今回は、前回のコラム「妊娠中のアルコールはなぜダメなの?① 」の続きです。
腸内細菌が胎児に与える影響
最近、妊娠中に食生活で腸内細菌を整えることが注目されています。胎児の腸内には細菌はいません。出産時に胎児が産道をくぐり抜けてくる時に、産道の細菌を口からとり入れることで、その細菌が腸に達して腸内細菌として初めて住みつくといわれています。そのため、新生児の腸内細菌は、母親とよく似ていることがわかっています。このことから、母親の腸内細菌を整えることは、胎児にとって重要なことがわかります。
妊娠中の発酵食品の落とし穴
日本の伝統的な食品には、納豆や味噌など発酵食品がたくさんあり、腸内環境を整えることに役立つと考えられています。それでは、発酵食品を摂るために、最近注目を集めている甘酒も積極的に摂るべきなのでしょうか?
結論としては、妊娠中は控えた方がいいでしょう。甘酒のコラムでもご紹介しましたが、甘酒の製法には2つの種類があります。米麹から作られるものにはアルコールは含まれていませんが、酒粕から作られるものは1%未満のアルコールを含んでいます。商品によっては、米麹から作った甘酒に酒粕を加えて味を調えているものもありますので、原材料をきちんと確認し、確認が取れない場合には、控えたほうがいいでしょう。微量のアルコールであれば、加熱によって飛びますので、調味料として使用することをおすすめしています。
妊娠発覚前の飲酒は大丈夫?
妊娠したことがわかると、最近自分が飲んだものや食べたものが、赤ちゃんに影響を与えないか気になってしまうと思います。妊娠がわかる前に飲酒していた場合でも、胎児が問題なく発育しているようであれば、大丈夫でしょう。アルコールは適量の範囲であれば、1日で代謝されるため、妊娠が分かる前の飲酒については、あまり神経質になる必要はありません。
ただし、妊娠がわかってからは、胎児のためによくないことは、きっぱりやめましょう。胎児は、母親の子宮にしがみついて、成長を続けています。母親が食べたものが胎児の成長の糧になることを忘れてはいけません。
人生は選択の連続です。そんな中、現代は情報が膨大にあふれ、何が正しい情報なのか判断に迷ってしまうこともよくあります。妊娠に関する情報も世の中にあふれていますが、妊婦さんの体調や生活、環境、妊娠の状態、胎児の状態は、一人ひとり違っています。正しい情報とは妊婦さん一人ひとりの状態がわからなければ、判断ができません。
少しでも不安なことがあるときには、必ず主治医や助産師さんなど、医療機関の方に相談することが大切です。質問したいことをまとめておいて、健診時に確認するのも一つの方法です。
参考文献
妊産婦のための食生活指針 厚生労働省
娘が妊娠したら親が読む本 竹内正人・岩下宣子 大泉書店 2015
FirstPre-mo─妊娠がわかったらすぐ読む本─ 主婦の友社 2016
妊娠中の食事 細川モモ・宇野薫 主婦の友社 2016HA
初めての妊娠・出産 笹森幸文 ベネッセコーポレーション 2016
赤ちゃんすくすく時期別妊娠中の食事 笠井靖代・佐藤真之介 西東社 2016
妊娠中のおいしい食事と栄養 田中守・牧野直子 ナツメ社 2013
妊娠中から授乳中のママのための食事と栄養お悩み解決ブック 竹内正人 かんき出版 2015
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