を摂取する必要性があり、よりわかりやすい指導が求められます。対象食物の種類によっては、除去すべき食材が難解なものもあり、管理栄養士のみが知見を深めるのではなく、患者や患者家族と共にこの手引きを利用して理解を深めることが重要です。

手引き改訂のポイント

今回の「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き」の改訂では、2021年に改訂された「食物アレルギーの診療ガイドライン」の内容を反映しています。食物アレルギーの診療ガイドラインでは、小児における食物アレルギーのリスク要因や近年増えている臨床型について情報がアップデートされており、食物アレルギーの栄養食事指導の手引きにその内容が反映されています。また、原因食物の除去方法について、個人と集団給食の考え方の違いが強調されています。

後半では手引きの改訂ポイントについて詳しく解説します。

 

参考文献
・研究代表者 海老澤元宏:「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022」, https://www.foodallergy.jp/wp-content/themes/foodallergy/pdf/nutritionalmanual2022.pdf , 2023年2月6日.
・一般社団法人日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会:「食物アレルギー診療ガイドライン2021」、株式会社協和企画、(2021)

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      609日前

      食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022の改訂ポイントについて管理栄養士の奥野由さんに解説いただきます。

      拍手 0

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WRITER

改訂ポイントを解説!食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022~前編~

奥野 由

『忙しい育児中の家族の食を支えたい』をモットーに活動中。母子栄養協会資格講座認定講師。専門職向け研修会への登壇や、レシピ提案・コラム執筆を行なっています。 前職は大手加工食品メーカー研究開発職。企画設計からロットアップ・表示作成まで一連で商品開発も行えます。

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