妊娠中は免疫力が低下する
本来であれば免疫力は、様々な細菌や害を及ぼすものから身体を守り、病気にかかりにくくするように働いています。ところが妊娠中は、その免疫力を自ら低下させているといわれています。
母親に宿った赤ちゃんの遺伝子は、半分は父親のものです。そのため、妊娠している母親の身体からみれば、赤ちゃんは「異物」とみなされてしまいます。母親の免疫力が強いと異物としての赤ちゃんを攻撃し、排除しようとして、流産や早産の危険性が高くなってしまいます。
もともとの免疫力の強さに関わらず、妊娠中は特に細胞性免疫と呼ばれるシステムの機能が低下するようなしくみになっています。
たとえば移植手術を行うとき、自分の身体の一部を使う場合と、臓器移植のように他人の身体の一部を使う場合があります。前者では拒否反応は起こりませんが、後者では拒否反応が起こります。
この反応が細胞性免疫の効果です。そして妊娠中は後者と同じ状況ということになります。そこで、母体は細胞性免疫を低下させることで、赤ちゃんを拒否反応から守ろうとするのです。そしてその代わりにかぜや病気になりやすくなってしまうのです。
免疫力が下がると食中毒にもなりやすくなる
妊娠中は免疫力が下がるため、風邪だけでなく、食中毒にも注意をする必要があります。
食中毒は食品をよく加熱することで予防できますが、加熱をしないで食べるものはどうすればよいのでしょうか。
そこで今回は、妊娠中に気をつけたい魚介類、特に刺し身や寿司など生で食べる魚について解説します。
妊娠中に鮮魚を食べるときの注意点
妊婦の方が刺し身や寿司などの鮮魚を食べる場合は、以下に注意しましょう。
・消費期限を守る
・保存に気を付ける
・体調が悪いときは避ける
鮮魚は加熱調理をする食べ物に比べると、食中毒リスクの高いもの。とにかく食中毒菌を増殖させないことが大事です。
消費期限を守る〜鮮魚の鮮度低下は早い〜
鮮魚介類は鮮度低下が早いため、消費期限内に必ず食べるようにしましょう。鮮度の低下=食中毒菌の増加、と考えましょう。
【鮮魚介類の消費期限の目安】
・その日のうち:刺身スライス・すし全般
・品目によってその日のうちから2日以内:刺身柵もの・生食用貝類
・1〜2日以内(夏場はその日のうち):活貝
・その日のうちから3日以内:切り身(生)
・箱の表示にあわせる:生ウニ
・3〜5日以内:イクラしょう油漬け
・2〜3日以内:丸魚
・2日以内:釜揚げシラス
・4日以内:シラス干し
・5日以内:ウナギかば焼き
鮮度低下の速度は、保存の仕方が関わってくるので、購入するときや持ち帰るときにも注意が必要です。
保存に気を付ける〜15℃以下をキープする〜
刺し身や寿司など、魚介類の生食によって発生する食中毒の代表な原因菌、腸炎ビブリオは水温15℃以上で増殖するといわれています。
購入するときは、必ず保冷材等をつけてもらいましょう。ちなみに持ち帰る温度は冬で平均15℃、夏は平均25℃といわれています。利用する交通機関によっては、冬でも20℃以上であることが多くあります。
また、冷蔵庫で保存した場合、白身魚より赤身魚の方が鮮度低下が早いこともわかっています。
貯蔵温度が10〜15℃の場合は赤身魚の細菌数は著しく増加します。ただし貯蔵温度が4℃の場合は、白身魚も赤身魚も顕著な増加は見られないという結果が出ています。
鮮魚を購入したときは、冷蔵庫の中でもなるべく低温の場所に保存しましょう。
妊娠中の食中毒リスクはゼロにならない
消費期限を守り、保存に気をつけていても、免疫力が落ちている妊娠中の食中毒のリスクをゼロにすることはできません。
鮮魚を食べたときに少しでも「おかしいな」というときには、迷わず病院に行き、早めに医師の診察を受けるのが一番です。症状が激しい場合は救急車を呼ぶことも必要です。
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