食品にはさまざまな寄生虫が存在します
魚介類、食肉、野菜など私たちが口にする食材には、寄生虫がいることがあります。特に魚に寄生する寄生虫は多く、およそ1万種あるのではないかといわれています。しかし、そのほとんどは魚介類固有の寄生虫で、私たちの体に悪影響を及ぼすことはありません。まずは、食中毒の原因となる寄生虫の中から、おもなものとその症状をご紹介します。
食中毒を引き起こす寄生虫とその症状
1. 魚介類の寄生虫
アニサキス
サバ、サケ、イワシ、サンマなど、私たちが普段口にする大衆魚に寄生する2cmくらいの白くて細長い幼線虫です。おもに魚の内臓表面に寄生しています。寄生された魚を生で食べた場合、数時間後に症状が出ます。みぞおちに激しい痛みや嘔吐などの症状があります。
クドア・セプテンプンクタータ
おもにヒラメの筋肉内に寄生している寄生虫です。大きさは約10μmと小さいので肉眼では見えません。天然のヒラメではなく、おもに養殖のヒラメを生で食べる際は注意が必要です。感染すると下痢や嘔吐の症状が見られます。
旋尾線虫
線虫類の寄生虫で、ホタルイカ、スルメイカ、スケトウダラなどの海産物の内臓に寄生しています。おもにホタルイカの内臓を生食すると感染のおそれがあります。症状は、皮膚爬行疹(ひふはこうしん)型と急性腹症型に分かれています。皮膚爬行疹型は、生食後2週間程度で、皮膚に症状が出ます。腹部から皮膚に移動した幼虫が皮膚の下を移動することで、みみず腫れのような赤い皮疹が出ます。急性腹症型は腸閉塞を起こします。
2. 食肉の寄生虫
サルコシスティス
ウマの筋肉内に寄生する寄生虫です。サルコシスティスが寄生している馬肉を生で食べると下痢や腹痛、倦怠感などの症状が出ます。幸いヒトの体内では増殖することができないので、一過性の症状で治まると考えられています。
トリヒナ
人畜共通の寄生虫のひとつで、クマ、ウマ、ブタなどに寄生しています。幼虫は筋肉に、成虫は小腸に寄生しています。これらの肉を生食または加熱不十分で食べると、かゆみ、発疹や腹痛、下痢などさまざまな症状を引き起こします。胃の中で肉は消化され、幼虫が活動をはじめます。幼虫は小腸の粘膜に入り込み、成虫に成長します。
クリプトスポリジウム
原虫※1の一種で哺乳類の消化管内で増殖します。糞便とともにオーシスト※2が多数放出され、このオーシストが付着した水や野菜などを取ることにより感染します。オーシストは熱や乾燥には弱いのですが、塩素に対して耐性があるため、水道水に混入した場合は集団中毒の危険性があります。感染すると、下痢や嘔吐、腹痛などの症状が3日~1週間前後続きます。
※1単細胞の微生物で特に病原性を持つものを指す。
※2原虫の成長過程の1形態。接合子嚢とも呼ばれる。
3. 野菜の寄生虫
野菜の寄生虫は多くの場合、肥料や土壌から卵が付着し、それを生食することによって、感染します。
回虫
体長20~30cmのミミズのような形をした寄生虫です。卵は小腸で孵化し、幼虫は小腸の壁から血管に侵入して、肺に移動します。数日以内に気管支を上がって、再び口から小腸に戻り、成虫となります。卵は便とともに排出されるため、加熱処理が不十分な人糞を使った有機肥料を介して感染します。感染初期はほとんど症状がありませんが、腹痛や下痢、食欲不振などの症状が出る場合があり、ときには腸閉塞を引き起こすこともあります。
寄生虫による食中毒を防ぐには?
寄生虫による食中毒を予防するには、洗浄、除去、加熱・冷凍処理が大切です。生野菜を食べる際は、流水でよく洗いましょう。鮮魚の内臓は購入後、できるだけ早く取り除いてください。特に川魚は寄生虫が多いため、生食は避け、十分に加熱してください。また、魚を調理した後のまな板や包丁などの調理器具を介して、感染してしまう恐れもありますので、調理後は器具を十分に洗浄し、手洗いを行うように気をつけてください。
防止策として、もっとも有効な手段は、やはり加熱調理です。焼く、煮る、蒸す、揚げる、炒めることで、食材の中心温度が60℃以上になれば、寄生虫は死滅します。調理の際には十分な加熱を心がけてください。寄生虫は細菌などと比べて冷凍に弱く、十分に冷凍することでほぼ死滅するといわれています。何時間冷凍すれば寄生虫が死滅するかは、温度や寄生虫の種類などの条件によって異なるため、一概には言えませんが、マイナス40~50℃の急速凍結をすればほぼ死滅すると考えられます。そのため、市販されている食肉については過敏になる必要はありません。
しかし、それ以外の食肉については注意が必要です。最近ではイノシシやシカなどのジビエ料理を取り扱う飲食店が増えてきました。野生動物の肉は特に寄生虫のリスクが高いため、生食を避け、内部まで十分に加熱されているかをチェックしてください。
寄生虫による食中毒を防ぐには、食品には寄生虫がいるものと考えて、予防することが大切です。食材の保存や調理の方法を工夫して、寄生虫感染を防ぎましょう。
出典:「食品衛生の窓」http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/musi/00.html
出典:書籍「ぜひ知っておきたい食品の寄生虫」著:村田以和夫(幸書房)
出典:「食品安全委員会」http://www.fsc.go.jp/sonota/kiseichu_foodpoisoning2.html
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