授乳にはエネルギーが必要です
食べることは、生きること。私たちの体は、食べた物で作られています。
妊娠中は赤ちゃんのため、自身の食生活に気を付けていたのではないでしょうか。しかし出産後は、食生活がおろそかになりがちです。妊娠中の食事に気を付けることは、産後においしい母乳を作ることにつながっていきます。母乳を作り、授乳するのはとてもエネルギーが必要なことです。
授乳中は妊娠前の摂取カロリーに350kcalプラスするのが理想です。しっかり食べて、お母さんの体力を維持しましょう。
母乳は血液から作られる!
お母さんの血液は乳房の中の乳腺で、乳汁へと作り変えられます。母乳はお母さんの血液から作られているため、栄養だけでなく血球やリンパ球、分泌型免疫グロブリンAなど赤ちゃんを感染症などの病気から守ってくれる免疫成分も含まれています。
母乳はお母さんの食べた物で味や成分が変化するので、匂いの強い食品、塩分や脂肪の多い料理、甘いお菓子、添加物の多い物などは、食べる回数や量に気を付けてください。
特に、アルコールやカフェイン、タバコのニコチンの成分は母乳に含まれてしまうので、授乳中の飲酒やカフェインの摂り過ぎ、喫煙は控えましょう。
不足しがちな栄養素は積極的に摂りましょう
以下、不足しがちな栄養素について説明していきます。
・葉酸
葉酸は「造血のビタミン」と呼ばれ、ビタミンB12と一緒に母乳の基となる血液を作るサポートをします。レバーやブロッコリー、ほうれん草などの緑の濃い野菜や、大豆、いちごなどに多く含まれます。水溶性ビタミンで熱に弱いので、非加熱の状態か、加熱するなら汁ごと摂れる調理法がオススメです。
・鉄分
鉄分が不足して貧血になると疲れやすくなり、立ちくらみ、やる気が出ないなど、さまざまな不調が起こります。それでなくても、夜間の授乳などで睡眠不足になり疲れやすい状況です。授乳期は非妊娠時より2.5mg多い摂取が必要です。また、鉄分だけでは吸収されにくいので、ビタミンCやビタミンB群と一緒に摂るようにしましょう。鉄分は赤身の肉やレバー、カツオ、マグロ、大豆・大豆製品、小松菜、貝類などに多く含まれています。
・カルシウム
赤ちゃんの歯と骨を作るために必要なカルシウム。血液中のカルシウム量が不足すると、お母さんの骨から供給されてしまうので、母体の骨粗しょう症を予防するためにもカルシウムは、しっかり摂りましょう。また、ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、ビタミンKはカルシウムを骨にくっつけて、骨が溶け出すのを抑えてくれます。
乳製品は手軽にカルシウムが摂れますが脂肪も多く含むので、干しエビや小魚、大豆・大豆製品、海藻類、小松菜、水菜などをうまく摂り入れましょう。
母乳の成分の8割以上は水分なので、こまめな水分摂取も心がけてください。ただし、冷たい物を摂り過ぎて胃腸が冷えると、体調不良につながるので注意しましょう。
慣れない育児による睡眠不足で、食事をゆっくり食べることもままならないかもしれませんが、母乳は赤ちゃんの成長や発達に必要な栄養源になるので、お母さんの体を整えることはとても大切です。栄養素を意識して、できるだけバランスよく食べてくださいね。
参考文献
『日本人の食事摂取基準』 2015年版 第一出版
『いちばんやさしいはじめての母乳育児』 成美堂出版 監修SOLANIN
『さめじまボンディングクリニックすっきり元気!産後ごはん』 主婦の友社
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