妊娠は女性の体にさまざまな変化をもたらします。胎児を受け入れるための免疫力低下もそのひとつ。そして免疫力の低下によって、リステリアによる食中毒のリスクが高まってしまいます。今回は妊婦が注意すべきリステリア感染の栄養と予防法について解説します。
妊婦がリステリア感染すると胎児に影響が
リステリアの感染で特に注意が必要なのは、妊婦や高齢者、抗がん剤治療中などで免疫機能が低下している方です。このような条件に該当する方は、少量のリステリアでも発症し、敗血症や髄膜炎など重篤な状態、すなわちリステリア症になることがあり、海外では死亡例も確認されています。
特に妊婦が感染すると、リステリアが胎盤や胎児へ感染し、流産してしまったり、新生児に影響がでることがあります。平成22年には、アメリカでカンタロープ(メロンの一種)が感染源となって、食中毒が発生し、33名の方が亡くなりました。患者の多くは60歳以上で、1名の女性患者が流産したと報告されています。
欧米で発生した事例から、殺菌されていない乳製品を含め、ナチュラルチーズなど、加熱されずに製造される乳製品、生ハムなどの食肉加工品、スモークサーモンなどの魚介類加工品などはリステリア感染の原因となる恐れがあります。国内でも乳製品、食肉加工品や魚介類加工品などから、菌数は少ないですが、リステリアが検出されています。
リステリアの感染予防方法
それでは、妊婦がリステリアによる食中毒を防ぐために家庭でできることはなんでしょうか。
ひとつ目は先ほどご紹介した感染原因となりやすい食品、長期の冷蔵保存が可能だったり、加熱せずに食べられる食品をできれば避けることです。
とはいっても、チーズや生ハム、サーモンなどを食べたいときもあるでしょう。そんなときは、開封後に速やかに食べることを心がけてください。
すぐに食べきれないものについては、冷凍保存を活用しましょう。また、リステリアは加熱で死滅しますので、調理済み食肉加工品でも、食べる直前に再加熱することを心がけてください。
生野菜や果物などは、食べる前によく洗うことも必須です。リステリアにはワクチンがないため、食物の衛生管理がもっとも重要な感染予防のポイントになります。
細かな注意点を列挙しましたが、妊婦や高齢者のいる家庭でなくても、普段の食事から食中毒に気をつけることは大切なことです。食品衛生については、気にしすぎて悪いということはありません。いつもの食卓の安全を心がけることが、大切な家族の笑顔を守ることにつながる道なのです。
前回のコラム>>妊娠中に注意したい食中毒①〜リステリアを知っていますか?〜
参考文献
食中毒 伊藤武 汐文社 2014
リステリアによる食中毒について 食品安全委員会
イラスト図解 見て読んで納得!!!ウイルス・細菌・カビ−微生物の働きや影響がわかる!ミクロの世界で暗躍する生命のフィクサーを徹底解剖!−畠山昌則 日東書院 2013
リステリア・モノサイトゲネスに関するQ&Aについて 厚生労働省
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