連載している「こどもの食物アレルギー」についての第4回目。今までのコラムはこちらをご覧ください。今回は、保育園や学校における食物アレルギーへの対応や、誤食事故を防ぐための工夫についてまとめました。
保育園・幼稚園・学校における食物アレルギーの対応
厚生労働科学研究班による「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017」にて、食物アレルギー対応の原則は、以下の5つが示されています。
1. 食物アレルギーがあっても原則的には給食を提供する。
2. 安全性を最優先に対応する。
3. 食物アレルギー対応委員会などで組織的に対応する。
4. ガイドライン※に基づき、医師の診断による書類を提出する。
保育所では生活管理指導表などの提出を原則とし、
学校などでは学校生活管理指導表の提出を必須とする。
5. 完全除去対応を原則とし、過度に複雑な対応は行わない。
家庭では、必要最小限の除去にとどめることが、食物アレルギー児のために重要ですが、集団給食では、“食べられる範囲”に合わせた個別対応をすることは推奨されていません。それは個別対応を行うことで、調理・配膳が煩雑になり、誤食事故の危険性を高めるためです。誤食事故を予防するために、集団給食では、完全除去を基本とした除去食・代替食対応を行うことが望ましいとされています。
学校給食においては、平成27年3月に文部科学省から出された「学校における食物アレルギー対応指針」にて、学校給食における食物アレルギー対応の原則的な考え方として、「安全性の確保のために従来の多段階の除去食や代替食提供は行わず、原因食物を提供するかしないかの二者択一を原則的な対応とすることが望ましい」とされています。
保育園においては、2011年3月に厚生労働省から出された「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」にて、保育園におけるアレルギー対応の原則として、「家で食べことがない食物は基本的に保育所では提供しない」ことになっています。
各施設において、指針やガイドラインをよく理解し、安全な給食運営を行っていただければと思います。
誤食事故を防ぐために
安心・安全の給食提供を行う上では、施設ごとに献立作成から調理作業、受け渡し、配膳において、リスクを減らす工夫が必要になってきます。
1) 献立の工夫
✓ 献立チェックの見落としリスクを低くするために、原因食物を使っていることがわかる献立名にする。
例:チヂミ→チーズ入りチヂミ
✓ 加工食品は、可能な限り原因食物を不使用のものにする。
(※規格が変わることもあるため、定期的にチェックは必要)
2)調理作業の工夫
✓ アレルギー対応食は、コンタミネーションを防ぐためにも最初に調理する。
✓ 調理器具はよく洗い消毒する。または調理器具を分ける。(目立つ印をつけるなど)
3) 受け渡し・配膳の工夫
✓ 人から人への受け渡し時のダブルチェック。
✓ 配膳するトレーの色を変える。
✓ 献立表は転記せず、作業を通じて、写しを使用する。
など、一例ではありますが、おのおのの施設での環境・人員により、調理場スタッフだけでなく、食物アレルギー児に関わる全ての職員と一緒に検討することが大切です。
保護者面談の必要性
食物アレルギー児のQOL向上のためにも、保護者との連携は必要不可欠です。
定期的に保護者と面談をし、食物アレルギー児への不安や悩みを受け止め、情報提供や支援を行うことや食生活の状況、治療の経過などを確認し合い、具体的な対応内容について十分な相互理解を図ると、リスクを減らすことにもつながります。
まとめ
第1回目から連載してきた「こどもの食物アレルギー」について、いかがでしたでしょうか。食物アレルギーの対策はこの20年余りで大きく進歩したため、知識や理解に差が生じたり、食物アレルギー児への対応もさまざまなため、混乱している施設もあるかもしれません。安全に給食提供を行うためにも、学校では食物アレルギー対応委員会を定期的に開催し、保育園では施設で働いている全ての職員が対応策などを徹底できるようにすることが大切です。また、食物アレルギー児が豊かな食生活を送れるように、職員の意識向上のための研修や講座を実施するなどして連携し、理解を深めていただけたらと思います。
※本コラムでは、ガイドラインの名称・引用には児童福祉法に基づく正式名称「保育所」を用いていますが、文章は通称として広く使われている「保育園」を用いて説明しております。
参考文献
① 厚生労働科学研究班による「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017」
② 文部科学省「学校給食における食物アレルギー対応指針」2015年
③ 厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」2011年3月
④ 医歯薬出版「新版食物アレルギーの栄養指導」2018年8月
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