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1.佃煮の発祥

佃煮の名称は東京の佃島の地名に由来します。江戸時代に佃島の漁師は小魚を煮込み、保存食にしていました。それが江戸の庶民に普及し、参勤交代の武士たちが土産として各地に持ち帰り、全国に広まりました。そのため佃煮といえば、東京の名物のようなイメージがありますが、その原型は大阪にあったというのをご存知でしょうか。

時代は明智光秀が織田信長に謀反を起こした本能寺の変にまで遡ります。そのとき、わずかな家来とともに堺にいた徳川家康は、自分の命の危険を感じ、居城の三河・岡崎城に戻ろうとしました。しかし、すでに光秀の手が回っており、退路が断たれていました。そのことをいち早く家康に知らせたのは、堺の商人・茶屋四郎次郎でした。知らせを受けた家康は逆方向へ迂回して脱出を試みました。しかし今の大阪市住吉区の神崎川にさしかかった時、渡る舟がなく、足止めにあいました。そのとき、大阪・佃村の庄屋 森孫右衛門が漁船と食料として小魚煮を提供しました。この小魚煮が佃煮の原型といわれています。

その後、家康が江戸幕府を開くと、佃村の漁師たちを呼び寄せ、漁業権を与えました。江戸に移住してきた漁師たちは江戸湾の干潟の一角に築島を築き、故郷の佃村にちなんで、佃島と名付けました。

家康の命を救ったことが縁で佃村の漁師たちが江戸の佃島に移り住んだことから、佃煮の歴史がはじまりました。

2.佃煮の種類

佃煮はもともと小魚などでつくられていましたが、各地で佃煮がつくられるようなり、様々な原料が使われるようになりました。現在用いられているおもな材料は、魚類としてはカツオ、マグロ、ワカサギ、ハゼ、ゴリ、シラウオ、小ブナ、イカナゴ、シラス、小アユなど、貝類としてアサリ、ハマグリ、シジミ、アカガイ、カキなど、乾燥水産物としてするめ、干し小魚、干し貝類、干しえび、干しだら、昆布、海苔(のり)など、そのほか水産物としてアミ、エビなど、植物性のものとしてフキ、葉トウガラシ、サンショウ、シメジ、シイタケ、マツタケなどがあります。

佃煮にも様々な種類がありますので、代表的なものをご紹介します。

佃煮の種類

佃煮(小魚、貝類などを醤油、砂糖、みりんなどで色濃く煮詰めたもの)

甘露煮(アユなどの小魚や金柑などの果物を砂糖とみりんなどで甘みをつけて煮たもの)

しぐれ煮(貝類などに生姜や山椒などの香味を加えてたまり醤油で煮しめたもの)

くぎ煮(生のいかなごを醤油やみりん・砂糖・生姜などで甘辛く煮込んだもの)

「大阪府調理食品協同組合」http://www.daichosyoku.or.jp/tukudani.htm

3.佃煮の栄養

佃煮は原料をそのまま煮詰めるので、素材の栄養を丸ごと摂ることができます。小魚や貝類はタンパク質や各種ビタミン、カルシウム、鉄、リンなどミネラル豊富で、栄養価も抜群です。しかし、食塩含有量が高いので、高血圧症などの人は注意が必要です。最近は塩分を控えた減塩の佃煮も登場しています。

参考文献
全国調理食品工業協同組合
http://zenchoshoku.or.jp/info/?page_id=271
大阪府調理食品協同組合
http://www.daichosyoku.or.jp/tukudani.htm
コトバンク「佃煮」
https://kotobank.jp/word/%E4%BD%83%E7%85%AE-99168#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89

 

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