刻々と変化する母体と胎児の成長を健やかに保つために、妊娠中は楽しく適切な食事をする必要があります。胎児は母親の体から栄養を吸収しますので、胎児の成長のために、妊娠中には通常よりも積極的に摂取しなければならない栄養素があります。今回はその中から葉酸について2回に分けてご紹介します。
緑のビタミン、葉酸
葉酸の「葉」は、緑を連想させますね。それもそのはず、葉酸はほうれん草などに多く含まれる水溶性のビタミンB群の1種です。そのため、緑のビタミンとも言われ、またの名をビタミンB9やビタミンMとも呼ばれます。
ビタミンMの「M」の由来は、葉酸が猿(Monkey)の抗貧血物質として見いだされた歴史からきているそう。ですが、現在はあまり「ビタミンM」という名前は使われていないようです。
葉酸の知名度が、いまひとつ高くないのは、ビタミンという名前がついていない事が一因かもしれませんね。
葉酸は赤ちゃんの発達に必要な栄養素
葉酸は不足すると貧血を起こしやすくなることがわかっています。ビタミンB12と一緒になって、酸素を運ぶ赤血球をつくる手助けをしています。また、遺伝情報がつまったDNAやRNAをつくるサポートをしたり、記憶力の衰えや物忘れの予防にも役立っています。血液の主成分である赤血球は、体の隅々にまで酸素を届けている細胞です。赤血球は通常、真ん中がへこんだドーナツのような形をしています。葉酸が少なくなると、この形がおかしくなって、酸素がうまく運べなくなってしまうのです。
葉酸の働きについては、まだわからないところも多くありますが、胎児の脳や脊髄の発達に欠かせない栄養素であることは明らかになっています。葉酸が最も必要となるのは、妊娠のかなり初期であり、妊娠1か月以上前から妊娠3か月までの摂取が重要といわれています。そのため、妊娠に気づいてからでは遅いとも言えます。これから妊娠の可能性があるならば、早い段階で葉酸の大切さを知っておくといいですね。
次のコラムでは、葉酸を多く含む食品やサプリメントとの付き合い方について説明します。
次回のコラム>>妊娠中に無理なく摂りたい栄養素・葉酸②
参考文献
100歳まで元気人生!「病気予防」百科 川渕孝一 日本医療企画 2007
赤ちゃんを元気にする栄養の話 大井静雄 保健同人社 2008
栄養素キャラクター図鑑 田中 明・蒲池桂子 日本図書センター 2014
栄養と料理2012年6月号 女子栄養大出版部 2012
栄養素等表示基準値及び栄養機能食品に係る食品表示基準 消費者庁 2015
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