腸管出血性大腸菌O157による食中毒とは?
O157はベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌の一つです。大腸菌はヒトの体内に存在する常在菌ではありますが、この腸管出血性大腸菌O157を摂取してしまうと、これによって産生されるベロ毒素が原因で、下痢や激しい腹痛、血便などの症状をきたします。一部には、溶血性尿毒症症候群HUSや脳症などの合併症を生じることや、死に至る場合もあります。
腸管出血性大腸菌O157は、たった数十個の菌によって発症してしまう恐るべき感染症の一つです。特に牛の腸管内に多く検出され、牛の解体工程で肉はO157に汚染されるため、材料として仕入れる肉、スーパーに並ぶパック肉にもO157が検出されると言います。材料食品の汚染は避けられないとなると、どう予防すればよいのでしょうか?
加熱そして二次感染を防ぐこと
O157は高温に弱いため、十分な加熱で食中毒は予防できます。給食施設等で活用される大量調理施設衛生管理マニュアルでは中心温度で、75℃で1分以上の加熱、または85~90℃で90秒以上の加熱が行うことになっています。大きさのあるものでは表面温度と中心温度が異なりますので、食品に十分に火が通ったことを確認するために、中心温度で確認する必要があります。一方で、生の肉はO157に汚染されている可能性があるため、これらと他の食品、特に生で食べるものが接触しないように注意する必要があります。直接触れることはなくとも、包丁やまな板、ボール等の調理器具を介した二次汚染が考えられるため、使用器具は分けるのが良いでしょう。
また、調理器具は使用後によく洗い、加熱消毒等してよく乾燥させることで清潔を保つことができます。大量調理施設衛生管理マニュアルでも、使用器具を分けることや器具の消毒についてのルールが記されています。この大量調理施設衛生管理マニュアルは食中毒予防のために作成されているものであり、平成29年6月の改正においては、中小規模調理施設にもマニュアルに則った衛生管理の徹底が求められています。
2017年のO157食中毒発生
今年は関東地方を中心としてO157の発生が相次ぎ、死者も出てしまいました。惣菜店各所で検出されたO157は同一の遺伝子型であることが確認され、複数の惣菜で同じトングを使用していたことによる二次感染の他に、店舗の衛生管理体制が不十分であったことも判明し、今もなお原因が追究されています。これらの報道を受けて、厚生労働省においては、腸管出血性大腸菌感染症・食中毒の予防対策等の啓発を呼び掛けています。給食施設だけでなく、飲食店、販売店、また家庭においても正しい衛生管理が行われる必要があります。
参考文献
・厚生労働省『腸管出血性大腸菌感染症・食中毒の予防対策等の啓発の徹底について』http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177379.html
・厚生労働省『大量調理施設衛生管理マニュアル』 平成29年6月16日 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000168026.pdf
・『改訂版 食中毒学入門 予防のための正しい知識』本田武司著 大阪大学出版会 2012
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