甘酒とは?
甘酒はアルコールを含まない発酵食品です。甘酒といえば、冬のイメージがありますが、現代季語辞典によると、甘酒は夏の季語となっています。江戸時代後期の寛永6年(1853年)、絵師の喜田川守貞の書物「守貞漫稿』によると、「江戸京坂では夏になると甘酒売りが市中に出てくる。一杯四文也」と記してあります。どうして真夏に甘酒が売っているのでしょうか? 甘酒は冬の飲み物ではないのでしょうか?
甘酒はなぜ夏の季語となったのか?
古くは、山上憶良(やまのうえのおくら)の「貧窮問答歌』で、甘酒は冬の季語として登場している飲み物でした。なぜ甘酒は夏の季語となったのでしょうか?
「守貞漫稿」が刊行された当時は、夏の7~9月に亡くなる方が多かったようです。時代背景から、現在のように空調や水道の設備も整っておらず、環境・衛生の状況も悪く、食生活も質素だったため、夏の酷暑に耐えられなかったのかもしれません。そんな時代に栄養豊富な甘酒は体力回復に即効性があったのかもしれません。
甘酒は飲む点滴
江戸時代に水分と栄養補給のため、夏に愛飲されていた甘酒は「飲む点滴」とも呼ばれています。点滴は栄養補給のためにブドウ糖液と必須アミノ酸やビタミン類の溶液からできていますが、甘酒の成分もほぼ同じような構成になっています。
甘酒に含まれているブドウ糖は、米麹のアミラーゼがごはんのでんぷんに作用して作られます。ごはんのでんぷんのほぼ全量がブドウ糖になるため、甘い味になるのです。甘酒には一般的にブドウ糖が20~23%含まれるといわれています。ごはんのたんぱく質も麹菌の酵素によって必須アミノ酸群に変えられます。甘酒に含まれるビタミンは米麹に由来するものです。ビタミンB1・B2・B6・パントテン酸・ビオチンなど生理作用に不可欠なビタミンが豊富です。さまざまな成分を一緒に摂取できるため、ビタミンの吸収率が高く90%以上もあります。このほかに、麹由来の食物繊維やオリゴ糖も含まれているので、腸内環境を整え、便秘や肌荒れにも効果があるとされています。
甘酒の作り方
栄養豊富な甘酒は自宅でも作ることができますので、作り方をご紹介します。
【材料】
麹 200g
白米(または炊いたご飯) 1合
水:白米 500ml
(炊いたご飯の場合 300ml)
【作り方】
①白米と水を鍋で煮ておかゆを作る。
できたおかゆを60度まで冷まして麹を入れる。
※熱すぎると、麹菌の酵素が死んでしまうのでご注意ください。
②60度で保温したまま、8~10時間置く。
※保温鍋や保温ポットを使ったり、鍋を毛布にくるんで温度を保ってください。途中で冷めたら、60度になるまで加熱してください。
炊飯器の保温機能を使う場合には、蓋を開けたままふきんをかぶせる。
③ 濃縮甘酒のできあがりです。
飲むときは、お湯などで約2倍に薄めて飲んでください。麹の粒が気になる場合は、ミキサーにかけると飲みやすくなります。
甘酒の保存方法
冷蔵庫で保存し、長期保存の場合は冷凍してください。冷凍庫に入れてもカチカチに固まらないので、そのまま食べる事もできます。
甘酒は栄養満点なので、雑菌も繁殖しやすいため、注意が必要です。冷蔵の保存は一週間をめどにしてください。冷凍の場合は3か月保存可能です。ただし、冷凍焼けをすると味も落ちてしまいますので、注意してください。また、保存期間はあくまでも目安ですので、早めにお召し上がりください。
日常の食事への取り入れ方
甘酒はただ飲むだけでなく、調味料としても使えます。少し甘味が欲しい時に、味のアクセントとして使ってみたり、砂糖の代わりにあまみ調味料として料理に使ってみたりといろいろチャレンジしてみてくださいね。
ただし、どんなに身体にいいからといって、ご飯の代わりに置き換えるのはおすすめできません。どんなに健康にいい食品でも、それだけで健康になれるわけではありません。まずは、バランスの良い食事に気をつけて日々の生活を整えながら、日常の食事に取り入れてみてはいかがでしょうか。
参考文献
図解でよくわかる土壌微生物のきほん 横山和成 誠文堂新光社 2015
図解でよくわかる発酵のきほん 館 博 誠文堂新光社 2015
微生物の狩人 上 Microbe hunters 岩波書店 1980
絵でわかる麹のひみつ 小泉武夫・おのみさ 講談社 2015
食品発酵学 小泉武夫 講談社 2015
最新糖尿病に克つ生活読本 相磯嘉孝 主婦と生活社 2015
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