近年増加し続ける「食物アレルギー」。食物アレルギーやアナフィラキシーの対策は、この20年余りで大きく進歩しました。今回は、食物アレルギーの最新情報と離乳食の進め方についてまとめました。
乳幼児における食物アレルギーの現状
食物アレルギーのもっとも代表的な病型は、原因となる食物を食べてから通常2時間以内に症状が誘発される即時型食物アレルギーです。年齢ごとに有病率は異なり、0歳児が全体の34.1%を占めて、もっとも多いです。以降、年齢を経るに従って急激に減少していきます。原因となる食物は、鶏卵(39.0%)、牛乳(21.8%)、小麦(11.7%)の割合が多く、そのほとんどは小学校入学前までに治ることが多いと報告があります。
食物アレルギーの症状について
親御さん自身で判断され、間違った認識をされている方もいらっしゃるため、食物アレルギーについてお話します。
食物アレルギーとは、『食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象』のことを言います。簡単に言うと、ある食べ物に対して、それを食べたり、触ったり、吸い込んだりして体の中に入った時に、湿疹やくしゃみ、咳などの症状が現れる状態です。
また、症状には再現性があり、1回食べただけで口の周りに発赤が出たからと言って、食物アレルギーとは判断できません。正しい診断のためには、医師による負荷試験が基本になります。
食物アレルギーに配慮した離乳食の進め方
昔は、「離乳食を進めるにあたって、食物アレルギーになる原因食物は、ある程度の月齢になってから食べた方が良い」といわれていました。しかしその後の研究から、離乳の開始や特定の食物の摂取を遅らせても、食物アレルギーの予防効果があるという科学的根拠はないことから、生後5~6か月頃から離乳を始めるのが望ましいとされています。
また、2019年に約12年ぶりに改訂された「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)」では、これまでは生後7〜8カ月頃とされていた固ゆでした卵黄の開始時期が、今回の改定では離乳初期の生後5〜6カ月頃と少し早くなりました。卵白は改定前と同じく生後7〜8カ月頃からとなっています。卵黄は、たんぱく質も鉄分も豊富なため、怖がらずに与えていきましょう。
離乳食の進め方として、初めての食物を与える時は次のことに気をつけます。
・少量にして、子どもの様子を見ながら無理のないペースで進めていきましょう。
・万が一、アレルギー症状が出ても医療機関が受診できるように、平日の午前中に与えるのが理想です。
・アレルギーの有無が確認できるように、必ず子供の体調が良い日に与えるようにしましょう。
食物アレルギーが疑われる症状があらわれた場合は、自己判断せずに必ず受診することが大切です。
まとめ
食物アレルギーと診断されると過剰に心配してしまい、原因食物以外の食品まで除去される方も少なくありません。例えば、鶏卵アレルギーであるのに、鶏肉も食べてはいけないと認識される方もいらっしゃいます。「念のため」「心配だから」という理由で食物除去をしてしまうと、子どもの成長に必要な栄養素が不足してしまうこともあります。食物除去は「必要最小限に」医師が判断する「食べられる範囲までは食べる」ようにしましょう。
次回は、食物アレルギーの症状や食生活上の課題点などについてお伝えします。
参考文献
・厚生労働科学研究班による「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017」
・監修:海老澤元宏 編集:今井孝成、高松伸枝、林典子 「食物アレルギーの栄養指導」、医歯薬出版株式会社(2018年8月1日)
・厚生労働省 授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)
関連コラム
・離乳の開始〜完了までの離乳食最新情報を徹底解説!【前編】
・離乳の開始〜完了までの離乳食最新情報を徹底解説!【後編】
・離乳食の進め方