人はさまざまなものに触れるため、手に微生物が付着し、手を介して食品や調理器具などを汚染させてしまいます。付着した微生物が少量であっても細菌の種類やウイルスなどによっては食中毒が発生するため、「手洗い」は食中毒の予防の基本となります。
手洗いの方法について
調理の前に手を洗うのは当然のことですが、それだけでは不十分です。調理場に入る前、盛り付け前、トイレの後、生肉や生魚、卵など微生物に汚染されている恐れのある食材に触れた後、廃棄物処理の後などは面倒くさがらずに手指を洗う必要があります。また、手洗い前に、手に傷がないか、爪が短いか、腕時計、指輪などを外しているか確認し、傷のある場合は、調理作業を控えましょう。
手袋をつけて作業をしていても、手洗いが不十分である場合、菌が付着します。手袋をする前に手洗いは必要です。手を洗うときは見た目の汚れをきれいにする日常的な手洗いではなく、手指に付着した微生物を取り除くための衛生的な手洗いを行う必要があります。時間をかけて1回手洗いをするよりも、短時間でも2回手洗いが有効です。
爪と皮膚の間、甘皮の部分、指先、手の甲、手のひらのしわ、親指の付け根のふくらんだ部分、手首などは洗い残しが多いため、確認しながら洗う必要があります。特に利き手は洗い残しが多いため注意が必要です。洗浄剤はきれいに洗い流し、手をふき乾燥させてから、アルコールを噴霧し手指の全体にしっかりとすり込みましょう。
食材の洗浄について
平成24年に白菜の浅漬け、平成26年には冷やしきゅうりが原因の食中毒が発生しました。他にも野菜の汚染が疑われる食中毒は発生しています。生野菜には土などに由来する微生物がついています。加熱ができない野菜は十分な洗浄が必要です。野菜を洗うときは、流水で野菜の表面の汚れを落とします。トマトのヘタや、キュウリのイボなどの周りには汚れがたまりやすいのでしっかりと洗い、白菜やキャベツ、レタスなどは、一枚ずつバラバラにして内側まで洗いましょう。泥付きの根菜類は、たわし等でこすり洗いして、しっかりと除去します。使用するたわしは野菜用のものを用意してください。葉物野菜に泥が付着している場合、水中に泥や砂が沈まなくなるまで、水を何度も変えて洗い、特に根元に泥を残さないように洗浄しましょう。
ただし、水洗いだけでは、完全に微生物を除去することはできませんので、早めに食べるか、保存する場合は、10℃以下で冷蔵保存してください。
調理前後の調理器具の洗浄について
どれだけ手や食品に対して対策をしても、汚染された調理器具や皿、ふきんやタオルなどを介して食品が汚染されることがあります。調理器具を介して食品が汚染されることを防ぐために、包丁やまな板は肉用、魚用、野菜用と食材ごとに使い分けると安全です。しかし、家庭などで数がそろわない場合は、生で食べる野菜や加熱をしない食品から処理をするなど調理の順番の工夫や、調理作業ごとにまな板、包丁を洗浄し、熱湯をかけ消毒するなどの対策をしましょう。特に生の魚、肉を処理した調理器具は念入りな洗浄が必要です。ふきんは、洗浄後100℃で5分間以上煮沸殺菌を行い清潔な場所で乾燥し保管しましょう。
食中毒の多くは、食中毒予防の三原則である「細菌をつけない」、「細菌を増やさない」、「細菌をやっつける」を実施することで、リスクを減らすことができます。微生物は、目に見えず、いたるところに存在し、いつどこで食中毒が起こっても不思議ではありません。自分だけは大丈夫だと過信せずにひとつひとつの原則を忘れず丁寧に実施しましょう。
参考
厚生労働省HP食中毒
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html
同パンフレット
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000097268.pdf
消費者庁 手洗いで感染予防!~正しい手洗いでノロウイルス感染を予防しましょう!~
http://www.caa.go.jp/safety/pdf/151112kouhyou_1.pdf
厚生労働省 大量調理施設衛生管理マニュアル
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000130495.pdf
学校給食調理場における手洗いマニュアル
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/08040316.htm
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