食べ物を安全に食べるためには、微生物から身を守らなければなりません。まずは、「ウイルス」や「細菌」、「寄生虫」によるリスクが排除できず禁止されている食材などは、摂取しないことが大切です。多くの微生物は、食中毒予防の三原則『つけない』、『ふやさない』、『やっつける』を正しく実践することで対策が可能です。ただし、「細菌」、「ウイルス」、「寄生虫」と、また「細菌」の中でも毒素、芽胞を産生するものはそれぞれに対策が必要となります。
食中毒の原因となる微生物によって食品や食材を汚染させない
微生物は、糞便中、土壌や水中、空気中、そして様々な生き物や、私たち人間の体などいたるところに存在します。そのため、生産から食卓まで食品に関わるすべての場所・人において微生物をつけない対策が必要です。現場の清掃、手洗いを徹底し、必要な場所では、マスク、手袋、帽子を着用し、微生物の付着を防ぎましょう。
また、他の食品への2次汚染を防ぐために、生の食品を扱う包丁やまな板などの調理器具を分けて使用することはもちろん、生の食品と加熱済みの食品を分けて保存をすることも大切です。冷蔵庫では加熱済みのものやそのまま食べる食品を生の肉や魚より上の段に保存をしましょう。肉や魚などを購入する際には、他の食品に触れないように分けておくことも忘れずに。
ノロウイルスなど「ウイルス」は食品中では増殖しないことから、ウイルスを食品につけないことが最も肝心です。黄色ブドウ球菌などは、作りだした毒素により食中毒が起こりますが、毒素は高温加熱に強く、加熱してもなくならないため、通常の調理過程では防ぐことができません。そのため、つけないこと、増やさないこと、毒素を作らせないことが重要になります。ウエルシュ菌やボツリヌス菌などは、増殖に適さない環境になると「芽胞」を作り、休眠状態となります。これらの菌が作りだす毒素は高温加熱に弱いのですが、菌は芽胞の中で生残し、完全に死滅させることは困難です。増殖に適した条件が整うと発芽して増殖するため、再度増やさない対策をとっておく必要があります。
生後 1 歳未満の乳児においては、腸管内でボツリヌス菌の定着と増殖がおこりやすいため、芽胞で汚染される恐れのあるはちみつなどの食品は、与えないようにしましょう。
食中毒の原因になる微生物を増やさない
微生物の中の「細菌」は栄養分、温度、pH、水分などの条件がそろえば、食べ物の中で増殖します。その増殖スピードは条件によって異なります。多くは5~45℃で増殖し、人や動物の体温くらいの温度で特に増殖が活発になります。しかし、リステリア菌のように低温でも増殖可能な菌もあり、冷蔵庫での保管も過信してはいけません。冷凍により多くの細菌は-15℃では増殖が停止しますが、細菌が死ぬわけではありません。常温に戻すと生き残っていた菌が増殖することもあります。
また、食品中に微生物が利用できる水分が多ければ、増殖しやすくなります。この水分の割合は水分活性という数値で表しますが、水分活性の値が0.92以上で増殖します。糖分や塩分の濃度を高くすると、この水分活性を下げる作用があります。しかし、近年好まれる、糖分や塩分濃度が低い食品は、水分活性が下がらず、保存に注意が必要です。腸炎ビブリオは好塩性で食塩濃度 2~3%で増殖は活発になるため、真水で良く洗いましょう。
食品は、ほとんどのものが酸性から中性を示します、微生物は、㏗4.4~11.0の間で増殖し、特に増殖するのは6.0~8.0付近ですから、そもそも食品は増殖しやすい環境なのかもしれません。昔からお酢には物をいたみにくくする働きがあると知られ、魚を酢でしめたりしていました。しかし、細菌の増殖を抑える効果はありますが、サバなどに多い「寄生虫」のアニサキスは、魚を酢でしめても残るため-20℃以下で冷凍処理するか加熱をしましょう。
食中毒の原因になる微生物を殺菌する
食品の中心部まで75℃以上1分以上加熱をすれば、ほとんどの微生物を殺菌、または失活化させ、感染力をなくすことができます。カキなどの二枚貝は85℃~90℃で90秒間以上の加熱し、ノロウイルスを失活化させる必要があります。
調理後の食品を温めなおすときは、むらなく全体の温度が上がっているか確認してください。特に調理済みのカレーやシチューなどは、しっかりと混ぜ、内部まで加熱する必要があります。電子レンジなどを利用する場合は、加熱ムラができないように食品の置き方を工夫しましょう。また、加熱調理後であっても、調理器具や手指を介して二次汚染が起こるため、加熱調理後も注意が必要です。器具は熱湯や、漂白剤を使用して適切に消毒をしましょう。
参考
厚生労働省Hp 食中毒
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html
食品安全委員会HP食品健康影響評価のためのリスクプロファイル
http://www.fsc.go.jp/risk_profile/
食品安全委員会HP ファクトシート
http://www.fsc.go.jp/factsheets/
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